おとなの週末的クルマ考

ナンパ上等!!  元祖デートカーの2代目ホンダプレリュードは日本の若者の琴線をビシビシ刺激して大ヒット!!

今でこそ世界で確固たる地位を築いている日本車だが、暗黒のオイルショックで牙を抜かれた1970年代、それを克服し高性能化が顕著になりイケイケ状態だった1980年代、バルブ崩壊により1989年を頂点に凋落の兆しを見せた199…

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今でこそ世界で確固たる地位を築いている日本車だが、暗黒のオイルショックで牙を抜かれた1970年代、それを克服し高性能化が顕著になりイケイケ状態だった1980年代、バルブ崩壊により1989年を頂点に凋落の兆しを見せた1990年代など波乱万丈の変遷をたどった。高性能や豪華さで魅了したクルマ、デザインで賛否分かれたクルマ、時代を先取りして成功したクルマ、逆にそれが仇となったクルマなどなどいろいろ。本連載は昭和40年代に生まれたオジサンによる日本車回顧録。連載第2回目に取り上げるのは元祖デートカーと呼ばれた2代目ホンダプレリュードだ。

見惚れるほどのエクステリアデザイン

ホンダのスペシャルティクーペのプレリュードは、1978年に初代モデルがデビュー。王道的なクーペスタイルで玄人受けはしたが、没個性の顔で特別感がなかったこともあり、存在が地味だった。2代目で初めてプレリュードと言う名前を知ったという人も珍しくなかった。

1978年に登場した初代プレリュードはワイド&ローフォルムの王道的なクーペルックだったが、顔が没個性で地味だった

それに対し1982年11月にデビューした2代目プレリュードは、初代のワイド&ローフォルムを踏襲しつつ、さらにボンネット高を下げてスタイリッシュに変貌。

1978年にトヨタ2000GT以来となるリトラクタブルヘッドライトを備えて登場したマツダサバンナRX-7(SA22C)以降、リトラクタブルヘッドライト車は増殖しつつあったが、プレリュードのブラックアウトされたリトラクタブルヘッドライトは高級感があり、ノーズ(ボンネット部分)の低さがより強調さてカッコよかった。1983年にドアミラーが解禁されてからは、さらにカッコよさが増した。

2代目プレリュードはブラックアウトされたリトラクタブルヘッドランプにより顔がシャープ。エンジンが入っているとは思えないほど低いボンネットが特徴的

それから内装もよかった。開放感満点のサンルーフ、スポーティなインパネ(トップグレードのXXには液晶デジタルメーターがオプション設定)、小径で太いグリップのステアリング、フルバケットシートもスポーティと好評。シートと言えば運転席に座ったまま助手席のシートバックを倒せる機能が付けられていて重宝した人もいるだろう。2人のプライベート空間、シートを倒す……、高校生の私はいろいろ想像を膨らませたものだ。

視認性に優れたメーター類、メーターパネル両サイドに操作系を配置するなど機能美を感じさせる

この内外装こそ日本車の”元祖デートカー”として若者から絶大な支持を受けた要因だ。

赤/黒コンビのフルバケットシートがスポーティ。運転席に座った状態で助手席のシートバックを倒せることでも話題に。下種な話、これも元祖デートカーの勲章

ホンダのイメージ戦略が奏功

内外装のデザインも秀逸だったが、それ以上にホンダは上手かった。何が? CMによるイメージ戦略だ。当時ホンダ車のCMはオシャレだったが、2代目プレリュードのTV CMは当時話題になるほど出色の出来。BGMの『ボレロ』とスタイリッシュなプレリュードがベストマッチ。『ボレロ』はフランスのモーリス・ラヴェルが作曲した人気バレエ曲で、当時はオシャレな曲として認知されていた。CMでは荘厳な雰囲気で曲が流れるなか、プレリュードが優雅に走るというシンプルながらアレコレ想像を掻き立てる奥深さがあった。

走り屋からはボディ剛性が落ちると不評だったサンルーフも、デート至上主義者にとっては快適にドライブできる人気アイテムだった

ビジュアルには数パターンあってどれもがカッコよかったが、私が一番痺れたのは、雨バージョン。自慢の1本アームワイパーがアップになったり、リトラクタブルヘッドライトをアップしたりするすべてが脳裏に焼き付き、そのカッコよさに半ば洗脳された感じ。この一連のTV CMがプレリュード=カッコいいというイメージアップに貢献したのは間違いない。ちなみにYouTubeで「ホンダプレリュード CM」で検索すれば視聴可能だ。

