ドラマ化もされたイタリア料理漫画の金字塔『バンビ~ノ!』など多くの著書を持つ漫画家せきやてつじ氏。現在、青年寿司職人の青春を描いた料理漫画『寿エンパイア』を連載しているが、そのスピンオフとなる「寿司職人『児島 渡』~寿エンパイア番外編~」の単行本が今月発売された。 「マッズ!」が口癖の毒舌だけど心優しい主人公、児島 渡の誕生秘話とともにその魅力や社会への想いについて前編に続き後編をお届けする。
漫画を描くことで成長できた
――若い湧吾が寿司の技術を学び成長していく本編と違って、番外編は奇想天外なお寿司も、ライバルとのバトルも出てきません。かわりに若者を見守る児島の優しさが漂う「おとなの漫画」に仕上がっています。ご本人の視点もかなり入っていますか?
はい、自分の経験談が自然と児島というキャラクターに投影されたのだと思います。自分中心だった私が漫画や社会に育ててもらって少しは成長できたのかもしれませんね。
――漫画を描くことで自身も進化された?
ええ、良い漫画を描こうと思って描き続けていたら、自分でも思いもよらない場所に立っていました。漫画に成長させてもらっているんです。と、そんな偉そうなことを言っていても、私自身、人の立場や気持ちを考えることができてなかった後悔があるんですよ。
東日本大震災での後悔
――その後悔とは?
今でも覚えているのは、2011年3月11日、ちょうど吉祥寺行きのバスに乗っていた時のことです。その時、震災が起こりました。停車中の車が横にスライドして電線も縄跳びのようにスイングしてましたね。後ろの席に座っていたどこかのおばあさんと「心配ですね」なんて話していて。
しばらく止まっていたバスがようやく動き出しましたが、途中で降りてラーメン屋に行こうと「俺、ここで降りますね」と、おばあさんに言ってバスを後にしたんです。
――ラーメン屋さん、やっていたんですか?
ええ。でもガスが止まっていてラーメンを出せないといので、明太子ごはんを食べました。物足りなくてその後、すぐそばのピザ屋にも行きました。
――そんな時にはしご! よく食べますね(笑)。
そうですよね、ピザ屋さんにも呆れられました(笑)。で、お腹はいっぱいになったんですけど、急に後悔が押し寄せてきて。
「あのおばあさんはとても不安そうな顔をしたよな、どうして一緒に最後までいなかったんだろう。俺は歩いても帰れる距離なんだから、荷物を持って家まで送ってあげればよかった」と。ピザを片手に猛烈に反省しました。今でも助けなかったことが時々、思い出されるんです。


