Web Original

ドイツ夫と日本人妻の「フードファイト」

新婚1年目!
ドイツ夫と日本人妻の「フードファイト」

「食べても減らない!
ドイツの“焼き菓子地獄”」

ドイツ人の男性と結婚し、ドイツに住んでいる日本人女性。年末年始に妻が体重増。その理由は、クリスマス前後にあるドイツ特有の食文化にありました。イラストとともにご紹介します。

ドイツの“お正月”は短い

気合いの入ったクリスマスと異なり、ドイツのニューイヤーは大変あっさりしたもの。新年2日からさっそく仕事はじめだったドイツ人も多く、街はとたんに平常心でした。
1月初頭は、こたつに、テレビ、お雑煮……だらだら過ごすお正月が恋しいと、外国に住む日本人たちが祖国をもっとも恋しがる季節でもあります。私も例外ではなく、形ばかりのいそべ餅をひとりで噛みしめ(お餅が苦手な夫にはひとつたりとてあげません)、マンダリーネと呼ばれるみかんをむきながらため息ひとつ。
「ああ、ダイエットしなきゃ……」
そう、お正月もないのに、体重だけはしっかり2キロも増量してしまっていたのでした。

それもこれも、クリスマス前後の“焼き菓子地獄”のせい。
12月になると、夫はなんと4日にわたって大量のPlätzchen(プレツヒェン)を焼き上げました。プレツヒェンとは、チョコやジャム、アイシングなどさまざまにデコレーションされたクリスマス用のクッキーのこと。クリスマス期間になると、ドイツでは多くの家庭がこのようにして手作りのクッキーを焼くのです。

なぜか毎回、夕食後にクッキー作りを始める夫を、申し訳ないけれど手伝う気になれず、いい香りがしてきたころに「どれどれ」とキッチンに顔を出しつまみ食いするのが私の役目。
「う~ん、美味しい!」
「デショ~??」
と、胸を張る夫。ちょっともうひとつふたつ、あ、その割れてるやつも食べちゃおうね、と手が止まりません。

<次ページへ続く>

クッキーのつまみ食いは2日に1枚

焼き立てを数日のうちに食べるのが常識だと思っていた私にとって、クッキーを何週間もかけて少しずつ食べること自体驚き。ですが、もっとびっくりしたのは、「ちょっと柔らかくなったほうが美味しいから」と、せっかくのクッキーを器に盛ったまま部屋に置きっぱなしにすること。
さくさくとした歯触りがクッキーの魅力なのに、幾種類かのクッキーは、ふにゃっと少ししけったようなのが正解だと、夫も義母も言うのです。

「断じて違う!」と反論したくなりますが、「あなた作る人」「私食べる人」な状況で文句を言う資格はありません。黙ってドイツ流に従います。
そして言い渡されてしまった決まりごとがもうひとつ。
「つまみ食いは2日で1枚だけだからね!」
「いやいやいや、2日で1枚ってケチすぎでしょ! ケチって日本語わかる? あ、知らない、え~と……」
「とにかく、クッキーの前を通りかかるたびにパクッと口に入れるような食べ方はやめて! そういう風に食べるものじゃないんだから」
「お茶の時間にきれいに盛って大切に食べろって? でも、このつまみ食いが美味しいのに……」
「君のお義母さんが送ってきた、あのうなぎが入ったパイとやらを食べればいいじゃん」
「まあ、それもそうなんだけど……」
と、どうも旗色が悪い。

このクッキーは、家族や友人宅を訪ねる際の手土産としても使われ、すると、その家お手製のものをお返しとしてもらったりするのです。
少し減ったと思ったらまたどこかの家庭のものが追加され、まるで「わんこそばクッキー」状態。
次第に、焼き菓子が大好物の私も、「つまみ食いは2日に1枚で十分」と思うように。

<次ページへ続く>

ハイカロリーフード+焼き菓子で胃は限界に……

さらに、クリスマスの焼き菓子として日本でも知られるようになったStollen(シュトレン)の存在もあり、クッキーとともに、お皿に盛られて出てくることもしばしば。
「ドレスデンで買ってきた私のお気に入りのお店のものなのよ!」
と義母がうれしそうに出してくれたものは、粉砂糖に分厚く覆われ、ドライフルーツがぎっしり詰まった香り高いたしかな逸品。いったいどれだけのバターが使われているんだろう……という恐れを押し殺していただきます。

食傷気味なところへもって、ようやくクリスマス本番。
お義母さんのところへ親族計10人が出たり入ったり、2日にわたってパーティーが繰り広げられました。
ラクレットと呼ばれるこの地方独特のチーズ料理に、2日がかりで仕上げた七面鳥、じゃがいもやパンを主な材料にしたクヌーデルと呼ばれる巨大なお団子、お義兄さんお手製のアップルパイ。いかにもハイカロリーなご馳走が並びます。
そして食間食後には、やはりクッキーとシュトレン。日本製の私の胃はもう悲鳴すら上げられず、「お茶漬け食べたい……」とか細くつぶやくのみです。

そして極め付き。
ようやくお義母さんの家を出る際になって、「あんたたち、これ持っていきなさい!」とお義姉さんから押し付けられたタッパーの中には、そう、残った大量のクッキー。
そして、年が明けてお義母さんがうちを訪ねてきた際に「ハイ」と笑顔で渡されたものは、余ったシュトレン。
1月15日現在、まだまだ残っているクッキーとシュトレンを「いい感じにしめってるよ?」とつっついてみても、夫もさすがに聞こえないふりをするのでした。

イラスト/なをこ

<次ページへ続く>

1 2 3 4 5

関連書籍

  • 個室で大切な人と“おもてなし”レストラン
  • 最後の築地
  • ひと味違う 中華街&横浜
  • 大東京23区散歩
  • とっておきの銀座
  • 口福三昧
  • 最強の麺 219軒
  • お値打ちの三ツ星店
  • 移民の宴
  • 綾小路きみまろ公式ファンブック
おとなの週末 Select

人気の特集だけを、
電子版限定でセレクトしました

おとなの週末公式アカウントはこちら
  • Facebook
  • Twitter
  • LINE