2023年、創業350周年を迎えた超老舗デパートの三越。4月1日から2024年3月31日までの1年間、 “伝統を超える革新性”をテーマに全国の三越各店と海外の一部店舗、三越伊勢丹オンラインストアで、350周年を記念したさまざまな催しが行われる。4月26日(水)より全国で始まった、三越の大創業祭の一部をご紹介します。
画像ギャラリー2580万円!! 「お主も悪よのう」体験ができるお饅頭が登場
1673(延宝元)年、江戸本町1丁目で開店した呉服店『越後屋』を原点とする三越。
創業から10年後の1683年、現在地への移転の際に掲げたスローガンは「店前現銀無掛値(たなさきげんきんかけねなし)」。現代では当たり前となっている「正札販売」を世界で初めて行い、富裕層だけのものだった呉服を一般層にまで普及させた。
1904(明治37)年には、日本で最初に「デパートメントストア宣言」をし、百貨店としての歴史を歩み始めた同店。
1927(昭和2)年に日本初のファッションショーを開催すれば、1930年には現在のお子様ランチの前身とされる「御子様洋食」を本店食堂で提供するなど、さまざまな革新を繰り返しながら現代へ歴史を紡いできた。
時代の要請に応えつつ、先端を走り、地域に愛される店づくりを推進してきた三越の350年。このアニバーサリーイヤーを記念して、350周年限定のスペシャルなアイテムが目白押しだ。
日本橋三越本店限定で展開されているのが、時代劇の中でお馴染みのシーン、「越後屋、お主も悪よのう」を再現できるお饅頭。遊び心あふれる演出に思わずニヤリとしてしまった。
宮内庁御用達の漆器店『山田平安堂』のお重に詰められているのは、1349年創業、日本で最初に饅頭を作ったとされる和菓子店『塩瀬総本家』の「錦宝華(きんぽうか)」。職人の手業により丁寧に作られた逸品だ。特別仕様の「山吹」は、金箔がたっぷりとあしらわれ、贅の限りを尽くされている。
二の重に仕込まれているのは、純金で作られた小判。24金で作られた純金小判は、金工作家の石川光一さん作で、1枚(25g)42万9000円。
下写真のサンプルの内訳は、K24慶長小判(60枚)2574万円、二段重「白檀」5万5000円。販売期間は2023年5月5日(金・祝)までで、予約が必要だ。
受注生産かつ小判の枚数を選択できるとはいえ、この企画を考えた三越のスタッフと「Go!」を出した上層部の心意気に大きな拍手と敬意を贈りたい!
でも正直なところ、庶民の私にはとてもじゃないが買えないお値段(笑)。しかし、うれしいことに、通常の「錦宝華」(1個702円。各日数量限定、2023年5月5日〈金・祝〉まで)が、日本橋三越本店 本館地下1階の『菓遊庵』で購入できるのだ。
幕府御用として江戸名物の地位を確立し、徳川家や伊達家などの大名がこぞって使っていたという『塩瀬総本家』の饅頭。歴史に思いを馳せながらいただきたい。
名だたる名店が名を連ねる店舗特別企画品にも注目!
