今の基準では背が低いクルマ!?
1470mmのトールボーイで話題となった初代シティ。今ではベーシックコンパクトカーと呼ばれるスズキスイフトでも全高は1500mm前後だし、ホンダフィットは1540~1570mm、あのトヨタヤリスでさえ全高は1495~1510mm。誰もスイフト、フィット、ヤリスを見てトールボーイとは感じない。今の基準なら初代シティは背の低いクルマ、ということになるのが時の流れで、現代のベーシックコンパクトより背が低い初代シティがトールボーイを大々的にアピールしていたのが懐かしい。
今軽自動車ではホンダN-BOXを筆頭にスーパーハイトワゴン軽自動車が大人気だが、そのスーパーハイトワゴン軽自動車の全高は1800mm前後だし、ハイトワゴンと分類され人気のトヨタルーミー、スズキソリオは全高1740㎜前後。そう、トレッドが狭い軽自動車、コンパクトカーでも全高をいかようにも高くできるところに技術の進化を感じる。
裏を返せば、1981年にほかのメーカーに先駆けて、背の高いモデルにチャレンジしたというのは、いかにも当時のホンダらしいところでもある。
ひときわ個性を放っていた
初代シティがデビューした1981年といえば、初代トヨタソアラがデビューした年として記憶している人も多いだろう。初代ソアラのデビューは衝撃的で、日本の若者の憧れのクルマに一気に昇華。しかしその一方で、初代ダイハツシャレードが先鞭をつけたコンパクトハッチバックも大人気。キビキビ走れる気持ちよさは最低条件ながら、クーペに比べて広くて使い勝手のいい室内、積載能力の高いラゲッジによる実用性など、一台で何でもこなせるユーティリティ性が若者だけでなくファミリーユースとして人気だった要因だ。
初代シティは、ホンダのクルマ作りのコンセプトとして今も受け継がれている『人間のための空間を最大に、メカニズムは最小限に』というMM(マンマキシマム・メカミニマム)思想に基づいていたため、クラストップのユーティリティ性を誇った。
当時ではトヨタスターレット、ダイハツシャレード、三菱ミラージュ、初代シティの翌年デビューの日産マーチといった各メーカーの主力コンパクトと比べてもひときわ個性を放っていたし、後述するが独自の進化を遂げていった。
モトコンポを同時に発表・発売
ホンダらしいと言えば、初代シティのラゲッジに積載できるというコンセプトで開発された50ccの原付のモトコンポ。コンパクトかつボクシーなデザインは今見ても斬新。ハンドル、シート、ステップは折りたたんでボクシーなボディに収納できる。さらに横倒しして積載することも可能だったという優れもの。
初代シティと同時に発表・発売され、当時の新車価格は8万円。話題性抜群で、自動車雑誌の『ベストカー』の初代シティの新車インプレッションでは、徳大寺有恒巨匠もモトコンポに試乗してご満悦だった。その時の写真を見返すと、当時は原付乗車時にヘルメット装着が義務付けられていなかったこともありノーヘル。これも時代を感じさせてくれた。
ホンダ関係者によると、当時初代シティとセットで購入する人はそれほど多くなかったが、トランクに搭載できる原付として、根強い人気だったという。