大阪・関西万博が閉幕して早2ヶ月。あれほどまでに混雑していた、御堂筋線と中央線が通る大阪メトロ「本町駅」は現在非常に落ち着いている。しかし、名残惜しさからか公式キャラクターのミャクミャクのグッズを携えている人を見かけない日はないし、ミャクミャクグッズの店が限定的にオープンすると長蛇の列ができている。明らかな「万博ロス」状態だ。そのロスを埋めるかのごとく、大阪では異国情緒溢れるイベントや飲食店の新規開店が続いている。
そのひとつが、日本で唯一のクウェート料理テイクアウト専門店『Expo Kuwait Kitchen』。クウェートパビリオンのレストラン、『シドラ』でシェフを務めたハネイン・ジエド(HANEIN ZIED)さんが、大阪・日本橋に2025年12月19日にオープンさせたお店だ。今回、ハネインさんにクウェート料理の魅力を直撃した。
裕福な国・クウェートの料理
クウェートは中東の小さな国で、大きさは四国より少し小さいくらい。しかし、「石油に浮かぶ国」といわれるほど、石油の生産量輸出額ともに世界有数で、莫大な外貨収入を得ている非常に裕福な国なのだ。それとともに、政府の保守的な財政維持をしていることも重なり、クウェートの通貨は2025年12月現在、「世界でもっとも価値の高い通貨」と呼び声が高い。
そんなクウェートの料理は米、ラム肉、鶏肉、豆類、スパイスを中心に、素材の味を大切にした香り豊かな料理だ。特にスパイスは周辺環境の影響を受けて、発展してきた。インドやペルシャ、アラブ諸国との交流によって、独自のスパイスの使い方が生まれ、シンプルながら奥深い味わいが特徴である。
また、クウェートは国教がイスラム教のため、食事もハラールに即している。ハラールとは、イスラム教徒が従うべき生活全般のルールを指し、食生活についての指摘もある。そこまで厳しい規制はないが、アルコール摂取と、犬、豚の肉、ほかハラールが定める方法で屠殺されていない肉を食べることが禁じられている。
ムスリムは、動物の血を口にしてはいけないことから、血を効率的に抜くために脊髄を切らない方法で屠殺することが定められている。脊髄を切らないことで、脳からの指令が止まることなく、心臓が動き続けて、余分な血液が最大限排出される。肉の鮮度がより長く保たれるため、最も衛生的な屠殺方法とされているのだ。
万博では1日平均2000食を提供! シェフはチュニジア出身
ハネインさんがシェフを務めていたクウェートレストラン『シドラ』は、大阪・関西万博でかなりの人気を呼んだ。毎日平均2000食、閉幕前1ヶ月は開店から閉店まで長蛇の列ができ、約3000食が売れていたという。
1日にこんなにも大勢の人に料理を振る舞うことができ、「クウェート料理っておいしいんだね!」とたくさん声をかけてもらうことができたとハネインさんはうれしそうに語る。
実は、ハネインさんは同じアラビア半島のチュニジアの出身。元々料理が大好きだったことから、18歳で料理の専門学校へ入学。卒業後は様々な国のレストランや、飲食店、ホテルで修業を積んでいた。アラブの料理には精通していたものの、万博で初めてクウェート料理を作ったそうだ。
「万博での経験は、私にとって非常に貴重なものだった。多くの人にアラブの料理、クウェート料理を伝えられた。シドラを仕切るシェフに教わった秘伝のスパイスのレシピを知る者は日本に2人しかいなくて、自分はそのうちの1人なんだ」と誇らしげに語ります。





