Web Original

サバジェンヌが行く!

サバジェンヌが行く! 第19回
イカの町・呼子に現れた
名無しのブランドサバ

イカで有名な佐賀県唐津市呼子。そこで今、サバが盛り上がっているという。その噂を聞きつけ、やって来たのは、全さば連(全日本さば連合会)のサバジェンヌ池田さん。現地から渾身のレポートをお届けします!

イカに次ぐ目玉グルメが誕生!

婚活でもなく就活でもなく、サバファンなら「サバ活」! というわけで、いまや婚活もままならぬまま、終活になりそうなサバジェンヌが(涙)、唯一、全開で順調な「サバ活」のために訪れたのは佐賀県唐津市呼子。

玄界灘に面し、新鮮な海の幸や「呼子の朝市」で知られる呼子。そして呼子を代表とするグルメといえばイカ。透き通った身の「イカの活き造り」が有名だ。

そんなイカの町に、サバが旋風を巻き起こしている。

「もともと、このあたりはサバが豊富に獲れた町。地元のみんなは、サバが大好きです」と語るのは呼子・鎮西(ちんぜい)旅館組合の会長であり、ホテル『大望閣』(たいぼうかく)の代表取締役でもある古館博さん。

組合で「イカに次ぐ観光の目玉となる商品があれば……」という話が持ち上がったときに、白羽の矢があたったのがサバ。かつてほどではないが、水揚げされる玄界灘のサバの美味しさは旅行業界の関係者からも「もっと、利用したほうがいい」と言われるほどだった。

そして昨年、組合に加盟する7店で、秋から冬にかけての期間限定で、「呼子活サバキャンペーン」として、新鮮なサバの刺身をはじめとする料理を提供したところ、想像以上の大好評。組合員一同、大きな手ごたえを感じたものの、安定したサバの供給が大きな課題となっていた。

そんなところに飛び込んできたのが、唐津市と九州大学の共同研究によるマサバの完全養殖がほぼ軌道にのったというニュース。唐津市は、3年前から地元における水産業の振興を図るべく、新しい目玉となる「新水産資源創出プロジェクト」を推進しており、その一環としてアナゴ、カワハギ、マサバなどの完全養殖技術の開発を進めていた。そして昨年、マサバの商品化におけるめどが経ち、試験出荷が行われることになったのだ。

「それはちょうどいい!」と、さっそく、組合では養殖サバの試食会を行った。これがなんと「天然モノに比べても、遜色のない美味しさだったんです!!」と古館さん。安定供給可能、寄生虫の心配がほとんどなく、しかも海を泳いでいるサバと変わらない味! 地元でミラクルなサバの誕生で、今年も堂々のサバグルメ提供に至ったのだ。

<次ページへ続く>

日本でも珍しいサバの完全養殖を実現

唐津市水産業活性化支援センター内の水槽で育てられる唐津のサバ

今年から見事デビューを果たしたサバを見学しに、唐津市水産業活性化支援センターへ向かった。出迎えてくれた同センター長の村山孝行さんも「サバは唐津では、とても人気のある魚。わたしもサバを見ると、マグロを見るより『旨そうだなあ』と思います」と笑う。

「唐津のサバの水揚げ量は、かつては西日本一だったんです」と村山さん。「でも、いまや、その座は長崎になってしまいました。イカも年々、漁獲量が減っています。唐津の水産業の復興のきっかけとしてマサバの完全養殖技術を開発し、漁業の活性化を図るべく、平成24年から試験養殖がスタートしたんです」。

日本におけるサバの養殖はまだまだ少ない。サバの養殖は難しく、手間がかかるのだ。そして、現在行われている養殖も、未成魚を捕獲して育てる方法が多いなか、唐津では、養殖した成魚からとった卵を孵化させて再び育てる「完全養殖」に成功した。天然資源にも優しい養殖であり、全国的にその成功は珍しい。

「マサバ養殖に最適な環境を研究し、適切なタイミングで採卵。ふ化させて、体長7~8cmとなったところで海面いけす、および陸上水槽で養殖します」と、センターに常駐して研究にあたる九州大学研究院の長野直樹准教授が語る。もちろん美味しくなければ意味がない。ここからは、ブリやハマチなどの養殖に携わってきた生産者たちが、サバを育てるために工夫を重ねた。

「サバは夏の暑さに弱く、いけすなどにぶつかると、表皮に傷が付きやすい。サバの養殖は大変なんです」と長野さん。最初は生産者たちも、かなり手こずったそうだが、エサのやり方や扱いを工夫することで改善。またその過程をデータ化し一年中、一定した脂肪分のマサバを作り出した。現在は、産卵から1年半程度、400gになったところで出荷している。

「このサバが唐津の飲食店で提供されて、イカに次ぐ名物となり、地域活性化となれば」と唐津市農林水産部水産課水産係の新大輔さん。「地元の旅館や組合でも評価していただき、味には自信があります!」。

……とここまできて、ずーっとサバジェンヌの頭の中でグルグルしていることがあった。

……ところでこのサバの名前は何というんでしょうか……???

<次ページへ続く>

名も無きブランドサバに日本初のネーミング

呼子・鎮西旅館組合が配布している「サバ料理キャンペーン」のちらしのどこにも「サバの名前」の記載がなかったのだ。

「……まだ決まってないんです」と村山さん。

えっ?