今回、それぞれの店舗限定のものも多く並ぶ。
2023年5月9日(火)まで、日本橋三越本店限定で販売されるのが、金箔が施された『榮太樓総本舗』の「繁盛団子 金の濃しあん」(1本324円・1日10本限定)と、ライオンがかわいらしい『菓匠花見』の「雷音白鷺宝」(1個・249円・各日なくなり次第終了)。
日本橋三越本店と銀座三越では「三越創業350周年記念缶」として、各ブランドのおすすめ商品をアソートしたオリジナルの限定パッケージを販売する。
ラインナップは、『赤坂柿山』の「三越創業350周年記念缶 おかき詰め合わせ」(銀座は100点限定、1944円)、『彩果の宝石』の「三越創業350周年記念缶 彩果の宝石ゼリーアソート」(銀座は100点限定、3780円)、『王様堂本店』の「三越創業350周年記念缶 大判かきもち八撰」(日本橋本店のみ、2484円)の3種類。
日本橋三越本店 本館の外観をイメージして同店のスタッフがデザインしたものだ。街の風景や通行人なども細かく描き込まれており、見ているだけでも楽しい。
『とらや』の限定品は「小型羊羹 5本入」(銀座は300点限定、1728円)。三越の包装紙「華ひらく」をモチーフにしたパッケージになっている。
『山本海苔店』の「のりちっぷす」(うめの味・発芽玄米の味・ツナマヨの味・明太子味、各648円)。パリッパリでおやつやお酒のつまみにもってこい。
日本で初めてクッキーを販売した『泉屋』の「泉屋オリジナル記念缶」(29枚入り・1998円)は、イラストレーター・セツサチアキさんの描き下ろし。かわいらしい猫と三越のシンボルであるライオンが描かれた缶がキュートなクッキーアソートだ。
国産野菜をたっぷり使用したこだわりスープの『野菜をMOTTO』では、気仙沼産のフカヒレが約20%も入った「フカヒレのスープ」(1296円)を用意。芳醇な『にんべん』の鰹出汁を使った350周年限定コラボスープは、レンジアップでいただける手軽さがうれしい。
その他、『たねや』や『両国屋是清』など、三越と共に歩んできた名店の品物も揃う。
『北海道麦酒醸造』とコラボした「三越350周年 浮世絵デザインビール」(350ml・各385円)も三越限定発売。歌川国貞の大作「越後屋前三美人」をラベルにした限定醸造の地ビールはアンバーエール、ヘイジーIPA、ピルスナーの3種を用意。
なくなり次第終了のものもあるので、気になる方は早めにゲットしてほしい。
東北の誇りを胸に、開店90周年を迎えた仙台三越
今年4月1日に開店90周年となり、すでにアニバーサリーイベントが始まっている「仙台三越」も気合が入っている。
伊達家お抱えの歴史ある酒蔵『勝山酒造』の「純米大吟醸限定酒」(720ml・3300円。1000本限定)は、お米が持つふくよかな旨みの中に、コクとキレが感じられる1本。伊達政宗公を彷彿とさせる特別仕様のパッケージも魅力だ。
その他、『角星』の「水鳥記 純米大吟醸 袋取り雫酒」(720ml・3300円。200本限定)や、仙台三越90周年記念ラベルがスタイリッシュな『男山本店』の「蒼天伝 大吟醸」(720ml・3960円)など、仙台三越でしか購入できない銘酒が揃う。
仙台三越の開店90周年を記念して「バカラ」と製作したのが「仙台三越限定 伊達なタンブラー」(1万8700円)。モチーフとなっている伊達政宗公騎馬像は2022年3月の地震により被害を受けていたが、今年2023年3月21日に修復が完了。無事仙台城址に帰還された。仙台の人々にとっては、スペシャルなオリジナルタンブラーといえるだろう。
さらには伊達家と江戸時代より深い繋がりを持つ松平家がある島根県松江市の老舗和菓子店3軒による、オリジナルの特製生菓子も登場する。
食だけではない。90周年をお祝いして、仙台にご縁のあるアーティストと組んでさまざまなプロジェクトを展開する。
メインは、国内外から熱い視線を浴びている仙台出身のアーティスト・佐々木香菜子さんによる巨大タペストリー。定禅寺通り館の吹き抜けに登場している。その力強さと同居する繊細さに思わず立ち止まり、涙ぐむお客さんもいるのだとか。
