壱岐湯本温泉の泉質は鉄分と塩分を含むナトリウム−塩化物泉
壱岐湯本温泉の泉質は鉄分と塩分を含むナトリウム−塩化物泉。私が15年ほど前に訪れた時は赤いお湯だったと記憶していたが、現在は赤というよりは黄褐色のにごり湯といった方が近い。
温泉は地下の熱源や地質活動によって生まれるものだから、地質の変化や季節、気候によっても成分や色合いは変わり、一定ではない。温泉地で「濁っていたお湯が濁らなくなった」とか「低かった温度が高くなった」とか、あるいはその逆はよく聞く話である。「温泉は生き物」だといわれるゆえんである。
開湯は1700年以上前
壱岐湯本温泉の開湯の歴史は1700年前以上といわれる。伝説上の人物とされる神功(じんぐう)皇后が三韓征伐の時に立ち寄ったとか、聖武天皇の御代に僧・行基が国分寺を建立した時に見つけたなどの伝説が残る。
平山家が昭和初期に温泉宿を受け継ぎ、昭和30(1955)年に現在の「旅館」になった。平山旅館の歴史は比較的新しいが、壱岐湯本温泉の中でも「旧湯(きゅうゆ)」と呼ばれ、自噴する元湯を引き継ぐ唯一の宿。この旧湯には、神功皇后が皇子(応神天皇)の産湯に使ったとされる言い伝えがあり、「壱岐湯本温泉発祥の湯」と言われている。
壱岐湯本温泉は「子宝の湯」
男湯の内湯と露天、女湯の内湯と露天のほか、貸し切りの家族風呂も2カ所。さらに、「月の間」に泊まると、庭にプライベート露天風呂があって心ゆくまでお湯に浸かれるというと特典も。庭には神社があって温泉の神様である水神様が祀られている。
客室の庭にプライベートな神社があるなんて、「神々が宿る島」と言われる壱岐ならでは。壱岐湯本温泉は「子宝の湯」として名高い温泉。その御利益にあやかって、子どものほしいご夫婦はこの温泉に泊まってみることをおすすめしたい。
【壱岐湯本温泉】
壱岐島唯一の温泉郷で開湯1700年の古湯。神話上の人物とされる神功皇后が三韓征伐の際に立ち寄り、子の応神天皇の産湯に使ったという伝説が残されている。黄褐色のにごり湯は、鉄分と塩分が多いナトリウム‐塩化物泉でいわゆる「温まりの湯」で「子宝の湯」としても名高い。源泉数13に対して7軒の宿と4軒の日帰り温泉があり、それぞれが自家源泉をもち、源泉かけ流し。肌触りなどは少しずつ異なっている。
【宿データ】
『平山旅館』
住所:長崎県壱岐市勝本町立石西触77
電話:0920-43-0016
泉質:ナトリウム‐塩化物泉
アクセス:JR博多駅からバス22分の博多ふ頭下車。博多港から高速船1時間5分の芦辺港または高速船1時間10分の郷ノ浦港下船、送迎車で約20分(宿泊者のみ、要予約)
文・写真/野添ちかこ
温泉と宿のライター、旅行作家。「心まであったかくする旅」をテーマに日々奔走中。「NIKKEIプラス1」(日本経済新聞土曜日版)に「湯の心旅」、「旅の手帖」(交通新聞社)に「会いに行きたい温泉宿」を連載中。著書に『旅行ライターになろう!』(青弓社)や『千葉の湯めぐり』(幹書房)。岐阜県中部山岳国立公園活性化プロジェクト顧問、熊野古道女子部理事。
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