一杯がっつり濃いのが食べたい! 麺を覆うほどトッピングをのせたい!……数多くのラーメンが世にある今、もとめる欲望は尽きることがない。そんな願いをかなえるべく作られた究極のラーメンを覆面で調査。珠玉の4杯を紹介する。
荒木町「一条流がんこ 総本家分家 四谷荒木町」
朝9時から午後1時まで。営業時間も独特だがラーメンの味もまた……。まずスープをひと口飲んで頭に“?”が浮かんだ。経験したことのない摩訶不思議な味なのだ。2口目。輪郭が見えてきた。分厚い魚介の風味だ。3口目にたどり着く頃には本能の赴くまま没入することになる。
この味を作ったのが創業者の一条安雪さん。現在は引退し、弟子の後藤康浩さんに引き継いだ。件のスープに話を戻すとなんとこれ、カエシを一切使用していないという。牛骨や豚骨をベースに大量の煮干しや昆布で旨みと塩味をつけた素材のダシ100%なのだ。
浜田山「支那そば たんたん亭」
ひと目で旨いとわかる、今年創業45年を迎える支那そばの堂々たる佇まい。熱々のスープは豚ゲンコツと鶏ガラをベースに前日じっくり炊かれ、当日カツオ節や煮干しが合わせられる。やさしく澄んでほんのり魚介を香らせながら、厚い旨みが下支えしている。
緩やかにウエーブした細麺はパツンとしてのど越しよく、相性抜群。そしてその上に鎮座する、厚切りのチャーシュー6枚と肉ワンタン、海老ワンタンが各3個。これがまた! オーブンで焼き上げた焼豚は外がこんがり、脂も甘く、肉々しい。トゥルントゥルンの食感がたまらないワンタンにはプリプリのエビとジューシーな肉餡がたっぷり。かなりのボリュームだと思うのだが、箸が止まらず完食必至だ。
自由が丘『Dad’s Ramen 夢にでてきた中華そば』
一杯2000円。額面だけ見れば高いだろう。しかし、丼にはA5ランクの黒毛和牛を使ったローストビーフ2〜3枚に、ほろりと柔らかな岩中豚の角煮が乗る。まさに贅の極みだ。このラーメン、実は店主・吉田さんの夢の中で、亡くなったお父さんが食べていたものがベースになっている。
スープの軸となる煮干しも最高級。九十九里の最高級カタクチとシロクチのイワシだ。その上品な風味を歯切れのいい麺が持ち上げる。
そして、黒毛和牛の上品な脂が溶け出せば、終盤には地鶏や貝類が追いかけ、重層的な旨みが支配。気付けば夢見心地で食べ終えていた。一杯5000円出すから出店してほしいとは、外国のお客様。この一杯への渇望は海をも越える。
方南町「CLAM&BONITO 貝節麺raik」
無類の貝好きである私が、自信を持って推すのが、この「貝節潮そば」。以前は複数の貝を組み合わせた動物オフのスープを使っていたが、鶏や豚のダシを合わせるようになった現在も舌にのしかかるようなコハク酸の旨みは健在だ。アサリの旨みがガツンと脳天に響き、一瞬で貝への渇望を満たしてくれる。
途中、バラ海苔や貝のペーストを溶かせば磯感がブースト。貝の旨みはスープの温度が下がるにつれて一層強くなり、余韻もまた長くなっていく。脇を固めるトッピング類も抜かりのないおいしさで、丼全体のクオリティを底上げ。とりわけチャーシュー類の出来映えが素晴らしいため、ぜひとも3種のチャーシューが楽しめる「特製」をオーダーしてほしい。
…つづく「常磐線の「うまいラーメン」ベスト6…《松戸・北千住・柏・馬橋・北小金・金町》でみつけた、旨み濃厚の「究極の一杯」」では、トライラーメン大賞の受賞経験のあるラーメン店を紹介します。