今、心地よい睡眠を得られていないのでは?と悩む人が増えている。そこで、そもそも質のよい睡眠とは何か?どうすれば快眠につながるのか?などについて日々研究を重ねる方たちにアドバイスを伺った。今回は、野球、水泳、ゴルフ、サッカー、スキー、ありとあらゆるスポーツのリーディングカンパニー『MIZUNO』の横江哲弥さんにスリープ市場に挑戦する理由、心意気を聞いてみた。
『MIZUNO』さん、教えてください。寝返りは大切なんですか?「ひと晩に20回の寝返りは快眠の鍵を握ります」
寝ているときにも”人は運動している”がコンセプトです
「睡眠もスポーツだ」
ああ、なんとも爽やかで力強く、覚えやすいキャッチコピー。でも、寝てる間もサボれない気もしてきた。
その心は?
「寝ている間、脳は休んでいても体は動き続けていますから。睡眠をそう捉えたのがミズノらしさだと考えています。『よく眠れる』ではなくて、『睡眠中にいかに体をケア(手入れ)するか』を目指すブランドです」と横江哲弥さん。
確かにそうだ。
いい眠りにつくのは目的ではない。運動した翌日、いかに快適に脳や体が動かせるかが大事だ。そこは本末転倒にしたくはない気がします。
「コップ一杯の汗をかいて、40分間のランニングと同じカロリーを消費する。寝返りは20回打つ。そう考えると、寝ている間にかなり運動しています。ひとつのスポーツとして考えたら、当社の持つスポーツや身体の知見を生かすことができると考えました」
これまで、トップアスリートから、部活動の中・高生、サッカースクールの子供たちまで、あらゆるスポーツ用品を提供してきた会社だ。
「翌日のパフォーマンスが大事なんです。気持ちは明日へ、ポジティブに。スポーツはポジティブですから」
2022年に大阪に大型研究施設のイノベーションセンターが完成。新たな領域の睡眠事業を推し進めた。
「モーションキャプチャーを使って、深呼吸時の首の角度を計測しました。そのまま、横に寝たときの角度を再現できないか。枕に生かせないか、の発想から『深呼吸まくらО2』を開発しました。比較品(※1)の枕に比べて28%、呼吸量が上がるデータを得ています」※1仰向けの睡眠時に楽な呼吸姿勢をサポートすることによる頸部の姿勢で得られる物理的な効果 ミズノ調べ(仰向け時の一回換気量測定/比較枕:中綿枕/高さ15cm、本製品:首元6cm/頭部4.8cm ※効果や感じ方には個人差があります)
首の当たる部分は柔らかく、頭部分は反発性が強く、寝返り時に横顔があたる部分は硬い。3つの素材を組み合わせた、老若男女が使える枕の開発はことのほか時間がかかった。
「枕難民という言葉があるほど、ぴったりの枕を探すのが難しい。悩んでいる方が多いのでもっと早く出したかったんですが、実験をしエビデンスを取るのに想像以上に時間がかかりました。でも、開発スピードが早くても、ちゃんといいものを出せないなら意味がないという社風です」
そう、ミズノ創業者・水野利八の口癖は「ええもんつくんなはれや」なのでした。
時にミズノはアスリートの契約選手が多い。運動のプロからのフィードバックは貴重だ。
「選手は体が資本なので睡眠への意識が高い方が多いです。基本的に我々より体が重い。筋肉量が多くゴツゴツしている。そして肩幅がありすぎると寝返りが打ちづらいんです」
寝返りは、接触面の血行が悪くなることを防ぐために、睡眠時に自然と体が転がる現象。仮に8時間で20回打つとしたら、30分に1回以上打つ計算になる。
これを助けるために、ポリエーテルエステル系ファイバーで組まれた、3次元網状構造体の高反発素材「リフル」で、寝返りが打ちやすいマットが作られた。こちらも興味深い。
「従来のウレタンマット(※2)より30%軽い力で寝返りが打てる」(※2ミズノ調べ、ウレタン布団との比較)。6つ折りができる特徴もあり、持ち運びもしやすい。
「寝返りが打ちやすいマットは、体圧分散性が悪くなりやすいんです。体圧分散性が高いとは、どこにも力がかからない状態。つまり寝返りで体の回転する軸がなくなる状態。相反する要求がある中、リフルは柔らかいけれど、力を押し返してくれるので、両立できるんです。この素材を開発した理由です」
今後は、独自の吸湿発熱素材を使用した商品もラインナップに加わり、今後さらに季節に応じた商品展開も強化していく予定だという。
「睡眠もスポーツだ」が広まっていく未来に、乞うご期待なのだ。
Q.高い枕が好きですが、低い枕を推奨されます
A.枕は個人の好き嫌いと、客観的な正解がイコールじゃないんです。高い枕が好きな方がいますが、高い枕は推奨されません。こちらとしては、無段階調整のできる枕を作りました。最初は高く設定して、少しずつ低くして慣れていくのがよいかもしれません。
Q.商品開発にアスリートの意見を使うよさは?
A.体つきは違いますが、繊細な意見が聞けるところです。一例ですが、寝返りが打ちやすいマットレスの開発で、少ない力で体が回転できる製品を目指していたところ、アスリートだけではなくて、筋肉量が落ちたシニアの方でも寝返りが打ちやすい製品をという発想につながったこともあります。
『ミズノ(株)』横江哲弥さん
アスレティック事業部ライフ&ヘルスマーケティング部。アパレル・イクイップメント課。
撮影/谷内啓樹、取材/輔老心、イラスト/倉本トルル
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
※画像ギャラリーでは、ミズノの睡眠グッズの画像をご覧いただけます
※月刊情報誌『おとなの週末』2026年4月号発売時点の情報です。
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