英国留学記『赤と青のガウン オックスフォード留学記』(2015年1月刊)で、一躍時の人となった三笠宮家の彬子女王。日本から遠く離れた英国での新年、「お正月気分が出ない」と嘆く彬子女王に救いの手を差し伸べたのは――? 今回は、彬子女王がオックスフォード大学留学中に召し上がった、日本国内の3つの地方のお雑煮の物語である。
英国のお正月は「お雑煮もお節料理もない」と嘆く彬子女王に救いの手が
「お雑煮もお節料理もなくて、なんだかお正月が来た気がしないんですよね~」
と、彬子女王。ここは英国ロンドン。ストリートには門松もなければしめ縄飾りも見かけないだろう。一般の国民と変わらないご感想に「皇室の方たちもそう感じるのか」と安心感を覚えてしまう。そんな物足りない気分の彬子女王に手を差し伸べたのが、ロンドン在住の日本人ご夫妻である。
『赤と青のガウン』は、彬子女王が2001年9月からの1年間と、2004年9月から5年間にわたって英国のオックスフォード大学マートン・コレッジでの留学生活をまとめられた書籍である。日本での皇族としての暮らしを離れ、興味津々で活動し、友と過ごした日々が生き生きと綴られている。若い女性らしい感性で、料理について多くのページを割いているのも魅力的だ。
彬子女王は博士論文を執筆するため、研究対象であるロンドンの大英博物館に足しげく通っていた。そんなときには、友人や知人の家に泊まらせてもらっていたが、とりわけ気楽に過ごせたのが、この日本人ご夫妻の家庭であった。
大英博物館の東アジア美術の修復工房で働くご主人と、京都出身の奥さまとは、文化芸術にご興味のある彬子女王は話が合ったのだろう。
昭和天皇が召し上がったお雑煮は「京味噌仕立てで丸餅入り」
ロンドンで宿を借りているとき、彬子女王は料理上手の奥さまと一緒にスーパーに買い出しに行き、ご近所のチャリティーショップをはしごして帰り、お茶をともにするという時間を楽しまれた。日本にいたらありえないことである。
博士論文執筆が佳境に差し掛かったころ、年末年始を日本に帰らずに英国で過ごしていた年があった。そのとき「(英国には)お雑煮もお節料理もなくてお正月が来た気がしない」とこぼした彬子女王に、奥さまが「それなら」と日本らしいお雑煮を作ってくれたのである。
ちなみに、日本の天皇家で召し上がるお雑煮はどんなものなのだろうか。
昭和天皇の御代の頃には、昭和天皇と良子さまは1月1日に来客から新年の祝賀を受けられたあとで、ご夕食としてお雑煮を召し上がられていた。京味噌仕立てで丸い餅が入ったお雑煮である。
一方、例年のお正月に三笠宮家で彬子女王が召し上がるのは、1月1日にはブリが入り、2日が白味噌仕立て、3日が鶏肉と野菜が入ったお雑煮であった。








