2025年1月、街の喧騒から離れた東京・麻布台の住宅街に、『喫茶 [nanashian] (ナナシアン)』がオープンした。大通りから一歩入った路地に位置するここは、知らないと思わず通り過ぎてしまいそうなほど、ひっそりと佇む一軒だ。香り高い、選び抜かれたスペシャルティ・ティーと、扉を開けた先に広がる隠れ家空間とは?
恵比寿で行列を作った話題のカフェが麻布台の住宅街に移転
実はここ『喫茶 [nanashian] 』は、2024年2月に間借りカフェとして恵比寿に開店して間もなく、朝8時から行列を成した人気店だ。2025年1月に満を持して麻布台ヒルズの近くに新店を開店し、その後も話題を集めている。
鮮やかなブルーの壁が目を引く店内に足を踏み入れると、アートやオブジェが点在した、独特の世界感に引き込まれる。奥の棚には、絵本や小説、画集などがずらりと並び、思い思いに本を手に取りながらゆったりと寛ぐことができる。
茶葉の香りがふくよかなスペシャルティ・ティーのみを厳選
最大の目玉は、店主がテイスティングして選び抜いた、産地証明付きの「スペシャルティ・ティー」(特定の茶園で品種・製法・品質管理基準を満たした高品質な茶葉)だ。茶葉そのものが持つ香りや味わいを楽しんでもらうため、紅茶はすべてフルリーフ・香料無添加。世界各地からトップ・クオリティのもののみをセレクトしているそうだ。
この日オーダーしたのは「ダージリン キャッスルトン 夏摘み」(1210円)。紅茶のシャンパンとも言われるこちらは、華やかでふくよかな香りが魅力。「ほっと一息つく時間を大切にしてほしい」という想いから、すべての紅茶をポットサービスで提供しているのもうれしい。
「自分の喫茶店を開くというのは、高校生の時からの夢だったんです。地元・茨城に自家焙煎珈琲のカフェがあり、時間がそこだけゆっくり過ぎているような、不思議な感覚に陥りました。私もこういう空間を作りたいなあと思ったのが、喫茶開業の原点です」と語るのは、店主の半田希美(はんだのぞみ)さんだ。
ミシュラン星付きレストランやビストロなどでアルバイトしながら学生時代を過ごした後、2年ほど外資系銀行に会社員として勤め、開店資金を集めて独立したが、最後の1年は会社員と自身で営む間借りカフェの営業を平行しながら、休む間もなく働き、開業にいたったそうだ。