ー”の旅」。第45回の今回は、熊本を中心に展開するチェーン『味千ラーメン』へ。東京への出店はないものの、世界中で展開。その味千のチャーラーとは!?
画像ギャラリーチャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介する「ニッポン“チャーラー”の旅」。第45回の今回は、熊本を中心に展開するチェーン『味千ラーメン』へ。東京への出店はないものの、世界中で展開。その味千のチャーラーとは!?
世界で653店舗! 世界の味千ラーメン
熊本へ行ってきた。取材は1日目の午前中で終わり、翌日の昼過ぎまでフリー。ってことで、2日目の昼にチャーラーを堪能することに。1日目の夜、ホテルの部屋でノートPCを広げて検索。
どうせならマー油やフライドガーリックがのる熊本ラーメンが食べたいと思っていたら、『味千ラーメン』がヒットした。しかも、口コミサイトではチャーハンに言及した投稿も数多く見られ、どれも評価が高い。これは期待ができそうだ。
公式HPによると、全国66店舗展開しているが大半は熊本県。筆者が暮らす愛知県に店はなく、東京にも出店していない。ゆえに店の名前は知っていても、食べたことがなかった。
また、『味千ラーメン』は、中国をはじめ、シンガポールやカナダ、アメリカ、オーストラリアなど海外にも進出していて、その数はなんと15カ国に計653店舗!(2024年12月末時点) 国内の10倍近くも店がある、まさに世界の味千ラーメンなのである。
で、どこへ食べに行こうか。熊本県内に50店舗近くあるし、阿蘇くまもと空港内にも出店している。せっかくなら世界の味千ラーメンの総本山と呼ぶに相応しい本店で食べてみたい。
調べてみると、本店は熊本市内中心部から少し離れた県庁通り沿い。ちょうど市内から阿蘇くまもと空港へ向かう途中に立ち寄ることができる。
『味千拉麺 本店』のオープンは1968年。ここから世界へと広がっていったと思うと、実に感慨深い。しかも、本店だけに味のチェックは厳しいだろうと想像できる。では、世界の味千ラーメンのチャーラーの実力をとくと見せてもらおうではないか。
デフォルトながらも豪華な具材の「味千ラーメン」
案内されたのは、店内奥のカウンター席。オープンキッチンになっていて、ここから厨房を眺めることができる。注文は卓上のタブレット端末で行うのだが、「復刻ラーメン昭和味」や「味千ラーメン」、「黒マー油ラーメン」、「パイクー麺」、「味噌豚骨ラーメン」、「醤油ラーメン」と、かなり種類が多くて迷ってしまう。
味千初心者である筆者は、やはり店名を冠した「味千ラーメン」(800円)に「半チャーハンセット」(麺類に+320円)を付けることに。厨房へ目をやると、タブレット端末から伝わった注文情報を基にスタッフさんたちが慌ただしく手を動かしている。チャーハンは自動調理器かと思いきや、せっせと中華鍋を振っていた。
実に手際がよく、10分も経たないうちに注文したメニューが運ばれた。チャーハンに紅ショウガは添えられておらず、その代わりに小皿に盛られたつぼ漬が付いてきた。これは初めてのケースだ。
では、まず「味千ラーメン」からチェックしてみよう。具材はチャーシュー2枚と味付け玉子半分、キクラゲ、ネギ。スープ表面に浮いているのがマー油だろうか。デフォルトのメニューにしては豪華である。
スープをひと口飲んでみる。熊本ラーメンは博多ラーメンよりも濃厚だと思い込んでいたが、それは見た目であって、実際は違っていた。奥深いコクがあるのに後味はさっぱりしているのだ。気になる臭みも皆無。
チャーハンとラーメンのそれぞれが引き立て合う
聞くところによると、博多ラーメンのスープは注ぎ足して作るが、熊本ラーメンはその日に使う分だけ仕込むため臭みが少ないらしい。また、博多は豚骨のみだが、熊本は豚骨に鶏ガラも加える店もあるという(味千ラーメンは豚骨のみ)。この細かい違いこそが文化なのだ。九州=豚骨ラーメンとひと括りにしていた自分が恥ずかしい。
次にチャーハンをチェック。卵に吸わせた油が見事なまでにご飯の一粒ひと粒をコーティングしている。口に入れると、ふわっと米粒がほどけて、塩とコショウ、醤油だけではない複雑な旨みが広がる。この味は何とも例えようがない。
「味千ラーメン」の通販サイトには「チャーハンの素」も売られている。原材料を見ると、食塩、醤油、玉ねぎ、エビパウダー、胡椒、ガーリックパウダー、ビーフエキス、オニオンパウダー、ポークエキス、シイタケパウダー、ジンジャーパウダー、ポークオイル……と、盛りだくさん。そりゃ複雑な味わいがするわけだ。
味付けはやや濃いめだが、味千ラーメンとの相性はすこぶる良い。チャーハンを食べるとラーメンが食べたくなり、ラーメンを食べるとチャーハンが食べたくなる無限のループを久しぶりに味わった。その合間につぼ漬をつまむと、甘みが加わってさらにおいしく感じる。チャーハンにつぼ漬も十分アリだと思った。
五十路の身体に熊本ラーメンとチャーハンはキツイと思っていたが、ペロリと完食。いやー、おいしかった! 店の外へ出ると、味千ラーメンのキャラクターで、創業者の娘さんが3歳の時をイメージしてつくられた「チイちゃん」の像が筆者を見送ってくれた。
取材・撮影/永谷正樹
1969年愛知県生まれ。株式会社つむぐ代表。カメラマン兼ライターとして東海地方の食の情報を雑誌やwebメディアなどで発信。「チャーラー祭り」など食による地域活性化プロジェクトも手掛けている。