グルメライターが食べ歩いて見つけた八重洲のおすすめ店。東京駅を飛び出せば、周囲には美食の街が広がっています。八重洲は歩くほどに楽しいエリア。和洋もいろいろ、終電前の〆まで店選びに困りません。撮影/大西尚明(焼きはまぐりSTAND)、西㟢進也 取材/肥田木奈々
画像ギャラリーまずは1軒目、比内地鶏の旨味を追求したお店。
焼鳥本田(焼鳥)
独学で追求した比内地鶏の旨みを店主渾身のフルコースで堪能
路地裏に名店ありとはよく言うが、この店がまさにそう。メニューは焼鳥のおまかせコース1本のみ。使うは言わずと知れた日本三大地鶏の比内地鶏だ。その力強い食感、旨み、香味は、店主が「自分の目指す味に最適」と選び抜いた食材で、身が締まった雌の丸鶏を毎日使う分だけ捌いている。食べさせ方がまたいい。塩かタレの一辺倒でなく、ねぎまは塩で焼いてバルサミコ醤油をひと塗り、自家製鶏油を練り込んだつくねは仕上げに山椒をひと振りするなど、ひと串をひとつの料理と捉えて供する。旬の焼き野菜から親子丼まで店主渾身のフルコースを味わえば、もうこの店に夢中。宝物を見つけたような幸福感に浸れるはずだ。
おまかせコース 5000円(写真はコースより「焼物」、「本日の焼野菜」)
コースの焼物。ぶりんと跳ね返すような歯応えのねぎまや濃厚なレバーなど。内臓系は味の個性によって3種類のコショウを使い分け、ハーブを加えた米酢等で味を完成させる。旬の焼野菜は金時人参など。今は年中出回る銀杏も旬の時期しか使わない
[酒]ビール生750円~ 焼酎なし ワイングラス700円~、ボトル3500円~ 日本酒グラス700円~ [その他のメニュー]追加の一品もの・ささみ風干し500円、比内地鶏の皮ポン酢650円など
2軒目は「普段着のフレンチ」という言葉がピッタリの店。
ラ・ミニョネット(フレンチ)
華やかさよりも誠実に手間暇かける普段着のフレンチに心の底から満足する
「普段着のフレンチ」という言葉がピッタリの店だ。ソースやフォンなど基本の技術をしっかり守り、手間暇かけて作られた丁寧な料理はどれも長く愛される理由のある“温かさ”に満ちている。「この店に来たらこれが食べたい、を根付かせたいんです」と店主。そのひとつがオニオングラタンスープだろう。玉ネギを5〜6時間かけて炒め、鶏のガラやモミジを使ったブイヨンで作るそれは、信じられないほど甘みとコクが奥深く、熱々をハフハフしながら食べる手が止まらない。牛ほほ肉の煮込みも必食の逸品。付け合わせにオムライスが付く遊び心がうれしく、頬張れば旨さに仰天。そして「また訪れたい」と、心から思ってしまうのだ。
オニオングラタンスープ 800円
水分を飛ばし飴色になるまで炒めた玉ネギとバゲットが入る。チーズとバターの風味も加わって、絶品のひと言
[酒]ビール生830円~ 焼酎グラス650円~、ボトル2800円~ ワイングラス620円~、ボトル3200円~ 日本酒100ml750円 [その他のメニュー]昼ロールキャベツトマト風味1000円など 夜鶏レバーのソテーサラダ930円、カスレ~ビストロ定番南仏白いんげん豆・豚肉・鴨の煮込み2100円など
3軒目はハマグリ料理と立ち飲みの気軽なお店。
焼きはまぐりSTAND(ハマグリ料理)
食材にこだわるハマグリ料理と立ち飲みの気軽さ両方の魅力にアッパレ!
お通しもハマグリ、メニューもほぼハマグリ料理と貝好きにはたまらないハマグリ尽くし。陽気な店長“馬場ちゃん”が切り盛りする立ち飲みは、一度体験したらその楽しさと美味しさにハマること間違いナシだ。実はここ、ハマグリの名産地である三重県公認の県応援店舗で、桑名直送の極上品が揃っている。例えば大ぶりの10年物。シンプルに網焼きにした味は、ぷっくりと太った身から旨みのエキスが炸裂ッ! ほかにもタイ風やイタリアン風など味付けに趣向を凝らし、ハマグリの新しい食べ方に目からウロコが落ちまくる。加えて栄養も満点。ひとりで140個食べたツワモノもいると言うんだから、この店の魅力、分かるでしょう?
