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身近な存在なのに、実はその素性をよく知らないというものがある。日本の食卓に欠かせないお箸はそんなもののひとつだ。いつ生まれて、どんな種類があるのか……あらためて考えると、知らないことばかり。そこでお箸を徹底研究しました。お箸を知ることで日々の食生活がもっと楽しく、もっとおいしくなる上に、日本の未来までも見えてくる……かも。

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歴史の瞬間にはいつもお箸があった

箸の起源は神話の世界!日本人の精神性とお箸の関係はとても結びつきが深く、指先器用な日本人らしさにぴったりの道具として寄り添ってきたのでした。

箸の端と端で神様とつながるのだ

お正月、読者諸氏はお節料理を食べられたでしょうか。元々は弥生時代の風習から奈良時代に宮中儀式となったお節が、現代のように庶民の民間行事になったのは江戸時代。お節に使う祝い箸は、白くて両側が細い。材質は柳が多くて、昨今はミズキも使われる。柳はしなって折れにくいから縁起がいいというわけだ。

丸箸なのは物事が丸く治まるように。両側が細いのは、片側は神様が使い、片側を人が使う「神人共食」の考えから。人が食べるときに神も食べる。加護をいただき、力を分かち合うという考え。なんと日本らしい趣きでしょう。

神様に繋がっているのは「はし」という語源からも類推される。神と人を文字通り、“橋”渡しするのがお箸なのだ。というのは、嘴(くちばし)、橋、端っこ、梯子、柱など、「HASHI」は言霊的には全部同じグループで「上と下、右と左、手前と向こう、を渡すもの、繋げるもの」の意味を持つのだ。箸を持つと自然と神とつながることになる。

歴史の瞬間にはいつもお箸があった

歴史を遡るなら、日本の最初の箸は、古事記に登場する。スサノオノミコトが川を流れてくる箸を見つけて「これは、上流に人が住んでる!川をさかのぼろう」と決心する場面。その結果、娘を次々にヤマタノオロチに食べられ泣いている家族に出会い、姫を娶る代わりに怪物退治を引き受ける。この箸は、ピンセットのような二つ折りの「竹折箸」で、神様に祀る食べ物を直に触れないための祭具だった。川上のお爺は大事な祭具を流してSOS を送ったのだ。

2本で一膳のいわゆる「お箸」の登場は、推古天皇の飛鳥時代。遣隋使が隋から持ち帰ったものの中に箸があった。これを聖徳太子が中国からの使者をもてなす宴会で用意したことから、宮中で様式として使われ始めたという。それまでは匙で食べていたのに!

日本人がお箸だけでご飯を食べるようになったのは鎌倉時代。つまむ、はさむ、切る、押さえる、混ぜる、ほぐす、を全部、箸でやるようになった。魚を食べるのに向いていたし、粘りのある日本米を掴みやすかったのだ。

千利休の影響は現代まで続くのだ

箸の話で、避けては通れないのが戦国時代末期から安土桃山時代に活躍した茶人・千利休。「利久箸」という名と形状が現代まで残っている。これは利休オリジルデザインで両側を細く削った箸を指す。由来は、利休が客をもてなすために、茶会の朝に杉の木を小刀で削って箸を作った故事。なぜ当日の朝だったかというと、削りたてだと箸からいい香りがするからだ。なんて素敵なおもてなし!両側を削ったのは香りの量が増えるためと、先の「神人共食」の考えがあったからだという。

さてみなさんは、ご飯のときにどんなお箸をお使いですか。木箸ですか、塗り箸ですか。

江戸時代には漆で防水加工、耐久加工をした塗り箸が生まれる。「江戸の木箸、京の塗り箸」という傾向は現代にも名残があり、江戸は黒檀、紫檀、鉄木などの硬い木材を素材とし、木目をそのままデザインとして生かす箸を好んだ。

西の文化は漆を重ねて艶を出し、雅で美しい色柄を楽しんだ。また、江戸に比べて、西の箸はサイズが大きい傾向があった。これは江戸は限りある材料で少しでも多くの箸を作ろうとしたから。

そして、元禄時代には屋台文化の発展とともに衛生面からの理由で割り箸が広まっていく。最初は「引き裂き箸」と呼ばれる竹製だ。バイトをしなければ食えない武士が増えると、傘張りとともに箸の削り出しもやったようで、そのおかげで江戸庶民はコンニャクやイカ、豆を箸でつまんだのだ!

日本人と箸は切っても切れない仲だ。生後100日のお祝い=お食い初めで箸を使い、結婚したら夫婦箸を用い、最後、死んで骨になると箸で拾ってもらう。おはようからおやすみまで、人生に箸のない日はないのである。

撮影/鵜澤昭彦、文/輔老心

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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