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サバ缶のトレンド! サバカレー缶界における進化系

2021年、サバ缶はこれまでもご紹介してきたとおり個性的な「進化系」商品がブーム。そして、じつはもうひとつ、最近のトレンドがある。各社から続々と「サバカレー缶」が登場しているのだ。
そのなかで「サバカレー缶界における進化系」ともいえるのが、STIフードホールディングス「STONE ROLLS(ストンロルズ)さば屋のカレー缶」だ。昨年12月に東北地区でデビューを果たし、2021年1月、都内のスーパーマーケット「オオゼキ」などで発売がスタートした。
たまたま、そのころ近所のオオゼキの鮮魚コーナーでサバを物色していたジェンヌさん。
ん?
なぜか、鮮魚コーナーにサバ缶が。しかも、見たことのないパッケージ。
気になって近づいてみると、衝撃的なサバのイラスト。なんとほぼ、顔だけ。そしてサバのトレードマーク「縞目」ナシって……。
さらにその味付けも初見。
「お蕎麦屋さん風さばカレー」!? キッパリ「めんにも合う!」の文字
そして、もうひとつは「バター『チキン』風さばカレー」って。
チキンなの? サバなの!?

ほっこりかわいい。けれどどこかザワザワした「ストンロルズ さば屋のカレー缶」

すべてが????すぎ。でもかのオオゼキがわざわざ、魚のそばに置くんだから美味しいに違いない! と購入。
そして食べてみた。
え? 衝撃的に美味しい!!! ほっくりしたサバの身は、ちゃんとあのバターチキンカレーの風味!! さらに、お蕎麦屋さんで出てくる、あのダシ香る和風カレーの中にサバ!!
あのですね。ジェンヌ的に魚の味付き缶って、難しいんだなーとじつは思っています。くどかったり、みょうなクセや雑味があったりするケースがまま、あったりする。
ところが、この缶詰にいたってはまったくそれがない! いたってナチュラル。食べはじめから、食べ終わりまで見事な美味しさ。あまりの完成度にノックアウト。完璧すぎるサバカレー缶!!
なぜこれがなしえるのか!!! これはお話を聞きに行くしかない! と向かったのは東京・南青山に本社を構える「STIフードホールディングス」。
1988年、水産商社としてスタート。現在は、原料の調達から製造までを一貫して扱う水産加工メーカーだ。これまで、主にコンビニをはじめとするPBブランドの製造を行ってきた。
会社の名前を知らなくても、サバファンならおそらく、STIフードホールディングスが手掛けたサバ商品は知っているはず。そして、その美味しさも知っているはずだ。
そして、サバファンから高い支持を受ける「カルディ」のサバ缶シリーズ。こちらも同社によるもの!! 昨年大ブレイクした地中海の調味料・ハリッサを使った「ハリッさば」もですよ!
お世話になってました~(涙)。
もともと加工技術に力を入れ、たとえば「焼きサバ」はこだわりの「二度焼き」仕上げ。鮮度を保持し、賞味期限を延ばすための「ガス置換包装機」を業界で初めて使用するなど、進取の気質で取り組んできたSTIフードホールディングス。その技術力をいかして、自社商品をと満を持して開発されたのがストンロルズブランドだ。
ストンロルズというかわいい名前。それは「宮城県石巻」に由来する。STIフードホールディングスは、石巻工場を稼働し、震災復興に努めている。

STIフードホールディングスのグループ会社であるSTIミヤギ石巻工場は、石巻港からほど近い場所に位置する

「東日本大震災で被害を受けた工場の製造ライン、熟練の技術をいかした商品を広くお客さまにお届けしたいという想いがあり、石巻の名前を冠した商品開発となりました」と語るのは事業本部常温食品部 常温食品グループ長の松野宏昭さん。
まず、その第1弾となったのが「バターチキン風さばカレー」と「お蕎麦屋さん風さばカレー」の2品だ。