リトラクタブルヘッドライトはヘッドライトを車体内部に格納できるもので、2代目プレリュードはヘッドライトを点灯すると、角型ライトが出現

それから、個人的に忘れられないのが、TBS系列の金曜ドラマの『もう一度結婚』(1983年放映)で、主人公の藤竜也氏演じる中原周平が乗っているのがプレリュードだったこと。藤竜也氏は翳りのある表情、白いTシャルが映える日焼けした肌、ジーンズ&ヒゲが似合う、細マッチョなど当時私が理想としていたオッサン像そのままの人で、「こんな大人になりたい」と高校時代に憧れていた。ホンダ提供のドラマとはいえ、藤竜也氏と真っ白のプレリュードは嫌味なくらいに合っていて、ドハマり。そう感じていたのは私だけではなく、同世代のなかでのプレリュードのカッコよさが爆上がり。

赤、濃紺のボディカラーの人気も高かったが、極めつけは白で女性の好感度は爆上がり。ドアミラーが認可された後に登場したモデル(写真はトップグレードのSiグレード)で、最初期のフェンダーミラー仕様よりも人気が高かった

プレリュードを買えば女の子にモテる!!

実は2代目プレリュードがデビューした直後に、『史上最強のスカイライン』を大々的にアピールした日産スカイラインターボRS、日本車の頂点に君臨していたトヨタソアラに高性能な“ツインカム24”の2Lの直列6気筒エンジン、2Lのインタークーラーターボモデルが追加されたこともあり、クルマ雑誌などでの扱いもそれほど大きくなかった。

日本車のハイパワー化が進むなか、2代目プレリュードは1.8Lで125psと闇雲にパワーを追求したわけではなく、バランスに優れた扱いやすい高性能が魅力だったが、FF(フロントエンジン・フロントドライブ:前輪駆動)のハンドリングはよくできているが、FRと比べると……、と言った感じで自動車評論家の評価が絶賛したわけではなかった。そんなこともあって、当時の走り屋には”ナンパグルマ”と揶揄されていた。

『ベストカーガイド』(『ベストカー』の旧名称)の1983年2月号のテストシーン

今では考えられないが、当時のクルマ界を支えていたのは若者だ。走り屋やヘビーなクルマ好きだけではなく、若者はクルマに憧れ、クルマを欲しがっていて実際に気に入れば買った。デートするにはクルマが必須という時代に、「プレリュードを買えば女の子にモテていいこともできる」、「ナンパグルマ上等!!」と、若い男子がプレリュードを買ったわけだ。まぁ、実際には買ってもただの幻想に終わった人も多々いるだろうが、私のように買う勇気もなく指を加えて傍観していた者に比べればそのパワーには敬服しかない。

2代目プレリュードの価格は136万~171万8000円で、同じホンダの大衆車のシビックに20万円程度足せば手に入れられる価格設定も若者にとって絶妙だった。大学生だってプレリュードを買うためにバイトに励んだ。2代目プレリュードは一点豪華主義と笑われようが、メシを抜いてひもじい思いをしようが、女の子にモテたかった男たちの象徴だ!! 1987年に登場した2代目はさらに洗練され大人気となったが、2代目があってこその人気だ。

2023年10月に開催されたジャパンモビリティショーで、ホンダは新型プレリュードコンセプトを世界初公開。久々に復活するプレリュードの名前に、若かりし頃の想いを馳せた中高年は少なくなかったはずだ。

このアングルがら見ると2代目プレリュードのボンネットの低さが強調される。リアデザインは奇をてらわずオーソドックス

【ホンダプレリュードXX主要諸元】
全長4655×全幅1690×全高1360mm
ホイールベース:2660mm
車重:1300kg
エンジン:2759cc、直列6気筒DOHC
最高出力/最大トルク:170ps/24.0kgm
価格:275万円(4AT)

【豆知識】
2023年10月に開催されたジャパンモビリティショーで、ホンダは新型プレリュードを世界初公開。2001年に消滅したプレリュードが高らかに復活!! 詳細スペックは未公表ながら、流麗なクーペスタイルは健在。パワーユニットは直列4気筒の2Lにモーターを組み合わせたホンダのハイブリッド、e:HEVとなる。エンジンが155ps前後、モーターが210ps前後となると予想している。気になるデビュー時期は、2025年後半というのが有力だ。新世代プレリュードは期待感満点!!

2023年10月に開催されたジャパンモビリティショーで世界初公開されたプレリュードコンセプトとホンダの三部敏宏社長のツーショット。2025年後半の登場が有力

市原信幸
1966年、広島県生まれのかに座。この世代の例にもれず小学生の時に池沢早人師(旧ペンネームは池沢さとし)先生の漫画『サーキットの狼』(『週刊少年ジャンプ』に1975~1979年連載)に端を発するスーパーカーブームを経験。ブームが去った後もクルマ濃度は薄まるどころか増すばかり。大学入学時に上京し、新卒で三推社(現講談社ビーシー)に入社。以後、30年近く『ベストカー』の編集に携わる。

写真/HONDA、ベストカー

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