目指すのは「病人食」らしくない「病院食」
キッコーマン総合病院の臨床栄養科が目指すのは、「『病人食』らしくない『病院食』」。
もちろん治療が大前提ですが、そのうえで食事を少しでも楽しんでもらうための工夫を重ね、食器は料理ごとに使い分け、毎食同じものにならないようローテーションで使用。また、昼食時にはできる限り病棟へ足を運び、食事内容や制限について説明したり、実際にどのくらい食べられたのかを確認したり、患者さんの意見を聞いたりしているそうです。
献立にも楽しみがあります。月に1回は行事食を取り入れ、朝食ではごはんかパンを選べるようにしています。昼食の麺類でも、うどんかそばを選べる場合があるそうです。例えば8月の行事食は「冷やし中華」。さらに「金魚ゼリー」も一緒に提供し、患者さんからはとても好評だったそうです。
こうした行事食は、栄養士と調理師が力を合わせ、季節の食材を選び、デザートもゼリー、パンナコッタ、プリン、羊羹などから「患者さんに喜んでもらえるもの」を一緒に考えています。
「食事は楽しみのひとつ」だからこそ
もちろん、入院中のすべての人が食事を楽しめる状態にあるわけではありません。食欲がない人もいます。だからこそ三上院長は、治療中の患者さんにとって食事は「楽しみのひとつ」であり、「食べることが辛いことにならないように工夫が必要」だと話します。
キッコーマン総合病院は133床。三上院長は、そのコンパクトさも強みのひとつだと考えています。
医師だけでなく、健診課、看護部、リハビリテーション科などが連携しながら、よりよい食事を目指す。妊娠・出産から生活習慣病予防、心不全やがんの治療まで、患者さんが置かれている状況はさまざまです。その一人ひとりに合わせ、きめ細かな食事を提供しています。
そして三上院長は、食品メーカーが経営する病院ならではの強みについて、こう語ります。
「自社の商品を使用しながら、患者さんにとって記憶に残る食事の提供ができることは、食品メーカーが経営する病院ならではの強みだと思います」
キッコーマンだからこその病院経営、その哲学とは
キッコーマンが病院を経営する理由について、三上院長はこう話します。
「私たちは、企業は『社会の公器』であり、事業活動を通じて社会に貢献する責任があると考えています。キッコーマンは、しょうゆなどの食品を製造し、販売する会社であると同時に、人々の健康で豊かな生活を支える会社でもあります。そのひとつの形が、総合病院の運営です」
さらに三上院長が、これから重要になると考えているのが「予防医学」。
病気になってから治療するだけでなく、健康寿命を延ばし、いつまでも元気に生活するための医療。その中心にあるもののひとつが、「食(栄養)」だといいます。食品メーカーとして培ってきた知見を生かし、医療と食の両方から地域の人々の健康を支える。それもまた、キッコーマンが病院を経営する大きな意義ということでしょう。
しょうゆの会社が「食と健康」を考え続けた先に
1862年、しょうゆ造りに携わる人々とその家族の健康を守るために設けられた養生所。そこから始まった医療の歴史は160年以上にわたって受け継がれ、現在では地域の人々の健康を支える総合病院へとつながっています。
「キッコーマンが病院を経営している」
最初に聞くとちょっと意外な組み合わせに思えますが、しょうゆをはじめとした食品を通じて毎日の「食」を支え、医療を通じて人々の「健康」を支える。そして病院の中でも、治療や栄養管理だけでなく「食べる楽しみ」に向き合う。そう考えると、むしろごく自然な繋がりが感じられるのではないでしょうか。
いつも何気なく使っているしょうゆ。その会社の歴史をたどっていくと、まさか総合病院にまで行き着くとは。しょうゆの町・野田には、こんな「キッコーマン」もあったのでした。
文/おとなの週末Web編集部、写真提供/キッコーマン





