この野菜、ご存じですか⁉
さて、突然ですがクイズです。
和名で「萵苣(ちしゃ)」というこのお野菜、何かわかりますか?
季節を問わず、常備されている方も多いのでは。我が家の冷蔵庫の野菜室にも、超高騰しない限りはたいてい入っています。
ではさらなるヒントです。萵苣はもともと「乳草(ちちくさ)」と呼ばれていて、それがなまって“ちしゃ”になったとも言われています。
そう、正解はレタス!
乳の字でピンときたという方もいらっしゃるかも。レタスの語源はラテン語の「乳」。鮮度の良いレタスは、茎をカットすると、ミルクのような液が出ますね。これは「サポニン様物質」で、食欲を増進し、肝臓や腎臓の機能を高める働きがあると注目されています。
この「サポニン様物質」に含まれているラクツカリウムには、鎮静・催眠の効果があるんだとか。
ちなみにレタスはキク科の植物で、タンポポなどと同じ仲間。確かに、タンポポの茎も折ると白い液体が出てくる(子どもの頃以来折ってないけど)。言われてみればその通りだけれども、同様に葉っぱ部分をいただく、キャベツや白菜とは全然別モノなんだということに改めて気付かされました。
なおレタスは全体の約95%が水分で、ビタミンC、ビタミンE、カロテン、カルシウム、カリウム、鉄、亜鉛などを含んでいるんだそう。だからストレスが溜まったと思ったらバリバリと食べれば、カルシウムでのイライラ解消効果が期待できるかも⁉
なんにせよ、レタスちゃんったら良いことづくめじゃないの!
ということで、今回はこの身近なお野菜・レタスについて学んでいきましょう。
農家から見るとこんな野菜
お話を伺ったのは、埼玉県羽生市で「Bonz farm(ボンズファーム)」を営む大貫伸弘さん。
「旬であること」「鮮度が良いこと」「美味しい品種を育てること」をモットーに、少量多品目で50品目100種類以上を生産し、受注収穫で都内や埼玉県内などの様々なジャンルのレストランに卸している農家さんだ。
さっそくレタスについて聞いてみよう。
――レタスって身近すぎて、あんまり深く考えたことがなかったのですが、どんなお野菜なんですか?
大貫さん「地中海沿岸から中近東付近が原産の淡色野菜です。紀元前6世紀頃から栽培されていたと考えられています。日本には10世紀頃に入ってきたとされていますが、現在のようなレタスが育てられ始めたのは明治時代以降だそうです」
――へぇ! そんなに歴史があるとは! スーパーなどで1年中並んでいますが、旬ってあるんですか?
大貫さん「関東では4〜5月と9〜12月ですね。日本は縦長なので、産地をリレーしていき出荷時期をズラしていくことで、1年中販売されています」
――あぁ、確かに冬場は香川県産などの暖かなところ、夏場は長野県産の高原レタスなどが有名ですもんね。
大貫さん「それ以外の時期に流通しているレタスは、茨城県などでハウス栽培されています」
――春と秋のレタスはどんな違いがあるんですか?
大貫さん「春は暑さに向かっていくので、レタス自身が水をどんどん吸い込み、水を発散させます。自分の中で循環して水を蓄えていくので、春は瑞々しい野菜が多いんです。
一方、秋・冬は寒さに向かっていくので、例えばダウンジャケットを着込むように、寒さに負けないよう自分にエネルギーを溜め込みます。だから味が濃くなりますし、固くなっていきます。ですから暑さに向かうか、寒さに向かうかで、野菜の味というか“表情”が変わってくるんです」
――状態に合わせどう活かすかということを料理人さんに考えていただいているということですね。
大貫さん「はい。同品種のレタスでも春と秋で、また同じ季節の中でも最初と最後で味や食感が変わってきます。若いのと中堅どころと、年老いてからそれぞれの味わいがにじみ出るというのは、人間と一緒ですね(笑)」
なるほど。そうやって季節感を意識できるのって、野菜の最大の楽しさ。でも1年中食べているレタスに季節を感じるなんて初めての感覚です。
というのも、暑さに弱いレタスを美味しい状態で運ぶ、予冷出荷という技術のおかげでもあるのですが。
最近は、夜中に収穫して早朝に出荷し、お昼ごろには店頭に登場する“朝獲れレタス”が並ぶスーパーなども増えていますよね。ありがたや。
美味しいものの見分け方と保存は?
――ちなみに、美味しいレタスの見分け方ってありますか?
大貫さん「一般的には、葉がギッシリと詰まっていないものと言われますよね。芯は10円玉程度の小さく締まったものが理想ですね」
――保存方法ってどうなんですか?
大貫さん「生産者としては、できるだけ早く召し上がっていただきたいですね」
――ごもっともです。すみません。気をつけますが、我が家は二人家族なんです。でもバリバリ食べたいから玉のまま買いたいんです。
大貫さん「スーパーで売られている際に包まれている袋は乾燥しにくく、鮮度を保ちやすいと言われています。ですので、保存の際にはその袋に包むか、濡らした新聞紙に包んでポリ袋に入れてください。
我が家ではあらかじめ食べやすいサイズに千切って、タッパーに入れてキッチンペーパーをかけ冷蔵庫に保存しています。サラダや炒め物、スープにパッと入れられるので、楽ですし、早く使い切れますよ」
――やっぱり野菜は鮮度が命なのですね。なる早でたくさん食べられるような美味しいお料理は後編に続きます。
米作りが盛んな羽生市で数少ない野菜農家。飲食にまつわる仕事に従事したのち、味がしっかりかつ日持ちすると料理人から絶賛を受ける茨城県の「久松農園」で修業し、2015年に独立。露地栽培で無農薬で作られた野菜たちを心待ちにするファンが多い。いずれは野菜がメインの飲食店を開くのが大貫さんの夢。※農場での直販は行っていません
https://ja-jp.facebook.com/pages/category/Agricultural-Cooperative/Bonz-farm-909476659074224/
参考文献:『からだにおいしい 野菜の便利帳』(板木利隆 監修/高橋書店)、『そだててあそぼう レタスの絵本』(つかだ もとひさ へん・つかもと やすし え/農文協)
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