伊勢の神宮で、式年遷宮の準備が始まった。式年遷宮は20年に一度、社殿を建て替えてご神体を遷す神宮最大の祭りで、次回は2033年に執り行われる。神宮祭主として御奉仕されるのは、黒田清子さん(紀宮さま)。式年遷宮の準備を温かく見守られている。おだやかなお人柄で知られる紀宮さまは、周囲のしくじりをやさしく許されたという。今回は、お客さまをもてなされた食事会での、ほほえましいやり取りの物語である。
2033年の伊勢神宮「式年遷宮」に向け、準備が始まる
20年に一度社殿を建て替えてご神体を遷す、第63回神宮式年遷宮の準備が始まった。式年遷宮は、1300年余りの歴史を持つ。2033年に行われる次の遷宮に向けて、長い期間に渡ってさまざまな祭りが続くのである。
2025年6月3日、長野県上松町で式年遷宮の御用材となる木を伐り出す「御杣始祭(みそまはじめさい)」が行われた。木曽谷は、江戸時代から御用材を切り出す「御杣山」と定められている。
この日、上松町の国有林では、高さ26メートル、直径60センチの推定樹齢300年のヒノキを2本伐採した。地元の林業関係者が、斧だけで大木を切り出す伝統の伐採技術を次の世代に伝えた。
2033年の神宮の式年遷宮の祭主を務められるのは、黒田清子さん。美智子さまの愛娘、結婚前の御称号は紀宮さまである。純白の衣をまとった「杣人(そまびと)」によって行われる伐採の作業を、清子さんは微笑みながら見守られた。戦後、祭主は女性の元皇族が務められているのである。
前回の臨時祭主から、次は神宮祭主として務める
前回の式年遷宮は、2013(平成25)年に行われた。その時の模様を、美智子さまはお誕生日に際しての文書でこのように振り返られている。
〈この10月には、伊勢神宮で20年ぶりの御遷宮が行われました。何年にもわたる関係者の計り知れぬ努力により、滞りなく遷御(せんぎょ)になり、悦ばしく有り難いことでございました。御高齢にかかわらず、陛下の姉上でいらっしゃる池田厚子様が、神宮祭主として前回に次ぐ2度目の御奉仕を遊ばし、その許で長女の清子も、臨時祭主としてご一緒に務めさせて頂きました。清子が祭主様をお支えするという、尊く大切なお役を果たすことが出来、今、深く安堵しております〉
次の2033年の式年遷宮では、清子さんが神宮祭主としてご奉仕されるのである。これから8年も続くさまざまな行事を、清子さまは温かく見つめられていくことだろう。