週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で連載中の「クッキングパパ」は、主人公のサラリーマン荒岩一味が、得意の料理の腕を振るって、家族や同僚らとの絆を深めるストーリーが人気。
著者のうえやまとちさん自身が、試行錯誤を繰り返しながら作り上げた自信作のオリジナルレシピを、詳細なイラストと臨場感あふれる筆致で紹介しています。本稿では3月3日号で通算1600話を突破した膨大なエピソードのなかから、毎週1つを取り上げ、その料理にまつわる四方山話をお届けします。
長引くコロナ禍で、自炊をする人が増えているいま、「クッキングパパ」を参考に料理を作って食べて楽しんでみませんか。第37回は「おでん」です。
寒い季節に沁みる! 荒岩流「おでん」は牛テールを水から煮込んでだし作り
クッキングパパ 第5巻「COOK.53 気分はすっかり屋台 あったか~いおでん」は、だしをとってから、時間差でおでん種を入れていきます。半日以上もかけて煮込みますが、そのぶん、しっかり味がしみ込んで美味しさは格別です。
まずは、おでんの味を決める“だし”を丁寧にとることから始めましょう。
使うのは牛テール(しっぽ)。必ず水から入れて、2~3時間弱火でじっくり煮出します。面倒でも、そのつど浮いてきたアクや脂を丁寧にとることで、美味しさが格段にアップします。
下地ができたところで、昆布、ゆで卵とこんにゃく、面取りして十字に切り込みを入れた大根を加えて、さらに煮込みます。面取りとは、切った野菜の角を薄く削ぎ取ることで煮崩れを防ぎ、見た目良く、味がしみ込みやすくなります。
仕上げは薄味がポイント! 練り物は食べる2時間前に投入
1時間ほど煮込んだら、薄口醤油、料理酒で味付けをして、塩で整えます。いわゆる“関西風おでん”と呼ばれるだしは、にごりが少ないのが特徴です。昆布とカツオでだしを取り、濃口醤油やみりんを使い、甘辛でしっかりした“関東風”に比べて、おでん種の旨味を一層ひき立ててくれます。
味付けをしたら、最低半日以上、煮込みましょう。煮詰まるようでしたら、水を足して、焦げ付かないよう注意します。
食べる2時間前になったら、練り物といったおでん種を投入。だしの旨味とそれぞれのおでん種から染み出る旨味が合わさったところで、完成です。
コトコトじっくり煮込んで作るおでんは、時間と手間がかかりますが、じっくり味がしみ込んだおでん種は、いつもとひと味もふた味も違う美味しさです。牛テールのコラーゲンもたっぷりですから、美容にもうれしいですね。
ワラビ、貝、餃子巻…ご当地おでんダネでマンネリ打破
おでん種がマンネリ化しているのなら、日本各地のご当地具材を取り入れてみてはいかがでしょう。
北海道は、たっぷりの昆布だしに、ツブ貝やホタテ、フキやワラビを入れて、味噌だれでいただきます。夏におでんを食べることが多いのも、北の大地ならではです。
東京の定番、ちくわぶは小麦粉でできた練り物です。地味な存在ながら、味のしみ込んだもっちりした食感がたまりません。
イワシやサバが原料の「黒はんぺん」で知られる静岡。おでん種に、いわし粉や青のりをかけて、一層風味を増していただきます。
梅貝や車麩、加賀野菜など盛りだくさんの金沢おでん。海と山の幸がバランス良く入って、彩りも豊かです。
大阪のおでん種の代表選手は、牛すじやタコ足。クジラの肉が入ることも。
博多の屋台でも人気なのが、魚のすり身に餃子を巻いて揚げた「餃子巻」。ロールキャベツとともに、子供にも人気です。
思い思いの味で煮込むおでんが、それぞれの家庭の味としてじんわり受けつがれ、家族みんなの記憶をいつまでも温めてくれることでしょう。
文/中島幸恵、漫画/うえやまとち
◆『クッキングパパ』とは?
福岡市博多を舞台に、商社の営業課に所属するサラリーマン、荒岩一味が家族や同僚、友人らに得意な料理の腕前を披露、食を通じて周囲の人々に笑顔とパワーを与える物語。作中ある料理のレシピは、定番料理からオリジナルメニュー、地元九州の郷土料理まで多岐にわたり、詳細なイラストとポイントを押さえた簡潔な説明はいま、すぐ作りたくなると好評を博している。 週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で1985年から連載している人気シリーズで、2022年10月現在、単行本は163巻。