缶詰は料理だ! 引き算が生んだ唯一無二のカレー缶

ところで、そもそもなぜ、ブランド初の商品は水煮でも味噌煮でもなく、「カレー」だったのだろうか?
「完璧に丸い形状のため熱対流がよく、さらに加圧もされる缶詰は『煮込み系のお料理』にとても適しています」と説明するのは、同グループの吉本朝子さん。「弊社では缶詰を『ひとつのお料理』というコンセプトで考えています。その意味で、煮込み料理であるカレーはどうか、という話になりました」。
さらに社内で「カレーが今後くるんじゃないか」という話もあったらしい。さすがっ!!(笑)。

常温食品部のみなさん。右から吉本朝子さん、松野宏昭さん、部長の吉岡航平さん、パッケージイラストを手掛けた「サバ画伯」の加藤都子さん、神田あさ実さん

せっかく作るなら、これまでにないカレー缶を世に出したい! と検討した結果、味付けはスパイスをきかせた「バターチキンカレー」と、ダシをきかせた「和風のカレー」に決定した。
どちらも使用するサバは徹底的に吟味。「先ほどお話したとおり、弊社ではただ素材を缶に詰めて加工、と考えてはいないので使用するサバの旬の時期、サイズ、脂肪率にこだわって厳選した国産のものを選んでいます」(吉本さん)
そして、ストンロルズブランドのこだわりはここからがハンパない!
厳選したサバをそのまま缶詰にする、というわけではないのだ。
「まず、下処理を行います」と吉本さんが説明する。ここで登場するのが、独自の「下処理用調味液」。配合されているものはマル秘! 化学調味料はいっさい不使用という調味液にサバを浸すことで「くさみが除去され、旨みが増幅し、ふっくらとして食味がよくなる」というミラクルが!
「これによって、魚体による味の差がなくなり、調味の際に余分な調味料を加える必要がなくなります」と吉本さんが説明する。
STIフードホールディングスの開発におけるポリシーが、「商品開発宣言」としてHPに明記されている。
「ふつうの調味料と新鮮な素材で、とびっきりを作る。旨みを引き出す」
さらにこの商品開発宣言で、ジェンヌが釘付けになったのが「『足し算』の味ではなく、『引き算』から始まる調理を目指す」という文字。
引く!?
「弊社は基本的に、基礎調味料のみで魚のもつポテンシャルを最大限にいかし、旨みを引き上げるような調味技術を使っています。素材のよさを、うまく活かす方法は熱心に研究していると自負しています」と、松野さん。
下処理もその一環。そして、ここから先も徹底的な「味付けのこだわり」が続くのだ。

トマトたっぷりの「バターチキン風さばカレー」

下処理したサバは、いよいよ缶詰加工へ。
バターチキン風さばカレーはベースにトマトをたっぷり配合。「水やオイルを使わず、濃縮トマトソースを1/3以上贅沢に使っています」と吉本さん。

バターチキン風さばカレー。「バターチキン風ではなく、バターチキンカレーの味そのものなので『風』は入れたくなかったけれど、『バターチキンサバカレー』では意味不明なので『風』を入れました……」と吉本さん

スパイスは独自にアレンジしたものと、タンドリーチキン用のスパイスを使用。じつはスパイスは缶詰で使用した場合、風味がとんでもなくとびやすい。
「大量に入れてもびっくりするほど残らない」けれど、そこは数々の調理技術で鍛えた技がある。ショウガ汁を利かせることで、味に刺激をつけてスパイシー感を補った
さらに「バター」もじつは缶詰には難しい食材。乳製品も風味が飛びやすいのだ。こちらは、なんと玄米由来のライスミルクを使い、バターから香りを抽出したオイルを加えることで解決。
そして「チキン問題」。ちなみに、こちらの商品にはチキンは入っていない。念のため。
とはいえ、「バターチキンカレー風、と言っているのだから入っていなくても『チキン感』は出さなければ」と怒涛の試行錯誤。絶妙な割合で、チキンコンソメを配合した。
もちろん、「サバ料理としての完成度」は重要。旨みを引き出すために醤油や、塩こうじも使用して仕上げた。

ナンと組み合わせるのがおすすめ。パスタソースにしても美味しいとのこと

カツオダシと3種類の醤油が決め手「お蕎麦屋さん風さばカレー」

さらに渾身の「調理技術」が施されたのが「お蕎麦屋さん風さばカレー」だ。その開発は苦労の連続だったらしい。
「お蕎麦屋さんで出てくるカレーのような、ダシがふわっと香る、あの感じがなかなか再現できなかったのです」と吉本さん。

