奇をてらわない料理がなんともおいしそう『千と千尋の神隠し』
3本目は宮崎駿の『千と千尋の神隠し』に登場するオニギリ!
宮崎作品で描かれる料理は基本、ベーコンエッグやスパゲッティ等のシンプルなもの。にもかかわらずメチャクチャ美味しそうに見えるのはキャラクターたちが本当に美味しそうに食べるからだ。そういう演出にかけて宮崎駿は天下一品なのだが、そのなかでも印象深かったのが『~神隠し』のオニギリだろう。
異界に迷い込んだのみならず、ブタになってしまった両親を目にして途方に暮れる千尋は、異世界で唯一の理解者、ハクから差し出されたオニギリを食べる。最初はちょっとだけ、でも、美味しさに気づいてからはむしゃぶりつく。そして、大粒の涙を流し嗚咽しながら、今度は両手にオニギリを取ってまたむしゃぶりつく。
ただそれだけなのに、このオニギリの美味しそうなことと言ったら!
だからなのか同作のDVD発売時には特典として“ハクのおにぎりフィギュア”が付けられたほど。しかも、宮崎監督自らの手で握ったオニギリを原型にして再現したというから凄い。
『千と千尋の神隠し』はスタジオジブリ作品の興行収入ではトップの316憶円を誇る。映画を観たあと、ついコンビニでオニギリを買ってしまった人も多いはずだ。そういうのも映画を観るお楽しみなのは言うまでもない。
●千と千尋の神隠し(2001年/日本/124分)
監督、脚本、原作/宮崎駿
製作/鈴木敏夫
10歳の少女、荻野千尋が両親とともに迷い込んだのは八百万の神が暮らす異世界。両親は食堂で勝手に料理を食べてブタに変身。残された千尋は、謎の少年ハクと出会い、彼が務める油屋で働くことになる。
文/渡辺麻紀(わたなべまき):映画ライター。SF雑誌の編集を経てフリーに。雑誌は『SFマガジン』『アニメージュ』等、WEBは『ぴあ』『TVブロス』等に執筆中。
写真/『エクストリーム・ジョブ』TCエンタテインメント、『料理長(シェフ)殿、ご用心』 orustaksoft 、『千と千尋の神隠し』ジブリ
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