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出雲の温泉、行くならどこへ?

良縁を願ったあとは、温泉へ。周辺にはいくつも気になる温泉がある。出雲大社から車で1時間弱、出雲国風土記に登場する「玉造温泉」(松江市玉湯町玉造)は一度入っただけで、見目麗しくなるといわれる美肌温泉だ。

日本三美人の湯といわれる「湯の川温泉」は車で40分足らず。古代遺跡がほど近い出雲市斐川(ひかわ)町にあって、のどかな自然環境がいい。

車で約20分の「出雲駅前温泉らんぷの湯」は日帰りらしからぬ、風情が漂う。露天風呂があって、竹林を眺めながら入れる。JR出雲市駅前という街の中心地にありながら、自然を実感できるなんとも贅沢な温泉だ。

知名度は高くないが、「はたご小田温泉」(出雲市多伎町小田)も車で30分圏内の場所にある。元料亭旅館で、体にやさしい食材を使った料理が自慢だ。

中村旅館

車で1時間ほど走ると、「三瓶(さんべ)温泉」(大田市三瓶町)や「湯抱(ゆがかい)温泉」(美郷町湯抱)といった個性派の温泉にも行ける。なかでもおすすめしたいのが、美郷町にある「湯抱温泉 中村旅館」だ。

中村旅館の浴室。緑がかった黄褐色の湯が注がれる

温泉成分が堆積、千枚皿のような洗い場に

ここの浴槽は、析出(せきしゅつ、液状物質が固形化すること)した温泉成分がびっしりと堆積して、湯船の形もエキセントリック。湯船の縁を眺めると魚の鱗みたいに見え、洗い場の床は鍾乳洞の中にある「千枚皿」のような造形をつくり上げている。温泉成分が結晶化した湯の花がふわっと舞って、肌にまとわりついてくる。

濃厚な温泉成分が60年の歳月を経て床に模様を描く

お湯に体を滑らせて、湯船に浸かると、「お湯加減はいかがですかー」浴室の外から、お母さんの呼び声が聞こえてきた。

「ちょうどいいですー」声を張り上げて、その声に答える。

なんと、薪でお湯を沸かしてくれるのだ。加温かけ流しの湯はびっくりするほどパワフルで感動もの。数分入るだけで、汗が噴き出し、体の芯からポカポカになった。

昼食をいただく広間

神経痛や関節のこわばり、冷え性……。このお湯はとりわけ痛みによさそう。ジンジン、グングンとお湯が体に染み渡っていく。

滋味あふれる土地の野菜

創業は大正5(1916)年。古くから、近隣の人が通う湯治場で、今も温泉を大切に守っている。家族経営の小さな宿なのだが、おもてなしにも感動した。

4代目館主の熊谷勉さんがお風呂を沸かし、息子の吉倫(よしのり)さんが料理を作って、勉さんの妻で女将の宏美さんが料理を運ぶ。滋味あふれる土地の野菜をたっぷりと使っている。

昼食プランの料理一例

この日は雨が降っていたのだが、お見送りのときは、車に入るまで傘を差し掛けてくれて、親子3人揃って、満面の笑顔で見送ってくれた。とにかく、おもてなしが最高だった。

建物は昭和レトロな趣でノスタルジーを感じる。

昼、夜それぞれ1日1組だけを丁寧に接客してくれるのもいい。昼食付きの日帰り入浴は昨年までは3000円だったが、物価高騰に伴い、2025年から1人4000円(2名以上、11〜13時)に変更。むしろ、これまでが安すぎたかもしれない。次は宿泊(1泊2食付きで1人2万550円)で訪ねてみたい。

【湯抱(ゆがかい)温泉】
石見銀山から広島・三次〜尾道へと銀を運んだ「石見銀山街道」沿いにある。古くは「湯屋谷(ゆやだに)の湯」として知られた閑静な温泉地。明治から大正の初めにかけて4軒の宿ができて湯抱温泉と称したが、現在は1軒のみ。中村旅館は大正5(1916)年の創業で、近隣の農家の人が、農閑期に湯治をして心身を癒やしていたほか、宴会の客の姿もあった。現在は、温泉宿で静かにのんびりしたい人に適している。

【宿データ】
『中村旅館』
住所:島根県美郷町湯抱315-3
電話:0855-75-1250
泉質:含弱放射能-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
アクセス:出雲空港から車で約1時間

文・写真/野添ちかこ
温泉と宿のライター、旅行作家。「心まであったかくする旅」をテーマに日々奔走中。「NIKKEIプラス1」(日本経済新聞土曜日版)に「湯の心旅」、「旅の手帖」(交通新聞社)に「会いに行きたい温泉宿」を連載中。著書に『旅行ライターになろう!』(青弓社)や『千葉の湯めぐり』(幹書房)。岐阜県中部山岳国立公園活性化プロジェクト顧問、熊野古道女子部理事。

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野添 ちかこ
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