くだらない話をしながら、細かいことにこだわらず自由に
生産者が丹精込めた素材をごく真っ当に調理する。それが藤田さんにとっての本当のおいしさだ。
「松原さんの賄いは最高の日々の糧であり、最高の晩酌の肴です」と藤田さんは笑顔をほころばせる。
料理は賄い担当・松原朋子さんによるもの。蔵のOBが特別に育ててくれた野菜をふんだんに使った、バラエティ豊かな献立をみんなが楽しみにしている。
この日も「ブリを南蛮漬けに、とはめずらしいな」「生もと純米のお燗とバッチリ合うなあ」と賑やかだ。
生もと純米は、元蔵人が郷里の石川県にて無農薬・無化学肥料で栽培した五百万石を使い、木桶で仕込んだ1本。2年半熟成だ。
〆は鍋の汁にご飯を入れて雑炊。さらには特製のスパイスカレーもある。生もと純米は蔵付きの乳酸菌を取り込んでいるから、カレーとの相性も抜群だとワイワイ。
そこで、やや口調がトロンとなった藤田さんは、にこやかに言った。
「ペアリングも楽しいけどね、細かいことにこだわらずに自由にやるのが一番だよ。くだらないこと言い合いながら飲むのが最高のお酒。そういう晩酌に選んでもらえるお酒を造りたい、私は」