本誌スタッフが「未来に遺したいひと皿」をセレクト。本誌・Webの連載陣が、思い思いの料理を挙げました。今回は、タベアルキスト・マッキー牧元編。日頃ご愛読いただいているみなさま、そして本誌が歩んできた25年の間に生まれたお店に感謝を込めてお届けします。
タベアルキスト・マッキー牧元
本誌連載『おいしい往復書簡』でもおなじみ、自腹タベアルキストでありコラムニスト。『味の手帖』編集主幹。全国各地・世界中を日々飲み食べ歩き、年間外食数は約600食にものぼる。さまざまな媒体で食の情報を発信し続けている。
やさしく馴染む唯一無二の職人が打つ独特の極細蕎麦『浅草 仁行』@浅草「もりそば」
推定約四千軒。今まで東京で訪れた店である。中より未来に残したい店と考えると、江戸の料理となる。蕎麦、寿司、天ぷら、うなぎといった、江戸時代に育まれ、全国に広がっていった料理である。寿司は当企画の予算から外れるので、蕎麦、うなぎ、天ぷらから選んでみた。
信州で生まれた蕎麦切りは、江戸中期より、屋台や店舗ともに増加し、江戸食文化を代表する料理となった。
東京には、多くの優れた蕎麦屋と信頼を寄せる蕎麦職人がいる。そのひとりである『仁行』の石井さんは、東京を皮切りに地方でも店を開いていたが、今は浅草に居を構えている。
独特な極細蕎麦は、彼だけが打つ蕎麦だ。手繰ると、唇が躍動する快感があり、放たれた香りがのどにぶつかり、鼻腔に抜ける。
もりそば おまかせ 13200円の一品

細い蕎麦は、口腔内の念膜に、舌や上顎、のどの粘膜に、空気のように馴染むやさしさがある。人間にやさしいだけではない。温かいツユにも鴨の滋味にも、やさしく馴染む。
石井さんの蕎麦を食べる喜びを体に宿して、とっくりと飲む。東京にいる幸せを噛み締めることができる蕎麦である。
江戸時代から続くうなぎ職人の技を受け継ぐ『のだや』のうなぎは、焼きがいい。万遍返しと呼ばれる技で焼かれたうなぎは、腹はふっくらと皮は凛として焼き込まれている。
各地の名産うなぎは、それぞれに独自の味を持ち、柔らかい身を噛みしめていくと、個性が膨らんでくる。自尊心のある旨みが甘辛いタレと出合ってこそ、蒲焼きという料理の醍醐味は生まれるのではないだろうか。
『ふく庵』のご主人は、江戸前天ぷらの名店『みかわ是山居』で長年修業された。価格は安価だが、「蒸して焼く」という天ぷらの本質を見極めた技で、魚介の余分な水分を出し、旨みだけを凝縮させる。
揚げた姿が美しく、衣に勢いがありながら、軽くタネを包み込んで、油っ気を感じさせない。穴子以外は、「ソッ」と衣が弾けて、「フッ」と魚に歯が入っていく。その繊細さこそ、天ぷらという料理の粋であることを教えてくれるのである。
[店名]『仁行』
[住所]東京都台東区浅草4-43-2
[電話]070-1469-4541
[営業時間]18時〜22時
[休日]不定休
[交通]TX浅草駅A出口から徒歩15分
『入谷鬼子母神門前 のだや』@入谷
[店名]『入谷鬼子母神門前 のだや』
[住所]東京都台東区下谷2-3-1
[電話]03-3874-1855
[営業時間]11時〜14時半、17時半〜20時※売り切れ次第終了
[休日]月(祝の場合、翌休)
[交通]地下鉄日比谷線入谷駅2番出口から徒歩すぐ
『ふく庵』@門前仲町
[店名] 『ふく庵』
[住所]東京都江東区富岡1-22-26 杉田ビル2階
[電話]03-5646-6365
[営業時間]12時〜14時、18時〜21時
[休日]日
[交通]地下鉄東西線門前仲町駅1番出口から徒歩2分
撮影/貝塚 隆(仁行)、文/マッキー牧元
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
※画像ギャラリーでは、マッキー牧元が未来に遺したい「江戸の料理」の画像をご覧いただけます。
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