酒の造り手だって、そりゃ酒を飲む。誰よりもその酒のことを知り、我が子のように愛する醸造のプロ「杜氏」は、一体どのように呑んでいるのか?今回は宮城県栗原市にある『金の井酒造』を訪ねた。杜氏の鎌田修治さんは、南部杜氏の流れを強く汲む杜氏。薬学を学んだ社長に、学者肌の部下。美酒佳肴に舌鼓を打ちつつ、話はやがて酒質のことへ。それがいつもの晩酌スタイル。
2000年、奥会津に移住し酒造りに携わる、2016年に米焼酎造りを開始
【鎌田修治氏】
1974年、福島県生まれ。工学系大学卒業後、建築の世界へ。2000年、結婚を機に奥会津に移住し、日本酒蔵で酒造りに携わる。2016年、只見町で米農家仲間と蔵を立ち上げ、米焼酎造りを開始。代表社員と製造責任者を務める。
米焼酎を気分に合わせた飲み方で
「仕事の酒席が多いので、家ではなるべく酒を控える。飲むなら自宅から30歩のところにある洋風居酒屋へ。酒造り仲間に声をかけ米焼酎や開発中のウイスキーを試飲がてら酌む」と杜氏は言った。
米焼酎「ねっか」を醸す合同会社ねっかの代表・脇坂斉弘さんだ。社名と銘柄は、奥会津の方言「ねっかさすけねー(全く問題ない)」に由来する。
所在する只見町は日本有数の豪雪地帯。豊かな田園が広がるが、冬場に農家が働ける場所は乏しい。隣町に移住し日本酒造りに携わっていた脇坂さんは、地元の米を活用し、冬には農家に酒造りをしてもらおうと、蔵を10年前に立ち上げた。
日本酒の酒造免許の新規取得はまず不可能。米焼酎では道が開けた。一般的な米焼酎がもろみから日本酒を搾ったあとの酒粕からアルコールを抽出する粕取り焼酎であるのに対し、ねっかでは日本酒と同じもろみを造って丸ごと蒸留する。独自の低温蒸留により、華やかな吟醸香が残るのが特徴だ。
取材に伺ったのは、五穀豊穣を願う伝統芸能「早乙女踊り」の晩だった。踊りをおさめる“宿”に選ばれたねっかの建物には、続々と人が集まる。脇坂さんは正装して農家仲間や蔵人をもてなし、万歳や踊りの一座を迎える。
食卓はご馳走でいっぱいだ。山国会津の人は身欠ニシンが好物。会津若松市の方は山椒漬けだが、奥会津では麹漬けだ。香ばしく炙ると、米焼酎と抜群の相性だ。熊肉の炊き合わせ、福島の伝統食こづゆを肴に酒が進む。
メインディッシュは羊肉文化が宿る奥会津らしく、マトンのしゃぶしゃぶ。そこに酎ハイ、ストレート、お湯割と、思い思いの飲み方のねっかを合わせ、瓶が空く。手打ち蕎麦が振る舞われる。踊りを迎え大団円となると、酒豪の脇坂さんも酔いご心地。
「米焼酎は料理や気分に合わせて、いろんな飲み方ができるのが魅力です。酎ハイにうちのどぶろくを足したのもマトンとよく合いますよ。ところで、こんなんで取材になりましたかね?」
ねっかさすけねーです。というか、酒が暮らしに息づく様子を、最高の形で見せていただいた。












