チャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介。前回からのひとり旅の続き。富山に抜ける途中に立ち寄った岐阜・高山でのお話です。
画像ギャラリー前回、富山ブラックとチャーハンを紹介したが、今回はその続き。富山へは、高速道路を使わず下道を使ってのんびりと旅をした。
自宅から富山までのルートは、愛知県内を南北に走る国道41号線をひたすら北へまっすぐ。温泉が有名な下呂市や古い町並みが残る高山市を抜けると富山県に入る。
岐阜・高山でチャーラーの店探し
富山県で高岡大仏や射水神社などで観光を楽しんだ後、ふと、岐阜県高山市のご当地ラーメン、高山ラーメンが頭に浮かんだ。
鶏ガラに魚介のダシを加えた和風のスープが恋しくなり、富山からの帰りに立ち寄ろうと決めた。せっかくならこれもチャーラーの旅にしたいと思い、「高山ラーメン チャーハン」で検索。
数こそ少ないものの、何軒かヒットした。その中からおいしそうと思った店へ行ってみることに。それが『中山中華そば』だ。国道41号線沿いの高山市内中心部からやや離れた場所にあるので、地元の人がメインの店かもしれない。
看板には「中山の中華料理 飛騨のけいちゃん」とあった。中華料理となると、当然チャーハンはあるだろうが、問題はラーメンである。高山ラーメンではない可能性もあるからだ。となると、チャーラーの企画としてボツになることも考えられる。でも、ここまで来たからには行くしかない。
あ、ちなみに「けいちゃん」というのは、岐阜県の南飛騨や奥美濃の郷土料理で、醤油や味噌をベースとした自家製のタレに漬け込んだ鶏肉をキャベツなどの野菜と一緒に炒めたものである。こちらはまた別の機会に。
店内に入ると、家族連れとカップルばかりでほぼ満席。1席だけ空いていたカウンター席に案内された。ふと、店内に目をやると、ちょうど本日のおすすめメニューが中華そば(並)とチャーハンの「チャーハンセット」(950円)だった。通常は1000円なので、50円引きで食べられるということだ。
迷うことなく注文し、カウンター席から厨房をチェック。店はご夫婦で切り盛りしているようで、調理はご主人が、盛り付けと配膳は奥様が担当しているようだ。チャーハンは注文を受けるごとに中華鍋を振って作っていた。
これは中華料理店のラーメン? それとも高山ラーメン?
これが「チャーハンセット」である。セットゆえに半チャーハンかと思いきや、しっかりとフルサイズ。いやー、お腹がペコペコだったのでありがたい。デザートにコーヒーゼリーが付くのもうれしい限り。
まずは、中華そばからチェックしてみよう。具材はチャーシューとメンマ、ネギのみ。実にシンプルなビジュアルだが、気になったのはスープの色。高山ラーメンはもう少し濃かったような気がする。それに少し濁っているし。照明の関係もあるかもしれないが。
とにかく食べてみよう。おっ、高山ラーメンらしく細めの縮れ麺を使っていて、適度なコシがある。しかし、スープに魚介の風味はあまり感じられず、鶏ガラの方が強い。中華料理店のラーメンとしては文句なしの旨さだが、これが高山ラーメンなのかと問われると正直、わからない。
次にチャーハン。具材はチャーシューとネギ、玉子とこちらもシンプル。パラパラではなく、しっとりとした食感。味のベースは塩、コショウとチャーシューの煮ダレだろうか。味に奥行きがあって、チャーハンとしてはレベルが高い。
油を少なめに作ってあったのも好感が持てた。万人受けする味なので中華そばとの相性もすこぶる良い。あっという間に平らげて、〆のコーヒーゼリーを食べながら思索を巡らせる。
中華料理店のチャーラーであれば及第点以上であるのは間違いない。でも、心がモヤモヤするのは、やはり中華そばが……。あれ? そういえば、高山ラーメンは最初からスープとタレを合わせて煮込んでいるのが特徴だ。
営業時間中ずっと火にかけているので、遅い時間になるほどスープが煮詰まって味が濃くなる。同時に魚介の風味も消えるのだ。魚介のダシ感よりも鶏ガラの味が強かったのは、夜に行ったからかもしれない。
訪れる時間ごとに味が変化していくのも高山ラーメンの面白いところ。次回は開店直後に食べに行こうと思う。
取材・撮影/永谷正樹
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