ジャズの調べに、心ゆくまで浸る宵『ボロンテール』@赤坂
次に訪れたのは、無垢材があしらわれた木の空間。棚には、ジャズのレコードがぎっしり。素敵な笑顔を見せるのは店主の坂之上京子さん。流れるのはジャズヴォーカル、ビリー・ホリデイの「All Or Nothing At ALL」。どこか切なくゆらぎのある声が美しく響く。坂之上京子さん愛聴の一枚だ。
ジャズバーと聞いて正直、気後れした面もある。実際、マニア向けで私語禁止の店もあるが、ここではドアを開けて3秒で、それが杞憂とわかった。元々原宿にあったシャンソンの店を坂之上京子さんが引き継ぎ、ジャズバーにしたのが1977年。
作家の色川武大さんやイラストレーターの和田誠さん達も大常連だったという。コースターには和田さんが描き下ろしたミュージシャンの絵が使われている。
赤坂に移転して14年。白木だった内装は、ジャズの音色が似合う赤褐色になってきた。
なぜジャズなんですか?
「寄り添ってくれる音楽だからかしら。どんな感情も包んでくれて、日々を豊かにしてくれる。そこが好きです」
曲は軽くソフトな歌声に変わった。マキシン・サリバンだ。来日時には私的な公演にも挑戦したという、坂之上京子さんの思い出深いシンガーだ。
伸びやかな声に浸っていると、「今日は土曜だから押しがいいわね」とひと言。他店の休みが多い日は電圧が強く、音圧も厚いのだとか。……深い。
遥かなる世界を知るために、必ずや裏を返そう(再来店しよう)。そ、レコードだけに!
[店名]『ボロンテール』
[住所]東京都港区赤坂5-1-2赤坂エンゼルビル2階
[電話]03-3505-0188
[営業時間]コーヒータイム12時〜18時半、バータイム19時~翌1時※バータイムはチャージ2000円別(おつまみ2品付き)
[休日]日
[交通]地下鉄千代田線赤坂駅1番出口から徒歩1分、地下鉄銀座線ほか赤坂見附駅エレベーター口から徒歩5分
撮影/赤澤昴宥、取材/渡辺高
■おとなの週末2025年7月号は「夏の麺」
※月刊情報誌『おとなの週末』2025年6月号発売時点の情報です。
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…つづく「奈良はバーの街だった」でも、この街の魅力をレポートしています。