音楽の達人“秘話”

ビートルズ世界進出から60年 最初は大人に嫌われたが、歳月の流れは“真実”を残した

ベスト・アルバム『ザ・ビ ートルズ 1962年~1966年』(通称“赤盤”)と『ザ・ビートルズ 1967年~1970年』(通称“青盤)

ビートルズがイギリスでデビューしたのは 1962年。イギリスですぐにブレイクしてアメリカ、日本など全世界デビューしたのは1964 年。2024年はビートルズの全世界デビュー60 周年となる。 1964年2月5日、「抱きし…

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ビートルズがイギリスでデビューしたのは 1962年。イギリスですぐにブレイクしてアメリカ、日本など全世界デビューしたのは1964 年。2024年はビートルズの全世界デビュー60 周年となる。

1964年2月5日、「抱きしめたい」日本発売

日本では1964年2月5日、「抱きしめたい(I WANT TO HOLD YOUR HAND)」がデビュー・シングルとして発売された。ちなみに1962年10月5日のイギリスでのデビュー・シングルは「ラヴ・ミー・ドウ」だった。

1964年3月といえば、ぼくは進級を前にした中学1 年生だった。親友のKくんが「抱きし めたい」のシングルを学校に持ってきて、放課後、ポータブル・プレイヤーで皆に聴かせた。初めて聴いた時の衝撃は、約60年過ぎた今でも鮮やかに心に残っている。

ぼくはその8年前、1956年にエルヴィス・プレスリーの「ハートブレイク・ホテル」を 聴いて洋楽ファンになった。その8年間でかなりの数の洋楽曲を聴いてはいたが、ビートルズの撃った弾丸は、格別に強力で幼いながらも、これから彼らの時代が始まると予感させた。

そして、その通りになった。最初は多くの大人たちはビートルズを嫌ったが、今では音楽ファンでなくともビートルズの名を知らない人はごく稀だろう。

「平凡パンチ」創刊号に載った“酷評”

どのくらいビートルズが“大人”に嫌われていたかは、1964年5月に創刊された「平凡パンチ」を読み返すと分かる。「平凡パンチ」は当時の若者層を狙った日本初の“遊び人御用達”誌だった。

その「平凡パンチ」に野末陳平氏(のずえ・ちんぺい、当時は放送作家・タレント、後に参院議員)が“メンズ・ギャラリー”というコラムでビートルズのデビュー・アルバムをレビューしている。

“生まれてこのかた、一度も頭を刈ったことのないような坊主が四人、一見鼻たれ風なんだが彼らこそ、彼らこそ恐るべきブームをまきおこしたイギリス産の『ビートルズ』のメンメンである”と貢定的なレビューではなかった。時代の先を行くことで創刊された「平凡パンチ」でさえ、このレビューなのだから、ビートルズは当時の大人たちに全否定されていたと言っていいだろう。

『平凡パンチ』創刊号

ただ、時は、歳月は真実だけを残す。60年過ぎた今では、批判すらできないほどビートルズは神格化されている。それはビートルズがデビューした62年に結成され、翌63年に全英デビューして今なお現役のローリング・ストーンズをはるかに凌ぐと言えるだろう。

マスターテープに手を加えた赤盤と青盤が2023年秋に登場

そんなビートルズの全世界デビュー60周年を祝して、公認のベスト・アルバム『ザ・ビ ートルズ 1962年~1966年』(通称“赤盤”)と『ザ・ビートルズ 1967年~1970年』(通称“青盤)が2023年11月にリリースされた。

赤盤と青盤は1970年のビートルズ解散から3年後の1973年4月にアナログLP2枚組で発売されたのが初出だ。赤盤はアメリカのビルボード誌で3位、日本のオリコンでNo.1 。青盤はビルボード誌でNo.1、オリコンで2位にランクされる大ヒットとなった。

CD時代に入って『赤盤・青盤」はオリジナルLPの発売20周年を記念して、1993年に発売されている。2010年にはオリジナル音源をより良化させる~リマスタリング~処置をされて第2回目の発売がされている。そして2023年11月、今度はオリジナル音源のマスターテープに手を加え、新たにミックスダウン~ニュー・ミックス~された『赤盤・青盤』が登場した。

マスタリングはあくまでもオリジナルのマスターテープに手を加えるだけだが、ニュー・ ミックスはマスターテープの元となるオリジナル録音テープを新たにミックスし直す作業だ。 例えば極端な例だが、マスターテープではレベルが5だったギターの音が、ニュー・ミックスではレベル7になることも起こり得る。

次回はニュー・ミックスやプロデューサーだったジョージ・マーティンのことなどに触れてみる。

ベスト・アルバム『ザ・ビ ートルズ 1962年~1966年』(通称“赤盤”)と『ザ・ビートルズ 1967年~1970年』(通称“青盤)と、2023年11月に発売されたザ・ビートルズの最後の新曲『ナウ・アンド・ゼン』

岩田由記夫
1950年、東京生まれ。音楽評論家、オーディオライター、プロデューサー。70年代半ばから講談社の雑誌などで活躍。長く、オーディオ・音楽誌を中心に執筆活動を続け、取材した国内外のアーティストは2000人以上。マドンナ、スティング、キース・リチャーズ、リンゴ・スター、ロバート・プラント、大滝詠一、忌野清志郎、桑田佳祐、山下達郎、竹内まりや、細野晴臣……と、音楽史に名を刻む多くのレジェンドたちと会ってきた。FMラジオの構成や選曲も手掛け、パーソナリティーも担当。プロデューサーとして携わったレコードやCDも数多い。著書に『ぼくが出会った素晴らしきミュージシャンたち』など。 電子書籍『ROCK絶対名曲秘話』を刊行中。東京・大岡山のライブハウス「Goodstock Tokyo(グッドストックトーキョー)」で、貴重なアナログ・レコードをLINN(リン)の約400万円のプレーヤーなどハイエンドのオーディオシステムで聴く『レコードの達人』を偶数月に開催中。最新刊は『岩田由記夫のRock & Pop オーディオ入門 音楽とオーディオの新発見(ONTOMO MOOK)』(音楽之友社・1980円)。

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