「検討しているんですけど、まだ決まってないんですよね」

あの……原稿を書くのに……「名前はまだない」もどうかと思いまして…

「いろいろ案は出ているんですけどね……」「そうだよなあ。決まってないと商品として問題だよなあ」「なんだかわかりづらいですよねえ」。みなさん、気にはなっていたようだ。

―――――じゃあ決めましょう!(ジェンヌ、強引)

「日本各地のブランドサバの名前って、どんな感じでしたっけ?」と長野さんに尋ねられた。「うーん、地域の名前はマストですよねえ。ないところもありますが、やはり地域名称がついていないと、いまいちPRの際に弱いと思います」。「じゃあ唐津はいりますよねえ」。

「唐津さば」

――――――そ、そのまんまで、インパクトがいまいち……。

一同「うーむ」。

長野さんがポツリと呟いた。「九州大学が、大分県でブランド開発した牛肉が『Qビーフ』っていうんですよね。あっ、これ入れますか?」

「唐津『Q』さば」

「おーっ」。一同どよめき。「うんうん、なんかいいねえ」とみなさん。

きゅ~♪ なんだかかわいい。

アルファベットがついたブランドサバはありませんよ! 絶対目立つ! しかもなんかキャラクターも作りやすそう!! 絶対、いいっ! すごくいいっ!

きゅ~♥

というわけで、決定! 命名「唐津Qさば」。日本初の「アルファベット系ブランドサバ」誕生! 一応「(仮)」で……ということになってはいるが、素晴らしい名前なので、読者のみなさんぜひ、連呼を~!

<次ページへ続く>

イカ活き造り発祥の地で「サバ活」!

センター内の養殖サバの水槽

かくして「唐津Qさば(仮)」の誕生により安定供給にめどがついた、組合では並々ならぬ気合いで、今年度のサバ料理提供へ望んだ。キャンペーン名も昨年の「活サバ」から一新。

「サバ活」

たんに「サバ」と「活」がひっくりかえっただけだが「逆にしてみましたら、トレンドに合った雰囲気になりまして」と名付け親の古館さん。

「これはキャッチーだ」と盛り上がり、そもそも「サバに名前すらなかった」にもかかわらず、組合のポスター、ちらし、HPでは「今はサバ活!」「呼子でサバ活を味わえる宿」「まさにサバ活時代」とノリノリで「サバ活」の文字が躍る。

そしてそもそも、この「活」には重要な意味がある。サバはなんと、おそらく日本初、いや世界初の「サバの活き造り」で提供されるのだ。

「呼子はイカ活き造り発祥の地です」と古館さん。しかも一説によれば「活き造り発祥の地」という話もある。呼子は活き造りの聖地なのだ。

「かつて、イカの前は、タイの活き造りが盛んでした」と古館さんは子供のころを振り返る。近所の旅館の社長がタイを活き造りにしてくれた。社長は「見ろよ」といって、それをドボンといけすに入れた。そして古館少年が目にしたのは衝撃的なシーンだった。

「活き造りのタイが、スイスイ泳いでるんですよ! 今でも忘れられませんね」

さすが、聖地……。

……そもそも、なんで「活き造り」という技術が誕生したのかを改めて考えさせられるような話だが、「活き造りは、切り方ひとつで味が変わりますし、大変技術が必要です。やっぱり、そんな技術を持った料理人がいる呼子ならば、サバも活き造りで提供すべきだろう、という話になりました」

そもそも、各旅館に設置されていた活き造りのイカ用の生簀は大きい。身体がすれやすいサバを入れても問題がなかった。そして活き造りの聖地・呼子にサバが加わることになったのだった。

次回は、呼子のサバグルメをご紹介しますよ! 2月19日に公開します。お楽しみに。

■サバについてのお問い合わせ
★唐津市農林水産商工部水産課
電話番号:0955-72-9130

2015年2月5日公開

●池田陽子(いけだ ようこ)/
サバを楽しみ、サバカルチャーを発信し、サバで日本各地との交流をはかることを趣旨に活動し、イベント「鯖ナイト」を実施する「全さば連」(全日本さば連合会)広報担当「サバジェンヌ」。本業は薬膳アテンダント/食文化ジャーナリスト。本誌では「元気になる若返り薬膳」を連載。著書に『ゆる薬膳。』(日本文芸社)、『缶詰deゆる薬膳。』(宝島社)、『春夏秋冬ゆる薬膳。』(扶桑社)。


その他のサバ記事もチェック!
・「「サバジェンヌが行く!」一覧

<次ページへ続く>

1 2 3 4 5

関連書籍

  • 個室で大切な人と“おもてなし”レストラン
  • 最後の築地
  • ひと味違う 中華街&横浜
  • 大東京23区散歩
  • とっておきの銀座
  • 口福三昧
  • 最強の麺 219軒
  • お値打ちの三ツ星店
  • 移民の宴
  • 綾小路きみまろ公式ファンブック
おとなの週末 Select

人気の特集だけを、
電子版限定でセレクトしました

おとなの週末公式アカウントはこちら
  • Facebook
  • Twitter
  • LINE