ジャズ喫茶「ピーター・キャット」のグランドピアノ
そのまま下りて、右に曲がると、「ラウンジ」だ。テーブルと椅子が配置され、読書も飲食もできるスペース。置かれているヤマハのグランドピアノは、村上さんが早大在学中から都内で経営していたジャズ喫茶「ピーター・キャット」でライブ演奏の際に使われていた実物だ。
他にも貴重な展示物がある。階段突き当りには、舞台「海辺のカフカ」の2つの舞台美術装置。ひとつは、土星を想起させるネオンサイン、もうひとつは水槽だ。どちらも印象的なシーンで登場するという。
ラウンジの奥に進むと、「カフェ」が現れる。ラウンジ、カフェとも、什器や調度品はこだわりのものばかり。例えば、建築家・デザイナーとして活躍したデンマークの巨匠アルネ・ヤコブセン(1902~71年)による「アントチェア」や、同じくデンマークを代表する家具デザイナーで椅子の巨匠としても知られるハンス・J・ウェグナー(1914~2007年)の椅子など。眺めているだけでくつろいだ気分になれるインテリアが魅力だ。
栗原はるみさん“監修”の「季節野菜のドライカレー」をカフェで
カフェは、早大生らが運営。店名は「オレンジキャット」(橙子猫)だ。村上さんが早大生の時に夫妻でジャズ喫茶「ピーター・キャット」を開業したことをふまえた試みで、同大学としても学生運営の学内喫茶店は初めてとなる。
代表社員の教育学部3年、市原健(けん)さん(21)に、“村上春樹ブレンド”と称したオリジナルブレンドのハンドドリップコーヒーを淹れてもらった。「しっかりとしたコクを感じられる深煎りのコーヒーです。華やかさもあり、複雑な味わいが特徴です」(市原さん)
たしかに、コクがある。舌の奥にしっかりとした苦味が感じられ、同時に酸味も広がる。華やかな香りが鼻に抜けていく。うん、美味しい。
カウンターには、トマトをはじめ野菜の彩りが鮮やかなドライカレーがディスプレイされていた。市原さんによると、村上さんの妻と料理研究家の栗原はるみさんらが以前見学に訪れた際、栗原さんから「ドライカレーが作りやすいですよ、季節の野菜を入れて変えていくのもいい」とアドバイスを受けてできたメニューという。