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ドイツ夫と日本人妻の「フードファイト」

新婚1年目!
ドイツ夫と日本人妻の「フードファイト」

「恐るべし……
ドイツの結婚式(後編)」

ドイツ人の男性と日本人女性が食生活の違いに戸惑う日々を、イラストとともにご紹介。前回に続き、ドイツの結婚式に初めて参加した日本人妻のお話。長時間続く式で謎のイベントに遭遇。さて、何が起きた!(ふたりは主に英語で会話していますが、日本語に翻訳してお届けします)。

お金じゃなくてもOK! ドイツ式「ご祝儀」

前回に引き続き、友人カップルの結婚式に出席中の私たち。
(前編はこちら

どうやらそこは地域で評判のレストランだったらしく、料理はなかなかの味。
ランチ前のおつまみでお腹がいっぱいだった私も、ゆっくりゆっくり運ばれてくる料理の数々を、気付けば残さずいただいてしまいました。

ランチが終わった時点で、時計はすでに16時半。
新郎新婦がケーキ入刀をして、デザートとしてそのケーキをいただきます(これはどうやら誰かの手作りだったようですが、残念ながら甘すぎて完食できず……。ごめんなさい)。

ドイツの結婚式にも「ご祝儀」に近い習慣があります。
この会場では、前方に大きなテーブルが準備されていて、招待客はそこにおのおのが持ち寄ったプレゼントを置いていく形になっていました。
それは食器やワインなどのこともありますが、近ごろではお金のほうが喜ばれるとのことで、きれいに包んだ300ユーロ程度、近親者であれば1000ユーロ程度のお金を置いていく人も多いそうです。

夫は、なぜかトランクの重さを計るハンディな計量器に、お金を入れた封筒をくくりつけ、「人生の荷物が増えた君へ」とかなんとか上手いことを書いたものをいそいそと置きにいっています。

そのプレゼントは「私たちから」ということになっているので、1日中飲み放題のパーティーでひとり150ユーロなら、日本の結婚式よりお得かもしれないなあ、と思わずせこい計算をしてしまいます。

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ゆるい雰囲気が一転……花嫁が消えた!?

さて、パーティーのほうは相変わらずのゆるい雰囲気。
これといった出し物もなく、そこらじゅうにビールの空き瓶が転がり、いい感じに酔っぱらってきた客たちが牛小屋の中にまで入り込んでいます。
私たちも生まれたての可愛い子牛を触ったり(「コレハ、オイシイ、チイサイ、ウシデス」とつぶやいた夫のことは無視)、せっかくのドレスを泥だらけにしながら積み上げられた干し草の上で転げまわる子供たちを眺めたり、リラックスしてパーティーを楽しみます。

このまま何も起こらずに終わるんだと思っていたパーティーですが……。
突然、司会の男性がマイクを使って叫びました。
「大変だ! 花嫁が消えたぞ!」
見れば、たしかに席で友人たちと談笑していたはずの花嫁がどこにもいません。
ですが、招待客のドイツ人たちはうろたえる様子もなく、「はいはい、始まりましたね」という苦笑いで、なぜか新郎の後ろに列を作り始めました。

「ねえ、なんなのこれ?」
「あ~、これはドイツの習慣でね……」

夫が説明してくれたところによると、ドイツの伝統的な結婚式では、「花嫁を盗まれてしまったバカな花婿が彼女を探す」というイベントがあるというのです。
会場によっては、花婿が花嫁を求めて町中を探し回らなければならないこともあるとか。
「バカな花婿」という設定なので、みっともない帽子をかぶらされたり、物まねをさせられたり、女装をさせられたり(これはうちの義兄の場合)した彼の姿を、あとに続く招待客が笑い者にするという、なんとも牧歌的なものです。

今回の場合はそれほど広くないレストラン内が舞台だったので、すぐ脇の小部屋で花嫁を発見。
「花嫁が見つかったぞー!!!」
という小芝居のあとは、そのままその小部屋で人々がひしめき合って、飲めや歌えや。
民族音楽にのってテーブルの上で踊り出す人もいたりと、本日最高の盛り上がり。

「ふう、すごいね……」
「まだまだこれから!」

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長すぎる式に日本人妻、キレる

ひとしきり大騒ぎしたあと、もとの大部屋に戻れば、次はディナーのお皿が準備されています。
今度はバーベキュースタイル。屋外でソーセージ、ステーキなど大量の肉が次々と焼かれ、好きなものを好きなだけ注文できる食べ放題状態。
もう満腹なのか空腹なのかもわからないまま、ソーセージにかぶりつきます。

ディナーが終わると、時間は23時ころ。
さすがにお年寄りや子供連れの家族たちはちらほらと席を立ち始めましたが、まだまだ若い客たちは居残ります。

「もうビールは飽きたね」
と、今度は「イェーガーマイスター」などの甘いハードリカーを「シュナップスグラス」と呼ばれる小さなグラスでくいくい飲み始めました。
さすが、日ごろ大量にビールを飲んで鍛えられた(?)皆さん。
楽しそうに酔っぱらっていても、泥酔状態になるような人はひとりもいません。

ですが、私はもうくたくた。
「ねえ、もう帰りたいんだけど……」
と夫の袖を引っ張るものの、空気を読みすぎて動けないタイプの夫は一向に立ち上がりません。
「いやいや、盛り上がってるとこ悪いじゃん。もうちょっとね」
というやり取りを何度繰り返したでしょう。

「もう私、ひとりでも帰る!」
いい加減我慢できなくなった私が席を立つと、ようやく夫も慌てて荷物をまとめ始めました。
飲み続ける友人グループに挨拶をして、私たちはよろよろと近くのホテルへタクシーで帰りつきました。

深夜1時。実に14時間もの結婚式だったのでした。

翌朝車を取りに戻り、そこにいたスタッフに聞けば、宴は3時ころまで続いていたといいます。
いやはや、みんな本当にタフです。
それにしても、翌朝の駐車場にあった車は私たちのものだけ。
あの酔っぱらいたちは、みんな自分の車で帰ったのかしら……? まさか、ね。

イラスト/なをこ

●文:溝口シュテルツ真帆(みぞぐち しゅてるつ まほ)/
1982年生まれ、石川県加賀市出身。編集者。週刊誌編集、グルメ誌編集を経て、現在はドイツ人の夫とともにミュンヘン在住。ドイツを中心に、ヨーロッパの暮らし、旅情報などを発信中。私生活ではドイツ語習得、新妻仕事に四苦八苦する日々を送っている。

2014年11月9日公開

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