校舎で“給食”が楽しめる!?房総半島「道の駅 保田小学校」 廃校を再生、地域活性化の起爆剤に

千葉県の房総半島南西部の里山に建つ「道の駅 保田(ほた)小学校」は、個性的なネーミングがインパクトを与えるばかりでなく、校内のあちらこちらに用意されたユニークな仕掛けが、訪れる人々を在りし日の郷愁へと誘います。既存の体育…

画像ギャラリー

千葉県の房総半島南西部の里山に建つ「道の駅 保田(ほた)小学校」は、個性的なネーミングがインパクトを与えるばかりでなく、校内のあちらこちらに用意されたユニークな仕掛けが、訪れる人々を在りし日の郷愁へと誘います。既存の体育館や校舎をリノベーションして再生した人気の道の駅に2023年10月、コワーキングスペース(机などの設備を共有して仕事ができる場所)もある「附属ようちえん」がオープン。その充実ぶりとは!?

チャイムや校歌が流れる校舎、夜の学校に潜入体験

「道の駅 保田小学校」は、2014年3月に少子化のため廃校になった鋸南町立保田小学校の126年の歴史を引き継ぎ、学校名を残して翌年12月、オープンしました。校舎や体育館も取り壊すことなく、リノベーションして再生した施設は、「道の駅」を設置する際、全国に先駆けた取り組みとして県内外から高い関心を集めています。

校舎をそのまま残してリノベーションした「道の駅 保田小学校」(千葉県鋸南町)。廃校となった小学校をそのまま引き継いでおり、訪れる多くの人々の郷愁を誘う

小学校の校庭にはいまでは珍しい二宮金次郎像が建ち、校舎からは時折、時間を知らせるチャイムや保田小学校の校歌まで流れてきます。体育館は自然光が降り注ぐマルシェへ。実際に使われていた机の上には、新鮮な農産物が置かれ、子供達の歓声が聞こえてくるようです。

「里山食堂」の人気メニュー「房州アジフライ給食」(1200円)。新鮮な地ものの生アジを店で仕込んでおり、ふわふわサクサクの食感。魚が苦手なお子さんにも好まれている

校舎1階には地域の飲食店などが入り、「里山食堂」では、かつての椅子や机がそのまま並んでいます。地元名産のアジやクジラなどのフライのほか、カツカレーやから揚げなど給食の人気メニューを、食器やトレイまで懐かしのスタイルでいただける徹底ぶり。

地元の食材を使った給食メニューを提供する「里山食堂」では、児童が学んだ机や椅子を再利用。揚げパンやクジラ、ハムカツなどの懐かしい人気メニューが豊富に揃っており、小学校時代の懐かしい話に花が咲く

校舎2階の教室は、宿泊や入浴もできる施設に変貌。教室にあった黒板やロッカー、大きな時計はそのまま、昔の面影を残しています。畳を敷いたベッドが並ぶのを見ると、気になる存在だった夜の学校に潜入できたような高揚感が、たまりません。

入浴施設「里の小湯」は、日帰り入浴もOK。また、楽器の演奏や合唱、ダンスの演習ができる音楽室も備えており、町内外の人々に貸し出しもしています。

校舎2階「学びの宿」では、宿泊も可能。黒板も時計もそのまま、畳を敷いたベッドが置かれ、気になる存在だった“夜の学校”を体験できる

2023年10月14日、「道の駅保田小附属ようちえん」オープン

千葉県のホームページによると、鋸南町は人口6426人(令和5年9月現在)と県内で3番目に人口の少ない自治体でありながら、年間100万人弱もの観光客が「道の駅 保田小学校」を訪れています。地域活性化の起爆剤として、重要な役割を担っています。

そもそも、正式名称は「都市交流施設・道の駅 保田小学校」と名乗るだけあって、2015年のオープン当初から観光客の誘致にとどまらず、地域住民との積極的な交流推進を図ってきました。2023年10月14日には、隣接する旧幼稚園舎を改装した「道の駅保田小附属ようちえん」がオープン。小学校とようちえんを結ぶ大きな屋根付きの遊歩道「わっか」が、交流を育むシンボルとなっています。

校舎内には、小学校時代を偲ばせるランドセルや、「廊下は走らない」の注意書きも。時折、時間を知らせるチャイムも鳴り響く

こちらも、隣接の旧鋸南幼稚園舎をリノベで有効活用しています。新たに飲食店3店が進出するほか、幼稚園の遊戯室はプレイカフェへ。併設するカフェスタンドで働くスタッフは、子供と一緒に出勤も可能、働きながらわが子の様子を見守ることもできるなど、地域の子育て支援にも力を入れています。

また、かつての職員室は、コワーキングスペースとしてソロワークとグループワークそれぞれのエリアに分かれ、道の駅にいながら効率よく仕事もできる充実ぶり。
ハード面にとどまらず、ソフト面でも進化し続ける道の駅のモデルとして、ますます期待が高まっています。

文/中島幸恵、写真/「都市交流施設・道の駅 保田小学校」提供

「都市交流施設・道の駅 保田小学校」

【住所】千葉県安房郡鋸南町保田724
【電話】0470-29-5530
【営業時間、定休日】施設により異なる※公式HPで確認
【交通】富津館山道路鋸南保田ICからすぐ
【公式HP】https://hotasho.jp/

「道の駅」
一般道路に設置された安全で快適に道路を利用するための道路交通環境の提供と、地域の賑わい創出を目的とした施設。沿道地域の特産品などを扱うほか、歴史や暮らしを学べる博物館や体験工房を併設するなど、24時間無料の駐車場やトイレなどの休憩場所にとどまらず、それぞれ趣向を凝らしたサービスを通して観光振興や地域活性につなげている。災害時の広域的な防災拠点としての役割も担う。国土交通省によると、市町村またはそれに代わる公的な団体が設置、各首長からの申請により国交省が登録すると、「道の駅」として名乗ることができる。1993年4月、全国で初めて103駅でスタート。30周年を迎えた2023年の10月5日時点で、1209駅が登録されている。

画像ギャラリー

この記事のライター

関連記事

大分県に移り住んだ先輩に聞く(1) 移住でウェルビーイング「移住は自分に合った場所を見つける旅」

不眠大国・日本の大人たちへ!箱根のホテルに “極上の眠り”があった 世界的トレンド「スリープツーリズム」とは何だ?

北海道で「店内に銭湯の入り口がある」ラーメン店を発見! 競走馬とグルメ旅

冬は髪を洗えない? ガチで暗い青森の秘湯「ランプの宿」で強制的“デジタルデトックス”

おすすめ記事

名古屋のコーヒーは量が多い!?コーヒー好き女優・美山加恋がモーニングでその真相を知る

肉厚!もつ煮込みがうまい 創業70年の老舗『富久晴』はスープも主役「ぜひ飲み干して」

東京、高田馬場でみつけた「究極のラーメン」ベスト3店…鶏油、スープ濃厚の「絶品の一杯」を覆面調査

禁断の2尾重ね!「うな重マウンテン」 武蔵小山『うなぎ亭 智』は 身がパリッと中はふっくら関西風

この食材の名前は? やせた土地でも育ちます

満腹でも気分は軽やか!東京産食材にこだわったヘルシービュッフェ を提供 八重洲『ホテル龍名館東京 花ごよみ東京』

最新刊

「おとなの週末」2024年12月号は11月15日発売!大特集は「町中華」

全店実食調査でお届けするグルメ情報誌「おとなの週末」。11月15日発売の12月号は「町中華」を大特集…