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女将やマダムのいる店は、何かが違う。「女将」ってなんだろう?その姿に迫る『おとなの週末』連載「女将のいる場所」を、Webでもお届けします。今回は、2016(平成28)年に東京世田谷区の経堂に開業した蕎麦店『蕎堂 壮(きょうどう そう)』の中村ゆかりさんです。

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お客と会話をして関係を築くことが好き

愛知県豊田市生まれ、弟ふたりの長姉である。地元が好き、家族が大好き。中村ゆかりさんは、この楽しい場所から自分が出ていくなんて、想像もしていなかった。

「お姉ちゃんなんだから、と両親から言われたことは一度もないんです。でも〝ちゃんとしないと弟たちが真似しちゃう〟って、いつからか自分で気をつけていました」

高校卒業後、憧れたアパレルの会社が規定年齢に満たず、1年間スーパーで働いて待ち、就職。配属された商業施設の別テナントに、将来夫となる壮貴(そうき)さんも勤務していた。じつは飲食の店を持ちたい、東京で勝負したい。そう志す彼とともに上京したのは、21歳のとき。周りの誰もが、すぐに戻ってくると予想した。

実際、彼女は吉祥寺のアパレルショップ、彼は渋谷の居酒屋で深夜まで。すれ違いの生活からホームシックに陥るのだが。

「職場にいい仲間もできて、楽しくなっていきました」

結果アルバイトから店長にまで上り詰め、勤続8年だ。気づいたのは、売り場に立てない管理職より、お客と会話して関係を築く現場が、自分は好きなのだということ。一人ひとり、求めることが違うから、接客はおもしろい。

「もちろん、たとえば無視されて傷つくこともあります。でもとっつきにくい人ほど、何かのきっかけで一度信頼してもらえると、ずうっと通ってくれたりするんですよ」

2016年10月、夫婦の蕎麦店『蕎堂 壮(きょうどう そう)』が開店。夫が蕎麦を打ち料理を作り、妻は客席を担当する。長年、独立を目指して修業した彼に「思い切りやってもらわないと」と店のすべてを壮貴さんに委ねたが、気持ちのいい吹き抜けはふたりとも気に入った。

『蕎堂 壮(きょうどう そう)』

ゆかりさんは、自身の要望となると途端に湧き出てこないタイプだという。その代わり与えられた場所で“ちゃんと”がんばりたい。「それをすると決めたら、つなげていきたいと思います」

経堂のすずらん通りという、どこかローカルな商店街が地元になって9年。メイン通り沿いなのになぜか裏側に設えた目立たぬ入口や、年々大きくすると知らずに同じサイズを買っていた熊手。この楚々とした場所で、お客らはそれぞれにちょうどよく過ごし、家路につく。

「また来ます」と、ゆかりさんが一番聞きたい言葉を置いて。

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『蕎堂 壮』@経堂
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『おとなの週末』編集部
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