酒屋で飲む「角打ち」、「角打ち」とは、酒屋でお酒を買い、店内の一角で飲むこと。缶詰やちょっとしたおつまみを食べて、一杯ひっかける。それゆえ、安く飲める。今回紹介する3軒は、いずれも店の奥に住居を構えた“ホンモノ”ばかりだ。
画像ギャラリー懐かしさと温かさが同居する酒呑みたちの心の“世界遺産”
九州の玄関口・福岡県北九州市は、角打ち発祥の地といわれている。2015年7月に世界遺産に登録された「官営八幡製鐵所(やはたせいてつじょ)」をはじめとする工業地帯が広がり、仕事終わりの労働者はこぞって酒屋に集まった。3交代制ということもあり、朝、昼、夜、いつでも飲める酒屋は格好の場所だった。その文化は残り、今も市内には約150軒の「角打ち」が存在するという。
とある日の朝、小倉駅に降り立った。駅から日本で初めてアーケードが設置された商店街「魚町銀天街(うおまちぎんてんがい)」を抜け、向かったのは「旦過(たんが)市場」。鮮魚店、精肉店、青果店など100を超える店が軒を連ねるこちらにあるのが『赤壁酒店』だ。10時からオープンのはずがシャッターは閉じたまま。近隣のお店に聞くと、どうやら臨時休業だそう。残念。
気持ちを切り替えて小倉を離れ、門司港へ向かった。門司港駅から徒歩10分ほどにある『魚住酒店』に行くためだ。路地を通り、少し坂を上がって見えた店は、まさに昭和の趣。そこでおかみさんから聞いた角打ちの持論が面白かった。「酒屋というのは、自宅兼で営業するもの。通いでやってる店で飲むのは角打ちと呼べないんじゃないかな」。
魚住酒店(門司)
福岡県北九州市門司区清滝4-2-35
“ホンモノ”の角打ちを愉しんだあとは、小倉に戻り『田中屋酒店』と『平尾酒店』へ足を運んだ。どちらもお店の方が優しくて長居したくなるが、角打ちに長居は無用。早々に後にした。
田中屋酒店(小倉)
福岡県北九州市小倉北区京町4-4-36
平尾酒店(小倉)
福岡県北九州市小倉北区紺屋町6-14
「旦過市場」の入り口に、日本初の24 時間営業スーパー『丸和』がある。しかし、12月からは23時までに変わった。時代は変わりゆくもの。でも北九州の角打ち文化はなくならないでほしい。酒呑みにとって、後世に遺したい“世界遺産”なのだから。
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