90周年オリジナルソングに加え、仙台三越をイメージした店内BGMを手掛けるのは、仙台を拠点に活動するヒップホップユニット「GAGLE(ガグル)」。日本語ヒップホップクラシックスの旗手として高い人気を誇る彼らと老舗百貨店の異色のコラボに、音楽好きとしては思わず胸がときめいた。
しかも仙台三越では、100周年に向けて若手社員たちによるプロジェクトチームがすでに動き始めているのだそう。ますます目が離せない。
銀座と高松、福岡の三越も周年をお祝い
2020年に開店90周年を迎えていたのが「銀座三越」。1年間を通して実施される創業祭だが、大創業祭ではシーズンごとに全4回行われる予定だ。今年2023年3月に地下3階の食料品フロアをリフレッシュオープンした同店では、2023年5月9日(火)まで大創業祭の第1弾を開催。この期間だけの限定企画や過去の人気アイテムを復刻する。
銀座三越の大創業祭・第1弾に登場するアイテムからバイヤーおすすめの3つをご紹介。
まずは現代フランス菓子の基礎を築いたといわれる『ルノートル』。ブランドの代名詞と言えるケーキ「シュッス」より、日本では銀座三越のみで販売していたシトロン味が復刻する。
「ルノートルシュッス・シトロン」(810円)は、濃厚なレアチーズムースと爽やかなレモンクリーム、香ばしいサブレなど6層で構成。香り高いだけでなく、さまざまな食感も楽しめる。
続いては、『フレデリック・カッセル』。「パルミエ ショコラ フレーズ」(1080円・300点限定)は、過去に好評だった大きなサイズを販売。甘酸っぱいイチゴのフレーバーとザクザクの食感の融合が見事だ。
そして、40年前銀座三越に1号店を出店した『ジョアン』からは、ピスタチオのコクとクランベリーの酸味が混ざり合う華やかなブリオッシュ「ピスターシュ」(422円)がお目見え。
いずれも行列必至の人気商品となるだろう。
「高松三越」では、当地では知らない人がいないという地元の名店から、今回のために特別に企画された和と洋のスイーツが目玉商品として登場する。
『名物かまど』の「紅白大福」(木箱入り、6個・1080円。限定50点)は、紅はなめらかな黄身餡、白はこし餡と厳選素材を使用している。
記憶に鮮烈に残る香りと風味豊かな味わいで人気のスイーツ店『サンファソン』は、「ケークフレーズ」(長さ約22cm・2376円。限定60点)を開発。ドライストロベリーを混ぜ込み、イチゴのチョコでコーティングしたパウンドケーキだ。味や香りの良さだけでなく、目でも楽しめるのがうれしい。
また、「さぬきオリーブ酵母」を使用した『綾菊』の微発泡タイプの日本酒「SANUKI OLIVE SPARKLING SAKE」(360ml・1650円。限定120本)も用意。瓶内2次発酵による繊細な泡となめらかな口当たりが特徴な贅沢な一本だ。
最後に、日本有数のお茶どころである八女市を擁する「福岡三越」で展開されている、グループ唯一の取り組みから一品をご紹介しよう。
八女茶は周瑞禅師が1423年に明から持ち帰った茶の種より栽培・製法が始まったとされている。今年2023年で600年を迎えた、地域の名産品だ。
この八女茶をプロの指導のもと、福岡三越の社員たちが栽培した新茶をいただける。それが老舗製茶店『こが茶』より5月中旬から販売予定の「岩田屋三越ファーム悠久一服」(75g・1620円)。
農作物の育成や収穫、販売までを通して従業員が主体的に地域の現状や社会課題を知ることを目的とした「岩田屋三越ファーム」プロジェクトを実施している同店。この三越創業350周年、八女茶栽培600年を見越して、5年前に茶木を植えており、今年初めての茶摘みとなるのだそう。
ここまで見てきたように、地元と密な関係性を構築してきた三越ならではのラインナップが揃っている。
本記事で紹介したもの以外に各店舗で独自のポップアップショップや特別展なども行われるので、お近くの店舗の情報をよくチェックしておこう。
取材・撮影/市村幸妙
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