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ショーン・コネリーの「新婚」の地

最後に、だれもが知るスパイ映画の撮影地を紹介しよう。007シリーズ第5作『007は二度死ぬ』(1967年公開)は、東京、神戸など日本全土で大々的なロケが行われ、鹿児島はその主要な舞台となった。霧島連山の中央、新燃岳の火口湖(2011年の噴火で消滅)地下がテロ組織スペクターの秘密基地という設定のもと、その上空で繰り広げられたジャイロコプターと武装ヘリ群のド迫力の空中戦は、シリーズ屈指の名シーンとして語り継がれている。

「まるで月面のよう」。いまだに活動を続ける新燃岳(提供:霧島市観光協会)

さらに、東シナ海に面した薩摩半島の小さな漁村、赤目集落(南さつま市坊津町)はショーン・コネリー扮するボンドとボンドガールの浜美枝が偽装結婚し、束の間の新婚生活を送った特別な土地でもある。

二人が暮らした民家は当時のまま残り、日本の原風景、と称されるのどかな漁村の景観も土の道路が舗装された程度。緑の山々に囲まれた紺碧の入江近くにショーン・コネリー、丹波哲郎のサインを刻んだ記念碑が建てられ、国内はもとより、欧米からも熱心なファンがツアーを組んで訪れる007の聖地となっている。

撮影地となり記念碑が建つ(提供:南さつま市観光協会)

それにしても半世紀余り前、英米合作の超人気シリーズ映画がなにゆえ鹿児島を撮影地に選んだのか。本稿執筆のために調べたところ、プロデューサーを含むロケハン隊は3週間、日本列島をセスナ機で飛び回り、霧島連山から桜島にかけて火口が連なる様に「まるで月面のようだ」と感動し、鹿児島に決めたのだという。

地球を超え、遥かな月に迫る我が鹿児島の魅力。やはり死ぬ前に一度は訪ねておきたい。

文:永瀬隼介
週刊新潮」の記者として活躍し、その後小説家に転身。『サイレントボーダー』『閃光』など数多くの犯罪小説を刊行。2020年に出版した『霧島から来た刑事』が好評で、3月13日に第2弾『霧島から来た刑事 トーキョー・サバイブ』が刊行される。ノンフィクション作家としては、『19歳―一家四人惨殺犯の告白』などの作品を手掛ける。

                         

『霧島から来た刑事 トーキョー・サバイブ』(3月13日 光文社刊)

鹿児島県警の元敏腕刑事が愛妻を亡くして自暴自棄になる中、以前東京で知り合った元ヤクザから「恋人が失踪した」とのSOSの電話が入る。背後には、霊感商法の巨大宗教法人があり、腐敗した政治家との癒着も明らかになる。元やくざの恋人は、宗教2世だった。無骨だが正義感あふれる元刑事による「薩摩隼人流」の捜査が、犯人を追い詰める。

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おとなの週末Web編集部 出樋
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