チャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介する「ニッポン“チャーラー”の旅」。チャーラー祭りの実食ルポが続き、久々の通常回。第38回目の今回は、名古屋市中区の担々麺専門店へ。“チャータン”が登場します!
画像ギャラリーチャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介する「ニッポン“チャーラー”の旅」。チャーラー祭りの実食ルポが続き、久々の通常回。第38回目の今回は、名古屋市中区の担々麺専門店へ。“チャータン”が登場します!
担々麺とチャーハンを求めて
筆者がチャーラーと同じくらい好きなのが担々麺。とくに筆者が暮らす名古屋には担々麺の専門店が多くあり、これまで多くの店を食べ歩いてきた。
その中で担々麺に合うのは白ご飯と一方的に決めつけていた。実際、白ご飯の方が辛さが和らぐし、何といっても麺を食べ終わった後にスープや肉味噌などをかけた白ご飯に勝るものはないと頑なに信じていたのだ。
しかし、間もなく8月31日に終了する「チャーラー祭り2024夏 supported by おとなの週末」でその考えが根底から覆された。
祭りの参加店で担々麺専門店『想吃担担面(シャンツーダンダンミェン)名駅南店』で提供していたハーフサイズの汁あり・汁なしの担々麺2種と半チャーハン、搾菜をセットにしたチャーラー祭り限定の「チャーラー定食」を食べて、あまりのおいしさに衝撃を受けたのだ。
ところが、担々麺の専門店でチャーハンがある店は少ないのである。店からすれば、担々麺だけでも手間がかかるのに、チャーハンなんて作っていられないのだろう。調査は難航を極めた。それでもゴマの味と風味、ラー油や香辛料の香りや刺激がチャーハンと混ざり合った複雑な味わいが忘れられなかった。
そんなとき、自ら栽培したベビーリーフをレストランなどに卸している古い友人から担々麺を食べに行こうと誘われた。お盆休み期間中の夜に向かったのは、中区新栄3丁目にある『担々麺 威風堂々』というお店。
店内に入ると、カウンターの向こう側で見覚えのある方が出迎えてくれた。あれ? 池下にあるフレンチ『ル・モノポール』のオーナーシェフの田淵剛二さんじゃん! 店には行ったことがないものの、料理人の集まりに呼ばれたときに何度か挨拶をしたことがあったのだ。
実はここ、無類のラーメン好きである田淵シェフが2年前にオープンさせたそうで、友人は『ル・モノポール』にベビーリーフを卸していることから、田淵シェフとは大の仲良しだったのだ。
夜は四川料理のアラカルトも用意
田淵シェフは店をオープンするにあたって、名古屋市港区にある四川料理の父、陳建民の流れを汲む名店『中国料理 四川』で技術を学んだという。夜のメニューを見ると、「棒棒鶏」や「雲白肉(ウンパイロウ)」、「麻婆豆腐」(各650円)など四川料理も用意している。おっ! 「炒飯」(650円)もあるではないか!
自慢の「担々麺」は、汁ありと汁なし(各880円※1~3辛。4・5辛は980円)のほか、「煉獄担々つけ麺」(980円)、「鬼辛MAXラーメン」(1200円)もある。また、研究熱心な田淵シェフは毎月のペースで新作のラーメンを作り、「期間限定ラーメン」(980円)として提供している。
筆者が選んだのは、「汁あり担々麺」と「炒飯」のチャーラーならぬ“チャータン”。担々麺は大好きだけど、辛さはちょっぴり苦手ゆえに辛さは1辛にした。
お盆にのせられた汁あり担々麺と炒飯が目の前に。「汁あり担々麺」の具材は、チャーシューとモヤシ、豆苗、ネギ、ピーナッツ、糸唐辛子。よその店にはない個性的な盛り付けに心が踊る。
スープの表面は真っ赤でいかにも辛そう。恐る恐るスープを飲んでみると、見た目に反してマイルドな辛さ。まぁ、1辛だからね。辛さよりもゴマのコクと香りがギュッと凝縮されている。それでいて奥行きのある味わいに仕上がっているのは、スープのベースに鶏と豚を使っているからだろう。
担々麺にも通用する「チャーラーは味の掛け算」
箸で麺を持ち上げると、とろみのあるスープがしっかりと麺をすするごとにまとわりついている。そして、濃厚なゴマの風味とそれを引き立てるほのかな辛味が口の中に広がる。具材のピーナッツは素揚げしてあり、その香ばしさも担々麺のアクセントとしては最高だ。
口の中に溢れかえる担々麺の複雑な味わいを鎮めようと「炒飯」をひと口頬張ってみる。うん、旨い。白ご飯だと担々麺の味と香りを米に吸着させるだけだが、チャーハンの場合はチャーシューやネギの旨みを加えてあるため、当たり前だけど旨さは倍増する。「チャーラーは味の掛け算」という理論は担々麺にも通用するのだ。
担々麺とチャーハンを交互に食べたかったが、ここはガマンをして担々麺の麺だけを平らげた。そして、白ご飯のときと同様に、チャーハンにスープをかけた。皿の中でチャーハンとスープを混ぜ合わせて口へと運ぶ。ゴマの味と香り、ラー油の刺激がチャーハンに加わって、これがもう、悶絶するほど旨い! これ、これっ! これが食べたかったのだ!
担々麺とチャーハンの“チャータン”。筆者は禁断の扉を開けてしまったような気がする。今後もチャータンの旅を続けてみようと思う。とりあえず、ここ『威風堂々』で、「汁なし担々麺」と「炒飯」も食べてみたい。これも旨いだろうなー。
撮影・取材/永谷正樹
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