フカヒレに干しアワビに、それに天然クエまで……。靭公園近くの「熱香森」は緑あふれる自然空間で食す高級中華のコース専門店
パッと見の外観は南国にある高級レストランのよう。
重厚なドアを開けて、一歩踏み出すと建物を覆う深緑だけでなく、店の中心部には息遣いが聞こえる象徴的な樹木が、吹き抜けの天井へ力強く伸びる。
実はこの店、肥後橋から徒歩7、8分。
靭公園近くにある高級中華「熱香森(ラシャンセン)」である。
まるで都会の中の異空間。
創造的な建物に緑が覆い、高級店なのに居心地の悪さを微塵も感じさせない。
これには“ある仕掛け”があるからだ。
「森で聞こえるヒーリングを流しているんです。上部に取り付けたスピーカーでは気にならない程度の深緑の音を流して、ソファの足元にあるスピーカーからは川のせせらぎの音が聞こえます。心が落ち着く音を流して会話も壊さないようにしているんです」
この雰囲気のなかで中華のコースを……。
「このお店は今年で3年になります。春にリフォームして再オープンは7月にしたばかり。前はアラカルトでも注文できましたが、今は基本的に1階がコース料理に特化させています」
コースは全部で3種類。
「熱」(5000円)と「香」(8000円)。
それに、いちばん上の「森」(1万2000円~)。
「森」は旬の食材を用いた日替わりコースだ。
この日の「森」のコースメニューは、まさに中華の王道だった。
「特性前菜八種盛り」は、女性にも人気が出そうな、映える料理。
イベリコ豚のトントロやよだれ鶏の阿波踊り、サザエの麻辣煮込みなど、計8品。
枝豆は紹興酒の酒粕で作られたザオルーで、印象的だったのがミル貝のトウチ料理。
トウチとは黒豆を発酵させたもので、日本ではなじみのない味付け。
前菜だけでこれほど豪華なのだ。
この日驚いたのは、冒頭の写真のフカヒレ(3人前)。
その大きさも170g!
「フカヒレは大きいほうが上物と言われています。大きなフカヒレは繊維質が太くなる。そのぶん、スープの絡みがいいんです」
「吉切鮫尾鰭の姿煮込み 上湯ソース」は、スープを完飲するほど濃厚で美味。
「実は中国でもフカヒレは気仙沼産、アワビだと青森産が最高級グレード。中国近海よりも、日本の近海で素晴らしい食材がとれるんです」
「干し鮑のオイスターソース煮込み」は旨味という旨味を凝縮していた。
鮑を干すと当然縮むが、そのぶん、風味と旨味を閉じ込める。
中華で干し鮑が高級とされるのも食べれば納得するだろう。
生で食すより、干したほうが断然に旨い。
「リニューアル後から有名中国料理『香桃』で腕を振るってきた点心師を招き入れて、小籠包などの点心やデザートにも力を入れているんです」
香港からブームに火がつき、東京にもその流行が広がった「チャーシューメロンパン」が今後のトレンドだ。
コースでは「点心師特性の二種点心」となっていた。
世界一安いミシュラン店の異名をとる、香港の大衆店「添好運」が考案したこのチャーシューメロンパン。
メロンパンとチャーシュー?
一見ミスマッチと思いきや、これがこれが……表はメロンパンのサクサク。
中のアンは甘めの醤油ダレで、これがよく合うのだ。
さらに隣の小籠包は、トリュフ入りと超豪華だ。
至福な時間はまだまだ続く。
「山口県産天然クエ XO醤蒸し」。
こちらのXO醤蒸しとは香港ではメジャーな調理法のこと。
「香港の最高級ペニンシュラホテルの料理長が考えたソースで、XOとはウイスキーのグレードを意味してXOぐらいの価値がある。それほど美味しいという意味です」
海老や海老の卵、干し貝、金華ハムなどを用いて生まれたソース。
これが驚くほど旨い!
ご飯にそのままかけて食したくなるほどだ。
下に見える野菜はロメインレタス。
通常のレタスよりも繊維質がしっかりしていて、苦味が癖になる。
メインの「黒毛和牛ハラミのブラックビーンズ炒め」では、ハナビラタケの食感と味わいに驚嘆。
ハラミとの相性がすこぶる良いのだ。
万願寺とうがらしとゴボウを加えて、トウチを刻んだ調味料で味付け。
こちらも、ぜひとも食してほしい一品に仕上がっている。
恐ろしいことに、まだコースは続く。
しかも、中国茶で箸休めすると再び食欲がわくから不思議だ。
「海鮮のあんかけ焼きそば」で提供された、この豪勢な海鮮たち。
この量で一人前。
それをペロリと完食。
旨いからどれだけでも入っていく⁉
そしてラストは「熱香森式デザートプレート」と「菊入りのプーアール茶」。
画像は3人前。
「カスタード饅頭」「アメリカンチェリー」「紫芋のコロッケ」「シャインマスカット入りのココナッツ団子」の計4品。
コースを見てわかるように味はもちろんのこと、提供される料理の盛り付けも実に繊細だ。
深緑の中で中華三昧――。
ちなみにディナーだけでなく、お手軽に食せるランチも人気だ。
熱香森(ラシャンセン)
[住所]大阪市西区京町堀1-8-11 ラクメンビル1階
[TEL]06-6940-6694
[営業時間]11:30~15:00
17:00~22:30
[定休日]祝日
加藤 慶(かとうけい)
大阪在住のライター兼カメラマン。週刊誌のスクープを狙う合間に関西圏の旨いモンを足で稼いで探す雑食系。
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