週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で連載中の「クッキングパパ」は、主人公のサラリーマン荒岩一味が、得意の料理の腕を振るって、家族や同僚らとの絆を深めるストーリーが人気。
著者のうえやまとちさん自身が、試行錯誤を繰り返しながら作り上げた自信作のオリジナルレシピを、詳細なイラストと臨場感あふれる筆致で紹介しています。本欄では3月3日号で通算1600話を突破した膨大なエピソードのなかから、毎週1つを取り上げ、その料理にまつわる四方山話をお届けします。
長引くコロナ禍で、自炊をする人が増えているいま、「クッキングパパ」を参考に料理を作って食べて楽しんでみませんか。第31回は「おむすび」です。
クッキングパパ流おむすびレシピの決め手は塩の味と量
ふっくら、ツヤツヤの見た目に加え、味よし! 香りよし! と三拍子そろった新米が出回り始めました。炊き上がった新米がごちそうになるのを実感させてくれるのが、おむすびではないでしょうか。
クッキングパパ第4巻「COOK.35 握ってみよう! いろいろおむすび」では、おなじみの三角型から、意外と手こずる「俵型」、驚愕の「でかむすび」まで、握り方のいろはを懇切丁寧に教えています。
おにぎり用に新米を炊く際は、水の分量をふだんより少なめにやや硬めにして、握りやすい状態にします。その間に具を用意。新物の秋サケやイクラなど、ちょっと贅沢に、より特別感を出してもいいですね。
蒸らし終えたら、予め飯茶碗にごはんをよそっておきます。おむすびの大きさが均一になるのと、放熱されて握りやすくなるからです。
手のひらを水で少々濡らして、塩をまぶしたらいよいよ握っていきましょう。ごはんの傷みが気になる時季なら、水を梅酢に変えるのもおススメです。また、塩の味と量がおむすびの美味しさを左右しますので、お好みの塩を選び、くれぐれもつけすぎにご注意を。
基本の「三角おむすび」は添えられた片手の力の入れ具合がコツ!
まずは基本中の基本のカタチ、三角型から。いきなり三角形を作ろうとせず、最初はふんわり丸くまとめます。
次に握る手を山型に曲げて角を作り、転がしながら三角に型取っていくのですが、ポイントとなるのが添えられたもう片方の手の力具合。指先に力を入れるのではなく、手の平、親指の付け根のあたりでおむすびの真ん中を強く推して形を整えるのがコツです。
案外、苦戦するのが俵型ではないでしょうか。
片手にごはんをのせてクルクル回しながら、もう一方の手をコの字にしておむすびの上下を押さえながらまとめるとうまくいきます。
でかむすびは、握らずに全形のり3枚を使ってごはんを丸く包んでなじませます。
いずれのカタチもごはんの粒が潰れないよう、力を入れ過ぎずふんわりやさしく握りましょう。
丸も!四角も!知られざるご当地おむすび
調べてみると、日本各地には特産米と地元の食材を用いたさまざまカタチをしたユニークおむすびがあります。
北海道では、丸型のおむすびが家庭の味として親しまれているようです。筋子やウニなど具が豪華なのも魅力的ですね。
一方、四角いサンドイッチのような見た目をしているのが、沖縄の「スパムおにぎり」、別名「ポークたまごおにぎり」。豚肉加工食品の「スパム」はアメリカ統治時代に普及したもので、たまご焼きと合わせボリューム満点の食べ応えです。
ほかにも海苔ではなく、塩漬けにした葉物野菜やとろろ昆布でまいたり、きな粉をまぶしたりと個性豊か。
握り方、カタチ、具材……おむすびって奥深い! 食欲ならぬ学びの秋に、改めて実感させてくれそうですね。
文/中島幸恵、漫画/うえやまとち
◆『クッキングパパ』とは?
福岡市博多を舞台に、商社の営業課に所属するサラリーマン、荒岩一味が家族や同僚、友人らに得意な料理の腕前を披露、食を通じて周囲の人々に笑顔とパワーを与える物語。作中ある料理のレシピは、定番料理からオリジナルメニュー、地元九州の郷土料理まで多岐にわたり、詳細なイラストとポイントを押さえた簡潔な説明はいま、すぐ作りたくなると好評を博している。 週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で1985年から連載している人気シリーズで、2022年9月現在、単行本は162巻。