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ドイツ夫と日本人妻の「フードファイト」

新婚1年目!
ドイツ夫と日本人妻の「フードファイト」

「想像以上に根深い?
ドイツ人へのお土産問題」

ドイツ人の男性と日本人女性が食生活の違いに戸惑う日々を、イラストとともにお届け。今回はドイツ人へのお土産問題に鋭く切り込みます。ドイツの方と取り引きがあるビジネスマンも必見です(ふたりは主に英語で会話していますが、日本語に翻訳してお届けします)。

夫から突然の“オミヤゲ”

「はい、これ」
ある日突然、夫が会社から持ち帰ってきたものを見て驚きました。
「『辻利兵衛』の抹茶バウム? すごい、わーい!」
竹のかたちを模したきれいな緑色のバウムクーヘン。久しぶりの日本のお菓子に心が弾みます。
でも、いったいどうして?

「いやぁ、取引先の日本のお客さんが“オミヤゲ”に持ってきてくれたんだけど、誰も手をつけたがらなくって。しばらく放置されてたんだけど、『君の奥さんならきっとこれ好きなんじゃない?』ってみんなが言うから、もらって帰ってきたんだよー」

おっと。また出た、ドイツ人へのお土産問題……。
私は、バウムクーヘンを胸に抱きながら、「むむむ」とうなってしまいました。

「きっと喜んでもらえるだろう、珍しがってくれるだろう」
そのお客さんが、ドイツ人たちの口に合うような洋菓子で(といってもバウムクーヘンはドイツでそれほどメジャーなものではないのですが)、かつ日本らしさのこもったものを苦心して選んだのがうかがえるだけに、もの悲しい気持ちになります。
ですが、断言しましょう。
「抹茶味のバウムクーヘンはちょっとハードルが高かったかな~」

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ドイツ人へのお土産にご注意

まず、抹茶、これが難しい。
あっさりしたグリーンティーや、抹茶フレーバーのアイスクリーム程度ならこちらでも口にする人がいますが、日本で3年過ごした夫でも「抹茶は濃すぎ、苦すぎ」と言います。
しかもそれが伝統菓子のバウムクーヘンとやらにイン?
一般的なドイツ人にとってはなかなか手がのびない品だと想像されます。
とても美しい竹の形状だったのも、人工的な印象を与えてしまったかもしれません。

かわいそうな抹茶バウム。大丈夫、私が全部ひとりでとても美味しくいただきました。

ドイツ人へのお土産は要注意、そう言って差し支えないと思います。
もちろん個人差はあるにしても、食に保守的で、かつ「自分が本当にほしいもの、必要なものしかいらない」という合理性にエコ精神。
そんな国民性が、日本のお土産文化とそぐわないのではないでしょうか。

そして、数々のほろ苦い思い出が頭をよぎります。

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ドイツ人には何もあげなくてよい?

昔、父の仕事の関係で日本を訪れたドイツ人を実家でもてなしたとき、私の母が彼の恋人へお土産をすすめると、「彼女には何も買って帰りません。プレゼントは一緒に選ぶことになっているんで」ときっぱり断ったこと。

夫が、漆塗りのお椀をお義姉さん家族に贈ったら、「あれ、あのお椀が見当たらないなぁとそれとなく探してみたら、砂場で子どものおもちゃになってたよ……」と肩を落としたこと。
(じゃあかつて私が買ったでんでん太鼓やだるま落としはどうなったのでしょう。悲しくなるので聞くのはやめました)

お義兄さん家族にあげた、かわいらしい茶筒に入った緑茶が、開封された気配のないまま賞味期限を過ぎていたこと。

インスタントのお味噌汁を試してみたお義兄さんの奥さんが、
「きゃー! きゃー! この黒いのは何? どこから現れたの?」と本気で恐怖におののいていたこと(それはふえるワカメです)。

日本人であれば、珍しい外国のお菓子を口に入れてみてあれこれ批評して楽しんだり、ちょっと趣味に合わない置き物でも、「せっかくいただいたものだから」と、とりあえず飾ってみたりするのではないでしょうか。
しかし、前述のようにドイツではそういう習慣がある人はあまり多くないようです。
日本人同士の感覚でお土産を選んでしまうと、「ありがとう!」と笑顔で受け取ってはくれても、後で「どうしよっか、これ」と言われている可能性大です。

だから、日本からドイツへ戻るときには大騒ぎ。
「日本独特の食べ物はダメ、小物も喜んでもらえるかわからない。じゃあどうすればいいわけ?」
「だから、なにも買わなくて大丈夫なんだって」
「お義母さんにも? そんなわけにいかないでしょ!」
と夫に迫ると、
「じゃあ、ポッキーでいいよ。それか、チョコパイ」
という返事なのでした。

皆さま、いいでしょうか。
ドイツ人へのお土産は「ポッキー」か「チョコパイ」が無難です。「きのこの山」なんかもいいでしょう。
以上、現場よりお伝えいたしました。


イラスト/なをこ

●文:溝口シュテルツ真帆(みぞぐち しゅてるつ まほ)/
1982年生まれ、石川県加賀市出身。編集者。週刊誌編集、グルメ誌編集を経て、現在はドイツ人の夫とともにミュンヘン在住。ドイツを中心に、ヨーロッパの暮らし、旅情報などを発信中。私生活ではドイツ語習得、新妻仕事に四苦八苦する日々を送っている。

2014年9月28日公開

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