お蕎麦屋さん風さばカレー。開発チームは、お蕎麦屋さんを食べ歩いて研究したのだとか

「カレーは長く煮込むと美味しいけれど、ダシは煮詰まりすぎると風味がとんでしまうんです」。缶詰加工はそうそう単純ではない。ならば、とダシをたっぷり入れても、効果なし。ほかの調味で補っていくしかない。
そこでカツオダシをベースに、なんと3種類の醤油を使用
「醤油の香りは加工の過程においてある時点までは残りますが、熱のダメージでどこかの段階で消えてしまいます。先味、中味、後味すべて醤油が感じられるように、それぞれのタイミングで香りの『山』がくる3種類の醤油をブレンドしました」。
さらに濃い口みりんをたっぷり使い、味をなじませて「自家製めんつゆ」を作ることで、ダシ感を高めた
そして缶にサバを入れ、めんつゆとカレー粉をブレンドした混合調味液を充填して……完成! ではない。
さらに仕上げに「焦がし玉ネギと、ゴマ油をトッピング」!
「別ラインでの作業なので工場は本当に大変なんですけど、加熱による香りのダメージを受けてしまうので、ここは譲れませんでした」と吉本さん。
うわー。もうこれらの工程は、まさに「料理」以外の何ものでもない!!(涙)
「ライバルは食品メーカーではなく、赤坂の料亭や銀座のレストラン」というSTIフードホールディングスの気概たるや!!

もちろん蕎麦にピッタリ! うどんはもちろん、そのままお酒のつまみにもおすすめだそう

どう仕上がったのか、を改めてジェンヌがお伝えします!!

【実食1】ナンと相性抜群!「バターチキン風さばカレー」

まずは、「バターチキン風さばカレー」。

缶を開けると色味から、辛そうに見えるかもしれないが、いたってマイルド

そのまま食べても美味しいけれど、温めるとさらに美味しい! 湯せんしてから、おすすめの組み合わせ「ナン」とともに。
旨い……。ストレートに旨い! さまざまなスパイスが香り、濃厚なトマト、バターやライスミルクのこっくりマイルド風味、ちゃんとチキンのコク、そしてサバの旨み!!
しかもきっちり、サバの身にもその美味しさがすみずみまで染み込んで一体化。さらに缶詰感ゼロ。このままお店で出てきても、絶対缶詰とはわかるまい。さらに後味スッキリ。完璧である。
ナンとの相性もバッチリ。インドの方に食べてほしいー。

ナンだったら、美味しすぎる汁が残ったお皿を、最後までグイグイぬぐえるし。便利だ(涙)

カレーファンもサバファンも絶対、納得の味わい!
ジェンヌさん、アレンジレシピを作ってみました。「サバサモサ中だけ」。つぶしたジャガイモにバターチキン風さばカレーとミックスベジタブルを加えて混ぜる。ビールのつまみに最高! 子どもにもウケるはず。

「サバサモサ中だけ」。ジェンヌさん無精しましたが、もちろん皮で包んでちゃんとサモサにしても~

【実食2】蕎麦屋にも飲み屋にもなる「お蕎麦屋さん風さばカレー」

缶を開けると、ふわーーーっとダシ香る~。ほんと、いまここはお蕎麦屋さんでしょうか……。

ダシとカレーの香りがたまらない!!

こちらも温めると、さらにリアルお蕎麦屋さん。そして、おそばにオン!
うー、上手だなあ……。あのですね、気の利いた蕎麦屋さんでいただく「スパイスがほんのりきいた系」の秀逸なカレー蕎麦に酷似
サバから出た旨みまで出てるんだから申し分ない!! なんでしょうか、この満足度。

ゆでたてお蕎麦にオン。サバの身をホグホグするとさらに旨し

アレンジとして、「サバカレー肉豆腐」にしてみましたよ。こちらも気の利いた居酒屋の一品的仕上がりに。ゆるゆると熱燗飲める~。くう~。

「サバカレー肉豆腐」。鍋にお蕎麦屋さん風サバカレー、豆腐を入れてことこと煮る。豆腐から水分が出るのでいい感じに仕上がる。味が足りないように思ったときは、サバの身をホグホグして一緒に食べればちょうどよし。

