改札で繰り広げられた職人ワザ
大きなターミナル駅の改札ともなれば、昼夜を問わず大勢の乗客が改札を通過する。そして、所持するきっぷに1枚ずつ“ハサミ”を入れなければならない。カチカチと音を鳴らしながら、手際よく切符にハサミを入れるようすは、いまの自動改札機よりも多くの乗客を裁いていたように感じる。当時の国鉄マンは、愛想が悪い、態度が悪いと陰口を叩かれていたが、いま思えばそんな余裕などあるはずもない。
その軽快なハサミの手さばきとリズミカルな音色は、まさに職人ワザだった。しかもそれだけではなく、目視により定期券に記載された区間を外れた不正乗車を見抜いていたのだから。混み合う出口でも、金額が不足しているきっぷを見つけると、即座に「お客さん、20円足りませんよ」といった具合に声をかける。もちろん、あらゆる駅からの運賃を暗記していて、いちいち運賃表を見なくても素早く対応できていたのだ。こうした駅員さんによる神ワザは、便利さと引き換えに遠い過去のものとなってしまった。
自動改札機が当たり前になってしまった現代。なつかしい昭和の改札風景の話は、この先いつまで通じるのだろうか。
文・写真/工藤直通
くどう・なおみち。日本地方新聞協会特派写真記者。1970年、東京都生まれ。高校在学中から出版業に携わり、以降、乗り物に関連した取材を重ねる。交通史、鉄道技術、歴史的建造物に造詣が深い。元・日本鉄道電気技術協会技術主幹、芝浦工業大学公開講座外部講師、日本写真家協会正会員、NPS会員、鉄道友の会会員。







