第5位『ふくの湯』@千駄木 巨匠のペンキ絵は地元にちなんだ「一富士二鷹三茄子」 [住所]東京都文京区千駄木5-41-5[電話]03-3823-0371[営業時間]11時~24時(土・日・祝8時~)[休日]木[交通]地下鉄…
画像ギャラリー特徴的な建物やペンキ絵、湯質など「名物」のある名銭湯を探してきました。こだわりあり、遊び心あり、歴史を守る想いあり。どれも行く価値あり!のあるある尽くし。鼻歌まじりでひとっ風呂どうぞ。
第1位『稲荷湯』@滝野川
戦前の面影が残る宮造り銭湯で湯と風情を楽しむ
[住所]東京都北区滝野川6-27-14
[電話]03-3916-0523
[営業時間]15時~24時半
[休日]水・不定期で連休あり
[交通]都営三田線西巣鴨駅A3出口・JR埼京線板橋駅東口から徒歩6分
【地域で長年愛される名銭湯の”温かさ”】
そこにあるだけで特別な存在感を放つ三段重ねの瓦屋根。中に入ると昔ながらの番台があり、脱衣所には高い吹き抜けの格天井、そして富士山が見守る浴場からコォンと響く木桶の音。昭和が次々と消えゆく世の中で、戦前の姿を今に残し、家族で大切に守り続ける銭湯がある。創業は大正初期。国の登録有形文化財にも指定されている建物は昭和5年築の荘厳な宮造りだ。戦火も震災も奇跡的に逃れた。
「産湯の時からおじいちゃんおばあちゃんになるまで通ってくれる人もいてうれしいですね。名前も肩書も知らないお客さん同士がここで会っておしゃべりして、また明日ねって帰っていく。ひとりだけどひとりじゃない感覚っていうのかな、ホッとする場を残したいと思っているんです」。小学2年の頃から番台に座っているという女将さんが穏やかに微笑む。
銭湯というものは、地域の憩いの場でもあることを改めて感じさせる、『稲荷湯』はそんな存在だ。体はもちろん心まで温まる。井戸水を用い、46度程度に沸かしたあつ湯は代々の伝統。10年ほど前の改装で39度のぬる湯も設け、42度の普通も含め浴槽は3つになった。錦鯉が泳ぐ庭で湯上りにひと息つけば生まれ変わったよう。これぞ名銭湯。残したい文化である。
【湯上がりのちょい飲みはココで!】
『朝めし酒場 ナニコレ食堂』 @巣鴨
朝から飲める人気店。早めにひとっ風呂浴びたら迷わずここへGO。「おこのみ揚げ」はとろりとした生地に紅ショウガがたっぷり入って量も味も文句ナシ。ナニコレ!と驚く豊富な料理、揃ってます
おこのみ揚げ 300円
[住所]東京都豊島区巣鴨4-27-10
[営業時間]基本8時~夕方
[休日]不定休
[交通]JR山手線ほか巣鴨駅・都営三田線西巣鴨駅から徒歩10分
第2位『改正湯』@蒲田
”大田温泉郷”の西の横綱!見て浸かって楽しい
[住所]東京都大田区西蒲田5-10-5
[電話]03-3731-7078
[営業時間]15時~23時半
[休日]金
[交通]JR京浜東北線ほか蒲田駅西口から徒歩8分
【大田区トップクラスの黒湯の濃さを楽しむ】
蒲田駅西口からゆるゆる住宅街を歩いていると、遠くの方に高い煙突が見えてくる。黒地に白の3文字で『改正湯』。そう、大田区は東京23区最多の銭湯数を誇るエリア。駅の東西に30軒以上の公衆浴場があるのだが、”西の横綱”と称されているのがここ「改正湯」である。地元の銭湯文化を守るため日々奮闘中の4代目、小林千加史さんが教えてくれた。
