「こんな握り、食べたことない!」 川越の「P」に掲載を申し込んだのは7月のこと。日本中のうなぎ屋さんが1年でいちばん忙しい時期だ。さらに職人さんの人手も足りないという不運も重なり、涙を飲んで掲載を見送った。実はここ、観光…
画像ギャラリー「取材はお断りしているんです」
これこそ本誌ライターが、いちばん恐れている言葉。だって、店に足を運び、料理を食べ、雰囲気を味わい、接客や値段も考慮した上で「ここはぜひ読者に紹介したい!」と思っても、それを伝えることができなくなるのだから。
でも、それではもったいない!ということで、取材拒否された店のなかから、特におススメしたい店を各特集の担当ライターと編集者からピックアップし、ライター・菜々山と編集・武内で勝手に再覆面調査を決行しちゃいました。
まごうことなき名店
まず向かったのが亀戸の「M」。夫婦(おそらく)で切り盛りする店だ。
「ここは取材受けないだろうなぁ」
そうだね。従業員を大勢抱えているわけでもないし、今だって繁盛している様子。何気ない会話からも、店主はすごく常連さんを大事にしているのが伝わってきた。それにさぞかし腕のある和食の職人さんなのだろう。焼き物も煮物も、どれを食べてもウマい!ここを知ったら通いたくなること必至の、まごうことなき名店だった。
次いで有楽町の定食屋さん「I」。日本で初めて誕生したガード下の飲食店とも言われる歴史ある店だ。厨房で腕を振るうのはお年を召したご主人。正直言って、ここよりウマい店ならいくらでもある。でも、この店でしか出せない“味”がある。
ご主人には身体をいたわりつつ、少しでも長く調理場に立ち続けて欲しいので、この記事を読んでも、そっとしておいて下さい。そして、ふと思い出した折にフラリと寄ってみてください。
「こんな握り、食べたことない!」
川越の「P」に掲載を申し込んだのは7月のこと。日本中のうなぎ屋さんが1年でいちばん忙しい時期だ。さらに職人さんの人手も足りないという不運も重なり、涙を飲んで掲載を見送った。実はここ、観光客ではなく、特に地元民から支持される店なのだ。その理由も納得。
「うなぎデカいね!」「しかも、分厚いですよね。タレの味もいいし」
味の満足度と値段のバランスは川越でもピカイチと言えるでしょう。
前述した「M」同様に、常連さんを大事にしたいという理由で断られたのが鶯谷の寿司屋「Y」。大将も職人さんも女将さんも、皆さん気さくで、初めての寿司屋という緊張感を一気に取っ払ってくれ、居心地よく過ごせる。この店で特徴的なのが握りだ。
「シャリが超小さいのね」
それに比べてネタは大きめ。それでもシャリの味わいなのか、ネタの絶妙な厚さによるものなのか、口の中で両者が一体になった時、キチンとバランスがとれているのには驚いた。こんな握り、食べたことない!
揚げ物や焼き物などの一品料理が充実しているのもうれしいポイント。編集長、ゴメン!と思いつつ、トコトン食べました、飲みました!それでもコスパもなかなか優秀。
こんな路地裏に名店が…!
蕎麦もなぜだか取材拒否が多いジャンル。同じ麺類でも、ラーメンやうどんの取材拒否ってそれほどないのに不思議だ。それはさて置き、向かったのが銀座の「Y」。
「これは取材を受けて混雑しても困るでしょうね」「接客も調理もぜんぶご主人ひとりでやっているし」
店内にはBGMもなく静謐な空気が流れている。きっとご主人は売り上げなど関係なく、ご自身の蕎麦道を追求されたいんだろうな、とシロウトが勝手に推察。味も期待通り、いやそれ以上。こんな路地裏でいい店見つけてくるね、おと週のライターさんは。
新米の季節に合わせて特集したのが『至高の銀シャリ』。白金高輪の「K」は、カウンター中心のこぢんまりとした店だ。まずは酒で舌を湿らせないとね、と日本酒メニューを見れば、他店にはないマニアックな品揃え。つまみも、おばんざいや揚げ出し豆腐など、どれも丁寧に作られた繊細な味だ。そして〆に突入。
10種類ほどの中から米を選び、1人前ずつ土鍋で炊いてくれるスタイルだ。
「このコシヒカリ、香りと甘みが抜群です!」
これをぜひ紹介したかったのだが、「ご飯をクローズアップされると、定食屋さんみたいに思われるかも」とNG。そう、取材拒否は色々な理由で巻き起こるのです。
というわけで、確かな味で常連を引きつける実力店ばかりだった本企画。ここで取り上げた店の関係者の皆さま、笑ってお許しいただければ幸いです。そして、ずうずうしいお願いですが、またの機会にはぜひ取材をさせてください!
…つづく「東京で大行列《幻のサンドイッチ》を覆面で大調査…!なんと2時間で完売、定番の「たまご・ハムカツ」から「フルーツサンド」まで全3店で実食」でも、入手困難なサンドイッチを覆面調査隊が並んで実食。その味をレポートします。
『おとなの週末』2019年2月号より(本情報は発売当時のものです)