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映画会社の名物企画マンがすすめる絶品和菓子

映画会社の名物企画マンがすすめる絶品和菓子
永遠(とわ)に美味しく
『小島屋』のけし餅

『利休にたずねよ』の映画化を企画した東映株式会社の森田大児さん。その千利休の原点の街・大阪府堺市で出合った和菓子に感動しました。その和菓子とは?

千利休の原点・大阪府堺市

 山本兼一先生の名著『利休にたずねよ』は、時の権力者をも恐れさせた美の巨人・千利休の正体に迫り、切腹の当日より時を遡って彼と関わった人たちの証言によってその素顔を解き明かしてゆく物語であった。そしてクライマックスでは、彼が若い青年だった頃、大航海時代の堺にたどり着く。よってこの小説を映画化する際は、京都だけではなく堺に行くべきだと思っていた。

 ちょうど千利休の供養塔も京都と堺にあり、両方にお参りすることにした。京都の茶の湯は周知されているように素晴らしく、自分などが語ることすら憚れるが、その魅力は何から何まで完璧に計算しつくされたところにあるのだろう。心を蕩かすちょっとした隙にも意図があり、その創意工夫の鋭さにはもはや参りましたと言うしかない。それでは利休の原点・堺はどんなところだろうか。

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想像と違った堺の街並み

 堺はかつて〈東洋のベニス〉と西洋で謳われた大都市である。大航海時代には海外の貿易船がここにやってきて物珍しき宝の品々が往来したという。そんな街だからこそ、美の巨人・千利休が生まれたのだと考えると合点がいく。きっと今も凄い所に違いない。果たして美の原点がそこにーー?!と期待で胸をいっぱいにしてやって来た堺。しかしそこは余りにも普通の街だった。

 建物や道路はすっかり近代化されていて、街を往来する人々や建物などが特別にお洒落ということもない。洗練された様相はどこにも見当たらず、どちらかというとゆるい。それも京都のような計算し尽くされたゆるさではなく、単に隙だらけという感じ。その雰囲気は「平和である」というよりもはや「へーわやでー」という語感に近かった。

 なーんやフツーの街やんー、とさっそく南宗寺にお邪魔して千利休のお墓に手を合わせる。心の内に語る言葉も自然と大阪弁に。京都のときは「ぜひ映画化をさせてください」だったのが「ほんま映画化さしたってください」となる。廻りには小説にも登場した茶の湯の名人たち、武野紹鷗や津田宗及のお墓もあったのでご挨拶に廻る。利休のライバルとしてやや悪役に描かれる可能性が高い津田宗及のお墓などには、その点についても予め赦しを乞うた。お墓参りの後は、お庭を拝見した。それは実に見事で立派なお庭であったが、やはり京都と比べるとやや大らかな印象。想像していたものとは少し違った。

 しかし……なぜだろうか、計算ではなさそうなその大らかさにホッとしたというのが正直な気持ちだった。案外、千利休のお庭も初めはこんな感じだったりして、と思い始めた。数年後にロケハンで堺にやって来たときには、案内の方から全くその通りであると教えられるが、このときはそんなことを知る筈もなかった。ただその素直な風情に癒されたのであった。

 また、帰るころに気がついたのだが堺は人が多い。さすがは政令指定都市だ。むしろこれだけ大きな街なのに不思議と生活感が漂っており、風景のどこを切り取っても人間味に溢れていて愛しいのだった。

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お土産に買った「けし餅」に感激

 お墓参りのあとは利休屋敷跡や仁徳天皇陵古墳など街に点在する歴史的遺産を観光して、帰りにはお土産として堺の和菓子を買って帰ることにした。

 さすがは堺、延宝年間より伝わる銘菓があり、「けし餅」というらしい。箱を開けてみると芥子の粒に包まれたあんこ餅が6個入っていた。それはあまりにも当たり前の姿だったので少し拍子抜けしたが、まあ洗練される前の和菓子はこんなだったのだろうと一つ口にいれると……めーっちゃうまいやん!
 小粒の芥子の香りとプチプチとした食感、さらに餅の皮は適度な歯応えが心地よく、中のあんこも優しい。もはや堺の魅力は天然なのか天然を装った計算なのかわからないが、このとき以来このけし餅は大阪在住時代のわが家で、ヘビーローテーションのお茶菓子となったのだった。

■小島屋
住所:大阪府堺市堺区宿院町東1-1-23/電話:072-232-0313/営業時間:8時半~18時(2階の茶房は12時〜17時)/休み:なし/交通:南海本線堺駅から徒歩7分、阪堺電鉄宿院駅から徒歩1分
オンラインショップでの販売あり

2015年6月30日公開

●森田大児(もりた おおじ)
1982年大阪府生まれ。2001年に同志社大学入学後、東映株式会社京都撮影所でのインターンシップを経験。2005年東映株式会社へ入社し、関西支社映画営業室宣伝担当へ配属。2009年、山本兼一著『利休にたずねよ』(PHP研究所)の映画化を企画し、多くの助けを得て2012年にクランクイン。同年、企画製作部へ異動。市川海老蔵を主演に迎えた同作は第37回モントリオール世界映画祭最優秀芸術貢献賞、日本アカデミー賞優秀賞9部門などを受賞している。

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