[酒]ビール生580円~ 焼酎サワー480円~ ワイングラス480円~、ボトル2380円~ 日本酒(1合)冬季限定780円 [その他のメニュー]焼きはまぐりのチーズリゾット580円、アンチョビ枝豆480円、海老ワンタン水餃子パクチー・ナンプラーソース480円など
4軒目は名物料理に連日満席の人気店。
北国炉端 ときしらず東京駅八重洲(居酒屋)
鮮魚は函館直送豪快&お値打ち名物料理に連日満席の人気店
函館直送の鮮魚の刺身や時鮭(ときしらず)の炉端焼きなど、豪快な見た目にアッと驚く名物料理が満載。定番の刺盛りは1人前500円~の安さにも恐縮するが、感心するのは値段以上の旨さだ。毎朝現地とやり取りし、その日の午後には朝獲れの魚が空輸で届くから新鮮そのもの。時季によってホッケの刺身など珍しい味わいもお目見えする。もちろんウリは魚だけにあらず。「知床どり」や仙台牛など北海道・東北の食材を使う肉料理やご当地グルメも多彩だ。〆には看板「いくら飯」を。まず熱々のご飯が登場し、目が覚めるほど鮮やかな赤い粒をこぼれるまでてんこ盛りにしてくれる。その贅沢な姿にもうメロメロ!
[酒]ビ―ル生380円~ 焼酎グラス550円、ボトル1980円~ ワイングラス450円~(ボトル)2980円~ 日本酒グラス650円~ [その他のメニュー]夢の大地肩ロースにんにく醤油800円、北海道甘エビ唐揚げ600円、生ウニの天ぷら1280円など
5軒目は多彩なメニューの海鮮料理店
日本橋 まえ田(海鮮料理)
黒板に並ぶ多彩なメニューから選ぶ楽しさにも心が躍る
ご覧の通り、ご飯が見えないほど穴子が敷き詰められた釜飯に目が釘づけになった人も多いのでは? 期待を裏切らないとはこのこと。上質な対馬産を身割れしないようふっくら仕上げた味わいはまさに職人の技! 穴子の煮汁とカツオダシで炊いた佐渡産のコシヒカリと共に、ほろほろと口の中でほどけていく。そんな定番人気の料理も魅力だが、見逃せないのはその日の黒板メニューだ。鯛にウニとキャビアをのせたお造りなど、毎朝築地で仕入れる旬の食材を駆使した店主の感性光る創作和食がビッシリ並んでいる。これが酒飲みの心をくすぐる絶品揃いときたら心も身体も前のめり。しかもお手頃。参りました!
[酒]ビール生500円~ 焼酎グラス500円~、ボトル4000円~ ワイングラス600円~、ボトル3500円~ 日本酒グラス680円~ [その他のメニュー]昼炙り穴子一本のせ海鮮丼1100円 夜カキの土手焼870円、すじこの西京漬680円など
八重洲 グルメマップ
今回は八重洲通りを中心に北側一帯を八重洲エリア。八重洲エリアは路地文化も息づき、老舗も新店もジャンルもいろいろ。ひっそり店を構える老舗バーで覆面反省会となりました!
編集武内(以下武)「八重洲は面白い街でしたね。狭いエリアに魅力がギュッと詰まってるというか。ここ『G』のように歴史ある隠れ家的なバーも潜んでるんですから。まずはカンパイ」
肥田木(以下肥)「ホント。伝統を守る老舗もあれば、若き店主が独学で味を追求した『焼鳥本田』や、『焼きはまぐりSTAND』のような気軽な立ち飲みもあったり、何でも揃うおもちゃ箱みたいな街」
武「焼鳥や寿司とかジャンルもいろいろで、ちょっと一杯でもしっかり食事でも、その時の需要に応えてくれるんですよね。昭和の面影残る路地から表通りまで、ウロウロしながらはしご酒するのもおすすめです」
肥「週末は賑やかだったよね。『ときしらず』なんて何度行っても満席で入れなかったほど。ここは予約必須!」
武「居酒屋ならチェーンだけど『かあさん』も楽しかったな」
肥「巨乳の熟女店員さんのネームプレートに書いてたあだ名が“肉まん”ってのが笑えた!武内さん、目のやり場に困るとか言いながら、用もないのに『肉まんさーん』って何回も呼んでたでしょ。男って単純よね~」
武「そんな肥田木さんも大きなおっぱいに癒される~って触りたがってたくせにぃ。それはさておき、本格和食ならやっぱり『日本橋 まえ田』でしょうか」
肥「同感。料理が豊富でどれも美味しい。穴子の釜飯なんてインスタ映えもバッチリだよ」
武「ビストロならオニオングラタンスープが絶品の『ラ・ミニョネット』」
肥「牛ほほ肉煮込みの付け合わせがオムライスなのも小躍りした~。以前は野菜だったそうだけど仕入れ価格が安定しないし残す人もいるからオムライスに変えたら好評だったんだって」
武「発想がいいなあ。そんな和洋の店が狭いエリアに揃い、選ぶ楽しさがあるのが八重洲でしたね。うう、美味しい話してたらお腹空いてきた。終電まで時間あるし、八重洲によく出てる屋台ラーメンで〆ってのは?」
肥「さんせーい。その前にウイスキーロックもう一杯!」
武「まだ飲むの? ま、どこで飲んで食べても駅まで5~10分で行ける安心さも八重洲の魅力ってことで。僕もおかわり!」
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