新車購入時に頭を悩ませるのは、ほしいクルマのグレード選びだろう。特にハイブリッドの有無は悩ましい。ノーマルのガソリンエンジン車の燃費が向上しているからだ。さらに本格的なシステムにより燃費性能の高い「ストロングハイブリッド」は、バッテリーやモーターなどによりどうしても高額になってしまう。そこで今回はコンパクトカーからビッグミニバンまで、グレードの価格差と燃費性能をから元が取れる走行距離を徹底比較した!!
画像ギャラリー新車購入時に頭を悩ませるのは、ほしいクルマのグレード選びだろう。特にハイブリッドの有無は悩ましい。ノーマルのガソリンエンジン車の燃費が向上しているからだ。さらに本格的なシステムにより燃費性能の高い「ストロングハイブリッド」は、バッテリーやモーターなどによりどうしても高額になってしまう。そこで今回はコンパクトカーからビッグミニバンまで、グレードの価格差と燃費性能をから元が取れる走行距離を徹底比較した!!
ストロングハイブリッドの価格上昇分は取り戻せるか
地球温暖化の原因になる二酸化炭素の排出抑制など、環境性能の優れたクルマに乗ることは、本来は損得勘定で決める話ではない。たとえ出費が割高でも、環境性能の優れたクルマに乗るのが本来の趣旨だ。
しかしそうはいっても、クルマの価格と税金を含めた維持費は高い。ハイブリッドが低燃費で地球に優しいのは分かるが、価格が高い割に燃費の節約効果が小さければ、ユーザーにとって割高な買い物になってしまう。
特にストロングハイブリッドには価格の高い車種も多いから、ノーマルガソリンエンジンと比べた時の損得勘定を考えたい。ハイブリッドが最も多いメーカーはトヨタで、ノーマルエンジンもそろえる。そこでトヨタの複数の車種で比較する。
なおトランスミッションはすべてATで、駆動方式は2WDとした。レギュラーガソリン価格は170円/Lで計算する。
■トヨタ ヤリス:ガソリンエンジン1.5Z 対 ハイブリッドZ
・ノーマルガソリンエンジン:1.5Z/WLTCモード燃費21.3km/L(215万4000円)
・ハイブリッド:Z/WLTCモード燃費35.4km/L(249万6000円)
コンパクトカーのヤリスZでは、ハイブリッドの価格が34万2000円高い。ストロングハイブリッドとしては、価格の上乗せを少額に抑えた。
購入時に納める税金は、Z同士の比較で、ハイブリッドが約9万円安い。価格差から税額の差を引いた実質価格差は約25万円に縮まる。実質価格を燃料代の節約で取り戻せるのは、8万kmを走った頃だ。
■トヨタ ノア:ガソリンエンジンS-Z 対 ハイブリッドS-Z
・ノーマルガソリンエンジン:S-Z/WLTCモード燃費15km/L(332万円)
・ハイブリッド:S-Z/WLTCモード燃費23km/L(367万円)
ノアの売れ筋グレードでは、ハイブリッドの価格がノーマルガソリンエンジンに比べて35万円高い。この価格差は、ミドルサイズのトヨタ車の多くに当てはまる。
購入時に納める税額は、S-Z同士の比較でハイブリッドが約13万円安い。実質価格は22万円に縮まり、この金額を燃料代の節約で取り戻せるのは約5万6000kmを走った頃になる。
■トヨタ アルファード:ガソリンエンジン Z 対 ハイブリッドZ
・ノーマルガソリンエンジン:Z:WLTCモード燃費10.6km/L(555万円)
・ハイブリッドZ:WLTCモード燃費17.7km/L(635万円)
Z同士で比べると、ハイブリッドの価格はノーマルガソリンエンジンに比べて80万円高い。トヨタのハイブリッドの中でも価格差が大きいが、高価格車とあって税額は約20万円安く、実質価格差は約60万円に縮まる。燃料代の節約で実質価格差を取り戻せるのは約9万4000kmを走った頃だ。
■結論:ハイブリッドの価格差を取り戻せるモデルは?
この3車の中で、ハイブリッドとノーマルガソリンエンジンの実質価格差を最も短い距離で取り戻せる車種は、約5万6000kmのノアであった。価格差が35万円に収まり、ハイブリッドは購入時に支払う税額が13万円安く、実質価格差は22万円に縮まる。
しかもハイブリッドのWLTCモード燃費は、ノーマルガソリンエンジンに比べて50%以上優れているから、ハイブリッドのメリットが際立った。
ヤリスではハイブリッドの燃費向上率は60%以上だが、ノーマルガソリンエンジンも低燃費だから、比率が大きく違っても燃料代の差額は小さい。購入時に納める税額の違いも少ないため、実質価格差は約25万円でノアを上まわった。そのために燃料代の節約で実質価格差を取り戻せる距離も約8万kmまで伸びてしまう。
アルファードはハイブリッドの価格がノーマルエンジンよりも80万円高く、購入時の税額の違いを差し引いた実質価格差も約60万円に達する。ハイブリッドの燃費向上率は60%以上だが、実質価格差が多額で、燃料代の節約で取り戻せる距離も9万4000kmと長い。
以上のようにハイブリッドは全般的にミドルサイズが有利だ。コンパクトサイズはノーマルガソリンエンジンの燃費性能も優れ、燃料代の節約で価格差を取り戻しにくい。Lサイズはハイブリッドの価格が割高になりやすく、同様に価格差を取り戻しにくい。
文/渡辺陽一郎(わたなべ よういちろう):自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。執筆対象は自動車関連の多岐に渡る。
写真/トヨタ