「昔から煙突は風呂屋の顔でした。今は薪の使用が減って撤去する風潮ですが、うちは看板としてあえて残しています。大田区は古くから黒湯天然温泉が有名で、区内にある銭湯の3分の1以上が黒湯を提供しているんですよ」。これが「大田温泉郷」とも呼ばれる所以。中でもこちらはトップクラスの濃さで、そりゃもう手を入れると数cm先が見えないほど黒褐色だ。
その黒湯に炭酸泉を加えた独自の「黒湯炭酸泉」や珍しい黒湯の水風呂もあったりして温泉尽くし。そして湯船から目を上げると壁面に魚が……タイル絵?いやいや本物。以前は錦鯉を泳がせていたが、4代目が水族館をイメージして子供に人気の小鯉や金魚に変えたのだとか。いやあ、約300匹がスイスイ泳ぐ姿に癒されながら自慢の黒湯を堪能すれば極楽も極楽。大概の悩みは忘れそうです。
【湯上がりのちょい飲みはココで!】
『信濃路蒲田店』 @蒲田
蕎麦やうどんの立ち食いスペースの奥に、座ってちょい飲みできる飲んべえのパラダイスが。「ハムエッグ」は卵2個&野菜も付いて300円。「なすみそ炒め」も本格派。旨くて安い。泣けてくる
なすみそ炒め 400円
[住所]東京都大田区蒲田5-16-8
[営業時間]6時20分~22時
[休日]無休
[交通]JR京浜東北線ほか蒲田駅東口から徒歩1分
第3位『天然温泉 久松湯』@桜台
銭湯業界をあっと驚かせたアートな光の演出
[住所]東京都練馬区桜台4-32-15
[電話]03-3991-5092
[営業時間]11時~23時(最終受付22時半)
[休日]火
[交通]西武池袋線桜台駅北口から徒歩5分
【初代の思いを新たなカタチで発信】
銭湯が100あれば100の物語があるように、『久松湯』にもまたドラマがある。一瞬、美術館かと錯覚するスタイリッシュな姿は2014年に建て替えたもの。もとは昭和31年に初代が脱サラで始めた木造銭湯だったが、東日本大震災を機に2代目が公衆浴場の役割や安全性を考えて刷新した。どうせなら皆がやらないことを――。構想2年、テーマは「銭湯であって銭湯らしくない建物」だ。
何より業界を驚かせたのが浴場壁面をスクリーンに見立てたプロジェクションマッピングだろう。自然光が降り注ぐ開放的な昼に対し、日没からは湯の流れや滴りといった映像パターンで光の演出を仕掛けている。銭湯で最新アートの鑑賞とは時代も変わったもんだな……って感心してる場合じゃない。地下1500mまで掘削した天然温泉の露天風呂もまた人気。
茶褐色の湯は肌に付いた水滴を舐めるとかなり塩気があり、つるんと潤う感覚だ。そんな話題性から多い日は1日1000人以上が利用することもあるとか。「地域の人に喜ばれるコミュニティの場を、という初代の思いを現代の形で活かしました」と2代目。最先端を取り入れても「一番大事なのは居心地のいい清潔感」と揺るぎない。心は初代と同じである。
【湯上がりのちょい飲みはココで!】
『昭和酒場 夕陽』 @桜台
旬魚の刺身、創作串揚げ、〆にナポリタンなど幅広く美味を揃える。お酒もホッピー、サワー、日本酒と様々。深夜まで営業しているので、湯上がり後のんびりとお酒を楽しめるのがうれしい
レモンサワー 450円~、創作串揚げ 300円~
[住所]東京都練馬区桜台1-6-4
[営業時間]17時~翌12時半LO
[休日]無休
[交通]西武池袋線ほか桜台駅北口から徒歩1分
第4位『浅草天然温泉 日の出湯』@稲荷町
しなやかな質感の古代檜風呂と自家製ドリンクで爽快!
