1900年前にみかんが日本へ、下津が発祥の地と伝わる
和歌山県とみかんの関係性ってどんなものなのだろう。
「みかんを日本にもたらしたのは約1900年前、第十一代垂仁(すいにん)天皇の命を受け、常世の国(とこよのくに・現在の中国あたり)に渡った田道間守(たぢまもり)とされています。不老不死の果物として、みかんの原種である橘(タチバナ)を持ち帰り、熊野街道にある下津町橘本の『六本樹の丘』(橘本神社旧社地)に植えたと伝えられ、下津地域はみかん発祥の地とされています」
発祥地については諸説あるようだが、これは記紀(古事記と日本書紀)に記されているのだそう。
また、紀州のみかんを嵐の中、決死の覚悟で江戸まで運んで富を築いた紀伊国屋文左衛門の「みかん船伝説」などは講談などでも演じられるよね。和歌山県とみかんのつながりが、いかに私たちの文化に浸透しているのがわかる。
日本初のAIを使った選果システムは静岡県から
温暖な気候のため、県全域でみかん栽培が行われている静岡県。浜名湖の北側に位置する浜松市三ヶ日(みっかび)町は特に全国有数の産地として有名だ。というか、個人的に「三ヶ日みかん」の箱が店頭に並び出すとウキウキしてしまう。なお、静岡県の温州みかん収穫量は9万9800tで第3位だ。
「品種は温州みかんがメインですが、貯蔵システムが構築されていて、1月以降本格的に出荷が始まり、市場に果物が少なくなってくる3月くらいまで出荷しているのが静岡県産のみかんの特徴です。12月末辺りまでに収穫を終えたみかんは、貯蔵することで酸みが程よく抜けて味がまろやかになり、水分も抜けるため甘みが濃くなります」と県の担当者が教えてくれた。
「JAみっかびでは2021年より、JAとぴあでは2023年から、他県に先駆けて全国初・国内最大規模で導入したのが、AIによる最先端の外部品質センサーを使った選果場です。JAみっかびでは約80億円という総工費がかかりましたが、選果はみかん栽培の中でもおよそ4割もの負荷を占める大変な仕事です。最先端の外部品質センサーを使うことで、傷んだみかんの紛れ込みが軽減されるので、農家さんにとっても消費者の方にとってもメリットしかありません」
2024年3月には、静岡県と(国)理化学研究所が共同開発した温州みかん「春しずか」が品種登録された。
「昨今の地球温暖化により、気温が高くなったり長雨が続いたりと気候が不安定になることは、みかんの貯蔵にとって大敵です。皮が浮いたり皺が寄ったりすると商品価値がなくなってしまうこともあるため、リスク回避を期待できる品種として開発されたのが『春しずか』です」
2027年度から本格的な販売が予定されているそうで、出合えるのが今から楽しみだ。
ちなみに今回知ったのだが、駿府城内には、徳川家康が手植えしたとされるみかんの樹が現在も残っており、県の天然記念物になっている。
2024年12月14日、15日、17日には静岡県内で、この家康ゆかりの収穫されたみかんを配布するイベントが行われていた。そういう樹があることはもちろん、こうしたイベントが実施されていること自体知らなかったので気になる!