フレンチレストランの一品と見紛うほどの「金華さば水煮缶」

さらに、カレー缶に続いて、ストンロルズブランドを象徴するともいえるサバ缶も登場した。「金華さば水煮」だ。

生の金華さばを使った「金華さば水煮缶」

世界三大漁場のひとつである、黒潮と親潮が混ざり合う宮城県金華山沖を含む良質な海域で漁獲、石巻港に水揚げされた「金華さば」。艶やかでまろやかな脂ノリながら、後味が軽やかなブランドサバだ。
大型サイズの金華さばを、鮮度バツグンの状態で手詰め。ピチピチまるまる太ったサバは、缶詰に入れようとすると「ぷりっとはみ出す」ほどだそう。 

金華さば水煮の手詰め風景。生のサバは、輪切りなのにイキがよすぎて「そもそも、手詰めじゃなきゃムリ」らしい

味付けに使っているのは「伊達の旨塩」のみ。石巻沖の親潮から精製した平釜で2日間煮詰めた、完全手作りの貴重な塩だ。「20種類以上の塩を試しましたが、『伊達の旨塩』を使うと圧倒的な美味しさでした」と吉本さんが説明する。
いただくと確かにその味わいは圧倒的!
缶詰から出そうとしたときに、そのほろほろ感にまず驚き。そして、ちょいと缶汁を飲んでみる。……え? これってたしか水煮でしたよね??
まるでオイル煮のようなこってり感! 誤解しないでいただきたい。脂っこいのではなくて、上質な脂を含んだコンソメスープ的な味わい。えーっ。

濃厚な缶汁。水煮の缶汁とは思えない!!

そして食べてみる。……とろとろ……。上質な脂をまとってとろとろ仕の上がり。皮目のあたりなんて舌で押すと口の中で雪のように溶ける。細やかな繊維は、一流のシェフが作った「肉のコンフィ」のよう。そしてジワジワと旨みが炸裂。
厳選された金華さばのポテンシャル、そして伊達の旨塩が引き出した旨みにノックアウト!!

金華さば水煮。食べ方はそのまま、ワサビとともにがおすすめ!

サバ画伯のイラストにも注目!

そうそう、忘れてはいけない。あの衝撃的なサバイラストの作者である加藤都子さんにもお目にかかれた。
仕事の傍ら、特技のイラストを描き続けていた加藤さん。ストンロルズ開発にあたって、パッケージイラスト担当として白羽の矢が当たった。ちなみに商品名の「さば屋のカレー缶」も加藤さん発案によるもの。
東京海洋大学出身の加藤さんは「かねてからサバに憧憬の念があった」とのこと。「イラストに、サバの縞とかカッコいいとこが入ってなくて、すみません……」と申し訳なさそうに語るけれど、いえいえとんでもない! さすがである。ほぼ顔だけでサバを表現するなんて!! 新進気鋭のサバ画伯である。

サバディー。インドにいるサバをイメージ。まさかの正面顔。「これはなんだろうと手にとってくださる方もいるかと思って……」と加藤さん
サバ助。こちらは、勤勉な日本人のイメージで
金華さば水煮のサバ。サバの下の「三角波」に注目。金華山沖は波が荒く、波の先端が三角形に切り立っていて、三角波が発生しやすい。そんな波も乗り越えた、という加藤さんの金華さばへのリスペクトが込められている
こちら、カレー缶に登場する、愛称「いしのまき」ちゃん。石巻にゆかりがある石ノ森章太郎さんの『サイボーグ009』を意識したコスプレが趣味だそう。誰も彼女について突っ込んでくれないと加藤さんが不安がっているので、突っ込んで~

そしてお知らせ。
カルディ「ハリッさば」は販売休止中ですが、じつはなんとなんと年内に、STIフードホールティングスから「さばハリッサ」の名称で本格的に発売予定
味付けはちょっと異なるバージョンで、こちらもバツグンの美味しさ。お楽しみに!

サバ缶は、同社オンラインショップにて販売中!

取材・撮影/池田陽子

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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