全国が注視した“お引っ越し”
1980年代から、都心に生息するカルガモ親子の“お引っ越し”が毎年のように報道され、国民の関心を集めました。ご記憶の方も多いでしょう。
東京・大手町の三井物産本社ビル(当時)の敷地内にあった人工池「プラザ池」で、カルガモのひなが誕生。親鳥が複数の子ガモを先導し、大通りを渡って、向いの皇居のお堀に引っ越しする様子のことです。
初めて確認されたのは1983年。三井物産のホームページ(HP)によると、5月31日に、11羽が生まれ、6月28日に8羽がお堀に渡ったとあります。以来、初夏のころに、2008年にかけて毎年、“お引っ越し”の光景が繰り返されます。
よちよち歩きで、皇居と三井物産の間にある内堀通りを渡る愛らしい姿は大きな話題となり、誕生の時期はちょっとした観光スポットに。敷地内には、「カルガモファンの皆様へお願い」として、「手を触れないで下さい」「撮影のときはフラッシュを使用しないで下さい」などの注意書きも掲出されるなど、親子を一目見ようという見物客が大勢訪れました。
2009年から12年にかけては、その風景はいったん途絶えますが。13年5月には「5年ぶりにカルガモが誕生しました」と、三井物産がニュースリリースを出しています。5月7日に10羽が誕生し、6月16日に「すべての子ガモがお堀に引っ越しました」と説明しています。
一帯の再開発による三井物産本社ビルの建て替えのため、プラザ池は2013年に閉鎖。2020年からは新本社ビルで業務が始まり、緑地や水辺を整備した「Otemachi One Garden」が2022年12月16日にオープンしました。将来、再びカルガモ親子の姿を目にすることができるかもしれません。
京都・祇園祭では警察官が誘導 2022年は各地で話題
カルガモは、「マガモに近い東洋産の種で、日本、中国のカルガモ、鼻に小赤瘤(りゅう)のあるビルマカルガモ、インド産で鼻に大赤瘤のあるアカボシカルガモの3亜種がある」(小学館『日本大百科全書』より)。名称については、「大きさはほぼ一緒ですがマガモよりもやや体重が軽く、それが名前の由来になったという説や、万葉集に歌われた「軽ケ池」に由来するという説があります」(ホームページ「サントリーの愛鳥活動・日本の鳥百科」より)そうです。
2022年は、カルガモのことが話題になって、報じられました。「TBS NEWS DIG」によると、同年7月、新型コロナウイルスの影響で3年ぶりに山鉾巡行が行われた京都の祇園祭で、カルガモの親子が道路を歩き、警察が出動して誘導する事態に。同年6月には、新潟市内の小学校で、カルガモ親子の引っ越しがあり、児童たちが優しく見守る様子が映像に収められました。
三井物産のプラザ池でカルガモのひなが誕生して2023年で40年が経ちました。都心以外でも、全国各地で、カルガモ親子のニュースは時折、目にします。癒しの存在として多くの人に愛されているようです。
江戸家猫ハッピー(Edoya Nekohappy)
マルチクリエイター。動物ものまね芸人「三代目 江戸家猫八」の末娘。
1993年から15年間、俳優・緒形拳に師事。共著「地球徒歩トボ」(学研)では写真を担当した。オリジナルキャラクターである猫の「満吉くん」を通して、地球を楽しむための写真・漫画・グッズなどを発信している。2023年7月、伊豆高原で「猫満福庵」という猫のいるギャラリーをオープン。
・「猫満福庵」https://nekomanpukuan.com/
・「江戸家猫ハッピー」https://nekohappy.com/
