湯気をたててやってくる丼の中には、たっぷりおツユに浮かんだ冬の食材。牡蠣か鴨か、はたまたニシンか。それらを絡めて啜る蕎麦がまぁおいしいわけで。そんなごちそう蕎麦、どうぞ召し上がれ。
浅草橋『手打そば さかき』
寒くなってくるとメニューに加わる「牡蠣南蛮そば」は、オープン以来の冬の定番。心待ちにするファンも多い。「生食用の大きな牡蠣が出始めたら解禁です」と店主の榊原弘順さん。
澄んだツユに大ぶりの牡蠣が4つ、少し散らした長ねぎがいい合いの手だ。三つ葉、ゆず、あおさ海苔が湯気の中に香りを放ち、手繰る前に思わず深呼吸したくなる。牡蠣の旨みが解け出たツユも上品で、気づけば飲み干してしまう。
榊原さんが料理で大切にしているのは季節感。蕎麦もつまみも、走りと名残の食材を入れ替えつつ、少しずつ移り変わっていく。だからこそ、またすぐにでも行きたくなるのだ。