建物は明治時代の和風建築で、大きな梁や艶めいた柱など、今もそこかしこに老舗旅館の面影が残る。本館4室、向いの別館に3室の全7室。現在は感染対策もあり1フロア1組、一日2組限定で営業している。
「木造りの湯」は高野山で霊木として珍重される高野槙の内風呂と露天ヒノキ風呂で木の香りを楽しんで。「石造りの湯」は、内風呂が岩風呂、露天には足元に丸石を敷き詰めた五右衛門風呂がある。
約6万本が眠るワインセラーは本館と別館に。8割はブルゴーニュでボルドーの五大シャトーや希少なヴィンテージも多数。お目当ての銘柄がある場合は、チェックイン時に申告して探しておいてもらうのがスムーズだ。
明るい雰囲気のダイニングからはエメラルドグリーンの運河を眺める。夜はしっとり落ち着いた照明に。
シャンパーニュ〈Salon〉の2002年ヴィンテージでディナーをスタート。丹後グジ(アマダイ)のから揚げや鮮魚のエスカベッシュ、サザエのブルゴーニュ風など、前菜の魚介はすべて丹後地方で水揚げされたもの。グラスはトマトの土佐酢漬け。
伊根産のお造りに合わせたワインは、ブルゴーニュのトップ生産者ドメーヌ・ルロワの〈ヴォーヌ・ロマネ・レボーモン2000〉。アコウダイ、サザエのお造りにサワラの焼き霜など4~5種類の鮮魚に、自家製しょう油のほか琴引浜の塩とレモン、カルパッチョ風で味わうオリーブオイルや赤ワイン塩が添えられる。
コース外のアラカルトメニューで山本料理長がおすすめする伊根産の岩ガキには、天橋立ワイナリーのシグネチャー〈こだま樽熟成2020〉を合わせて。ちなみに天橋立ワイナリーのワイン〈こだま〉〈茜〉といった銘は丹後一宮である元伊勢籠(この)神社の禰宜さんにつけてもらったという。
本館の4室はすべてオーシャンビュー・スイート。ベッドルームは装飾を排した和室で、フローリングのリビングにはソファやアームチェアに加えマッサージチェアも。古道具が置かれた和モダンなインテリアと落ち着いた照明でリラックスできる。各室シャワー室付き。
文珠水道に面した客室の窓から見下ろすと、きれいなエメラルドグリーンにチヌ(クロダイ)やエイが泳いでいるのが見える。窓の左手に見えるのは、船が通るときに90度旋回する廻旋橋。
宿泊客は到着したら千歳の数軒先にある「Café du Pin(カフェドパン)」へ。ここは千歳の経営するカフェで、宿泊客専用サロンでウェルカムドリンクをいただきながらチェックイン。運河「文殊水道」に面した天橋立の松並木を一望する絶景も楽しんで。
文珠山の頂上からの眺め。龍が天に舞うように見える“股のぞき”からの景色「飛龍観」もかかさずに。また、天橋立を歩いてみるのもいい時間に。白い砂浜と松並木は外から眺めるのとは違った感覚が楽しめます。片道3.6キロで往復約2時間。レンタサイクルなどもおすすめです。
門前通りの正面に建つ大きな三門は「黄金閣」と称される。建立にあたって後桜町天皇より下賜された黄金がその名の由来だ。京都府指定文化財。
国の重要文化財に指定されている多宝塔は室町時代の古建築。丹後国守護代で府中城主、延永春信が自身の病気の全快を感謝して建立したと伝わる。
境内正面の文殊堂は文殊菩薩がご本尊。お堂で視線を上げてみると寄進された数多くの絵馬が。算額や和歌を詠み合わせた額など、武芸や学問の向上を願った古の人々の想いが遺されている。
境内の右手に建つ「智恵の輪燈籠」。江戸時代に航海の安全のために作られた石灯籠で、宮津のあちこちでこのモチーフに出会う。桟橋からはボートや遊覧船が終日出航している。
小さな扇子を開くと吉凶があらわれる「すえひろ扇子おみくじ」も智恩寺の名物のひとつ。境内のあちこちの松の木に結ばれた鈴なりの扇子は花が咲いたような風情。