チャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介する「ニッポン“チャーラー”の旅」。第49回の今回は、著者お気に入りの店から独立したラーメン店のチャーラー。かなりの高評価が飛び出します!
画像ギャラリーチャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介する「ニッポン“チャーラー”の旅」。第49回の今回は、著者お気に入りの店から独立したラーメン店のチャーラー。かなりの高評価が飛び出します!
愛知県春日井市の人気店『圓家』のDNAを受け継ぐ期待の新店
この連載では紹介していないが、愛知県春日井市にお気に入りの店がある。秘密にしていたとか、そんなケチな真似はしない。メニューにはラーメンもチャーハンもあるが、店の看板メニューは野菜たっぷりの長崎ちゃんぽんなのである。
チャーハンもボリュームがあり、長崎ちゃんぽんも一緒に注文してチャーラーならぬ“チャーぽん”をレポートするとなると、量が多すぎてとても完食できないのだ。20代、30代の頃であればできただろうが、五十路となった今ではムリ。わかってくれ。
その店は、『圓家』。長崎ちゃんぽんの店でありながら筆者はいつもチャーハンの単品を注文する。それが「特製チャーハン」(900円)の「玉子のせ」(300円)である。何をもって「特製」なのか。それはチャーハンの上に炒めた豚肉と玉ネギ、ニラがのるのである。甘辛く味付けしてあり、それがもう旨いのなんのって。
しかも、その上にはふわとろの玉子がのる。タンポポオムライスのように玉子の真ん中部分をレンゲで割ると玉子がチャーハンを覆い尽くす。これがもうたまらないのだ。と、書いていたら無性に食べたくなった。
とはいえ、筆者の自宅から『圓家』までは車で約30分。平日でも行列ができる人気店ゆえに二の足を踏んでしまう。そんな中、『圓家』の元店長が独立して、2024年10月、筆者の自宅からほど近い一宮市千秋町に店をオープンさせたという情報を入手したので行ってきた。それが今回紹介する『中華ラーメン さざなみ』である。
チャーハンを目当てに店を訪ねてみると、「ふわとろ玉子セット」(1250円)というランチメニューが目に飛び込んできた。ふわとろ玉子とは、「肉チャーハン玉子のせ」を指すのだろう。メニュー名こそ変わっているが、あのチャーハンで間違いあるまい。
甘辛い豚肉と玉ネギ、ニラがチャーハンと玉子を一体化
セットは、肉チャーハン玉子のせに小ラーメンと中華サラダ、ウーロン茶まで付く。小ラーメンというのがうれしいね。おっと、これなら余裕で完食できるし、チャーラーとして紹介できるではないか! ってことで、「ふわとろ玉子セット」を注文した。
目の前に運ばれたのがこれ。もう、見るからに旨そうでテンション爆上がり! 『圓家』はセットメニューがなく、ひと品あたりの値段が高かったことも「チャーラーの旅」で紹介するのを躊躇していた理由だった。
セットメニューは手間がかかる上に安く提供しなければならないので、やりたくないのが本音だろう。しかし、今のご時世ではそうもいかない。
いつもはラーメンから手をつけるが、堪えきれずに肉チャーハンをまずはひと口。これ、これ、これっ! 料理として完成されているチャーハンと炒めた豚肉や野菜、ふわとろの玉子の3つが合わさることでより複雑な味わいに進化させているのだ。
肉チャーハン玉子のせの断面がこちら。ポイントとなるのは、チャーハンと玉子の間にサンドされた甘辛く味付けされた豚肉と玉ネギ、ニラ。これがチャーハンと玉子を一体化させているのである。いやー、実によく考えられている。これまで数多くの“のせ系”のチャーハンを食べてきた筆者だが、これは間違いなくベスト3に入るだろう。
メインになり得るほどおいしいサブ料理に仰天
続いて、小ラーメンをチェック。小ラーメンは、醤油と味噌、塩、辛口の四川、味噌四川の5種類から選べるのも魅力。今回はベーシックな醤油ラーメンにした。
正直、このセットは肉チャーハン玉子のせがメインであり、小ラーメンにはまったく期待していなかった。が、大きなチャーシュー2枚ともやし、水菜とサブメニューにしては豪華すぎる。箸で麺を持ち上げると、ゴマ油の香りに鼻孔をくすぐられた。たまらず麺をすすり込むと、これがめちゃくちゃ旨い!
おや? よく見ると、小ラーメンにも溶き玉子が入っているではないか。溶き玉子と麺を絡めて食すと、玉子に染みたゴマ香るスープの味がふわっと広がる。こりゃたまらん!
いちばん驚いたのは、ガラスの器に盛られた「中華サラダ」。いや、いや、これは中華サラダなどという軽薄なものではない。春雨がベースになっているのでサラダということだろうが、味付けが絶妙なのだ。
四川料理の麻(マー)と辣(ラー)、すなわち山椒の痺れと唐辛子の刺激が味わえるのである。もはや完全に町中華のレベルを超えている。筆者はこれをチャーハンの上にのせて食べた。これがまた旨い!
ピリ辛の中華サラダを食べたらじんわりと汗をかいてしまった。キンキンに冷えたウーロン茶が付くのはクールダウンするためなのか。これが計算づくだったとしたら店主は天才だ。まったくもう、どれだけレベルが高いチャーラーなんだ。満足度はハンパない。自宅から近いことだし、リピートは決定である。
取材・撮影/永谷正樹
1969年愛知県生まれ。株式会社つむぐ代表。カメラマン兼ライターとして東海地方の食の情報を雑誌やwebメディアなどで発信。「チャーラー祭り」など食による地域活性化プロジェクトも手掛けている。