座談会に集まったのはモーニング担当の新人編集荒川、ランチ系のライター輔老、おやつの井島、老舗+ランチ系少々の肥田木、各ジャンルを食べ歩いた編集武内。それぞれが感じた喫茶店の“ときめき”をホットに語ったら……深~い味わいに仕上がりました。
今風のカフェと違う喫茶店の魅力とは
輔「喫茶店って他の職種と比べて店主の人柄が如実に店に出るのが特徴じゃないでしょうか。その人の部屋に遊びに行くみたいな感じ……」
荒「お、例えば例えば?」
輔「やさしい人の部屋はやさしい雰囲気だし、活発な人の部屋は活発。とっておきのおもちゃを持ってる人も。そういう空気に包まれるのが楽しいし、心地いい。店がさらけ出してくれてるから、こっちも心を開けるというか。人生と人生が向き合うからうれしい感じがするんですよね」
肥「何かジーン。てか、お名前は存じ上げてましたけど、もしかして初めましてじゃないですかぁ?どもー、私が噂のおと週の美魔女です」
武「あ、微妙の微ね。噂の真相は酒豪の微魔女♪」
輔「ども(笑)、輔老です。ランチ系を担当しました」
井「長く通うほど第二の故郷のような存在になったりするのは、やっぱりカフェより喫茶店が多いですよね。それにしても喫茶店のご飯、いいなあ。取材どうでした?」
輔「心に残っている店主の言葉が『うちはチェーンじゃないからね、なるべくお客さんの要望に応えたい、サービスしたい。私の一存でできるんだもん』というもの。だからかな、ランチなのに晩メシか!と思うほどボリュームがある店も多かったです」
武「町中華が洋食を出したりする食堂的存在でもあったように、昔の喫茶店も同じく洋食や定食を出す、それも近隣住民やビジネスマン向けのファミレス的役割もあったんでしょうね。そんな店がまだ残っていてうれしかった。ランチ系はなるべくその側面が感じられる店を選びました」
『cafe香咲(かさ)』焼きチーズナポリタン1617円、香咲ブレンド880円
肥「健康を気遣ったメニューがあったり、毎日でも通える安さだったり、そこに地域やお客さんへの愛みたいなものを感じる。町全体が大きな家だとしたら、その町で親しまれる喫茶店は家族が集まる食卓やリビングのようなものだよね。
疲れた時はコーヒーでくつろいで、時間を問わずお腹が空いたら店主の得意料理で満たされる。それもツンとすましたよそ行きの味じゃなくて、馴染みの食材で作られた気負わない味だから安心する。家や職場の近くにお気に入りの喫茶店を持っておくと人生豊かになると思う」
忙しい日常でゆっくり過ごせる贅沢こそモーニングの醍醐味/編集・荒川
荒「僕はモーニング担当だったんですが、誰かに作ってもらう朝ご飯ってすごく価値のあるものだと思いました。そもそも店でも家でも、人に作ってもらう料理にすごく幸せを感じるんです。特に朝食は群を抜いて幸せな気持ちになる。まあ朝が弱くて自分ではまともに食事を用意できないってのもあるんですが」
井「朝ちょっと早く起きて、いつもと違う時間を過ごすのって優雅ですよね!」
荒「そうなんですよ!世間がせわしない朝の時間帯、ゆっくり腰を据えてこんがり焼けたトーストとおいしいコーヒーを楽しむ……そういうところにモーニングの醍醐味があるのだと。何気ない日常の中にある、ちょっとした贅沢こそ毎日を生きる活力源だと教えられた気分です」
『珈琲の店デン』モーニングセット500円
輔「近年はモーニングに行列してる店もありますよね」
荒「そう、外国人観光客も増えていて、観光地では特に人気でした。だから今回モーニングに求めていた“ゆったりした贅沢な朝の時間を提供してくれる店”を探すのが難しかった。店構え、サービス、味わい、どれもが揃っているにもかかわらず、お客さんが多いとどうしてもガヤガヤした店内模様になってしまう。僕が紹介したい喫茶店の良さとはやっぱり違うなと思って取材しなかった店も……」
肥「客層も時代も変わっていく中で、変わらない雰囲気を守る喫茶店は小さな奇跡のような存在かもしれないねー」
武「確かに。町中華と同じで町の喫茶店も少しずつ姿を消している印象です。昔ながらの純喫茶的な店は特に。高齢化、後継者不足、建物の老朽化などいろんな理由があるみたいで、今回も店が無くなっていたり、高齢だから等々の理由で取材を断られた店も。少し悲しくなりました」
井「でも私、最近は昔の懐かしさを大切に考えてくれる若い人が増えているとも感じていて、それが何かうれしいんです。あ、私はおやつ担当だったんですけどね、今回取材した店は造り物のレトロではない本物の味わい深さがある店も多く、その魅力+受け継ぐ店主のこだわりが重なることで、今の時代にも受け入れられる店になっていくんだなとしみじみ思いました」