たまに無性に食べたくなる味噌ラーメン。どこか、ホッとする味噌の味わいが、そんな思いを掻き立てるのではないでしょうか。ここでは、今注目すべき個性派味噌、王道の札幌味噌、独自の進化を遂げつつある関東味噌から極上の6杯をご紹介…
画像ギャラリーたまに無性に食べたくなる味噌ラーメン。どこか、ホッとする味噌の味わいが、そんな思いを掻き立てるのではないでしょうか。ここでは、今注目すべき個性派味噌、王道の札幌味噌、独自の進化を遂げつつある関東味噌から極上の6杯をご紹介します。
十条「らーめん専門店 Chu-Ru-Ri」
店主はラーメン業界の異端児『けいすけ』グループで腕を磨いた実力者。牛骨仕立てのスープで、新たな札幌スタイルの味噌ラーメンを作り上げた。「濃厚味噌」と謳ってはいるものの、牛骨ベースのスープは実は清湯。最後に花カツオで“追う”ことで、牛の深い甘みとカツオ節の華やかな風味を複雑に絡ませている。
タレは、赤味噌と白味噌にオイスターソースや一味唐辛子、粉山椒を合わせたスパイシーな味噌ダレ。ニンニクやショウガの香りを立たせたラードで野菜をジューッと煽り、スープとタレを加えて一気にまとめ上げる。牛の甘みの後をスパイスの辛みが追いかける、クセになる一杯だ。
江戸川橋「三ん寅」
札幌味噌の超名店『すみれ』の味に惚れ込み、18年間修業を積んだ店主が満を持して独立。その味の変遷も知り尽くすが、「店を開くならば、25年前、初めて食べた時に受けたインパクトを自分なりに表現したい」と決めていたそう。『すみれ』といえば丼を覆う分厚いラードとガツンとした飲み口が印象的だが、スープは意外にも豚清湯を使っている。乳化させるとくどくなるので、スープは絶対に濁らせないそうだ。ただし、「作りたては爽やかすぎるため、継ぎ足しのスープと合わせることで重厚感を出している」とも。本家よりもスープの濃度を高め、味噌は甘めにし、かつてのインパクトを再現した。
荻窪「味噌っ子 ふっく」
店主は、ビブグルマンにも選ばれた野方『味噌麺処 花道』の出。鶏胴ガラとモミジ、背ガラ、ゲンコツ、香味野菜を炊いて作るスープは、修業先と同様どろりと粘度があるが、後口は格段に軽く、やさしい味に仕立てられている。ラードやニンニク、ショウガのパンチでごまかすことなく、タレとの複合的な旨みで魅せるスープは、さながらポタージュのような味わい。マイルドな動物スープが味噌の尖りを消してくれるので、ぐいぐいイケる。麺は、むっちり弾力のある中太麺。敢えて硬めに茹でているため、食べ進めるうちに印象が和らいでいく。
大久保「麺屋 悠」
「大人も美味しく食べられるあっさり味噌ラーメンを!」という想いから、修業先である目黒の名店『かづ屋』の「支那ソバ」をベースに、本家にはない「味噌そば」を独自に開発。開業当初こそサブ的な扱いだったが、低加水の細麺で楽しむ孤高のあっさり味噌ラーメンとして、同店の看板メニューにのし上がった。冬場は特に注文率が上がり、7割近い人がこの「味噌そば」をオーダーするそう。スープは鶏ガラと豚の背ガラでとる動物スープと、サバ節や宗田節、カタクチの煮干しなどでとる和ダシを合わせたダブルスープ。注文ごとにラードと味噌ダレ、鶏挽き肉と共に手鍋で温めて熱々を提供する。
長野「拉麺酒房 熊人」
長野県上田市にある『拉麺酒房 熊人』に、希少な味噌で作った“大人の味噌ラーメン”があると聞き、訪ねることにした。ここは、全国からラーメンファンが集う、知る人ぞ知る名店。特に麺の美味しさに定評がある。聞けば、ほうとうのように力強い極太の麺にも負けない味噌を探していたところ、地元・上田の味噌蔵『大桂商店』の奏龍大吟醸味噌「雅」に辿り着いたという。「甘みと旨みの強さが別格。他の味噌だと、麺の小麦の味に負けちゃうんですよ」と店主の小合沢さんが教えてくれた。
定番の「味噌拉麺」のスープをすすると、味噌の鮮烈な香りとやさしい麹の甘みがバチンと伝わってきた。上品な魚介のダシを利かせたあっさり鶏清湯を合わせているので、味噌本来の味がよくわかる。「なんて上品な味!」。こんなに味噌の風味を感じるラーメンは初めてだ。3年熟成させた同じ味噌を使っている。
味噌の渋みや酸味、コクが増して、どっしり風格のある味わい。ラーメンでこんな至福が味わえるとは!
『おとなの週末』2020年2月号(本内容は発売当時のものです)
……つづく「東京の本当うまい「町中華のラーメン」ベスト6店…なんと一杯《600円》、スープ絶品《浅草・大森・人形町・大井町・千歳烏山・清澄白河》で覆面調査隊が発見」では、あまたひしめく町中華のなかから、おいしいラーメンの店を紹介します。