[住所]東京都台東区元浅草2-10-5
[電話]03-3841-0969
[営業時間]14時~23時(22時40分最終入店)
[休日]水
[交通]地下鉄銀座線稲荷町駅1番出口から徒歩2分
【樹齢1000年以上?ありがたき檜風呂】
並々と張られた湯にタップ~ンと身を沈めれば、体中の筋肉がゆるゆる、じわじわとほぐれていくのを感じる。手入れが行き届いた檜風呂は樹齢1000年以上ともいわれる古代檜を使ったココの名物。実はこれ、海抜2000mを越える深山幽谷に自生していた台湾産の紅檜で、現在は輸入禁止のため貴重なものなんだそう。
含有する精油成分により保温やリラックス効果が期待され、どこか神々しい雰囲気もありがたや~、心身ともに清められそう。この古代檜風呂は男女週替わりになる1階と2階の浴場どちらにもある。一方、1階の石風呂は流れるような模様の中国産「山水石」、2階は秋田の「十和田石」を使用。
檜も石も同じ湯だが、檜の方がその質感で若干体感温度が低く感じるので長く入れるかも。その湯がまたいい。天然温泉100%。温泉成分のバランスの良さは常連さんの皮膚科医も絶賛したほどだ。なるほどやわらかい肌触りでいい湯だな~♪そしてもうひとつ、ぜひご紹介したいのが自家製のコーヒー牛乳。
本気のコーヒー牛乳 500円、自家製ジンジャーエール 500円
アジア産を中心とした上質な豆と自然な風味が生きた低温殺菌牛乳で作る味わいは、甘くないのでゴクゴク飲めて乾いた喉に爽快だ。同じく自家製のジンジャーエールも辛味の刺激が旨い。プハッ!
【湯上がりのちょい飲みはココで!】
『キューバサンド&デリ アイナマ上野店』 @上野
プルドポークとチーズなどを挟んでバターを塗りながら焼いたキューバサンドは絶品。フレッシュミントが爽やかな本場モヒートと味わえば気分は南国のビーチ。湯上りに最高♪テイクアウトもOK
本場キューバ・モヒート 700円、エル・クバーノ(レギュラー) 980円
[住所]東京都台東区東上野3-23-5 1階
[営業時間]11時半~17時、土12時~18時、日祝12時~17時(いずれも売り切れ次第終了)
[休日]不定休
[交通]JR山手線ほか上野駅から徒歩2分・地下鉄銀座線稲荷町駅から徒歩3分
第5位『ふくの湯』@千駄木
巨匠のペンキ絵は地元にちなんだ「一富士二鷹三茄子」
[住所]東京都文京区千駄木5-41-5
[電話]03-3823-0371
[営業時間]11時~24時(土・日・祝8時~)
[休日]木
[交通]地下鉄南北線本駒込駅2番出口などから徒歩5分
【和モダンな内装とご利益気分の湯】
名の響きからしてご利益がありそうな『ふくの湯』は、初代の妻・富子さんの名前から「富久」と付け、2011年の改装で平仮名に。建物は和モダンに生まれ変わった。浴場は「弁財天の湯」と「大黒天の湯」があり、天然井戸水を使う湯が良質だと評判。それも当然、この界隈は昔から水質が良く、土地が肥沃で野菜の中でも特にナスがよく育って地元特産だったとか。
しかも2代目の村西さんによると「江戸時代は富士山信仰の富士塚が人気でお参りに来る人も多かったようです。鷹匠屋敷もありました」。富士、鷹、ナス……ほほう、縁起がいい地元の風土、その豊かな恵みにちなんで両浴場の背景には「一富士二鷹三茄子」をテーマにしたペンキ絵が堂々と描かれている。しかもそれぞれ日本を代表する銭湯絵師、二大巨匠の作品。
おまけに内装には風水も取り入れており、何というんですか、いろいろまとめてご利益気分なのであります。うれしいのは土・日・祝は8時からの朝風呂もあること。ちなみに「弁財天の湯」は薬湯、「大黒天の湯」は人工ラジウム泉があり、男女週替わりだ。さあさあじんわり浸かってパワーあふれる湯を満喫しよう。どうなるかって? ふくふくと上気した幸せの恵比須顔、一丁上がりです。
【湯上がりのちょい飲みはココで!】
『田端三好弥』 @田端
「ふくの湯」から少し離れた田端駅近くの居酒屋。料理は鮮魚や揚げ物、焼物、お酒は日本酒に力を入れ美味揃い。子供連れもOK
初かつお刺身 980円
[住所]東京都北区田端1-12-13
[交通]JR山手線ほか田端駅北口から徒歩10分
撮影/橋本真美(稲荷湯、ナニコレ食堂、改正湯、信濃路蒲田店、久松湯、夕陽)、小澤晶子(日の出湯、アイナマ上野店)、西崎進也(ふくの湯、田端三好弥)、取材/肥田木奈々
※2023年6月号発売時点の情報です。
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